宮田健の「セキュリティの道も一歩から」(34)
2019年はさらに状況が悪化!? 危険にさらされるIoT機器を脅威から守るには(2/2 ページ)
2019年、状況は悪化している
Miraiが話題になったのは、2年も前の話です。果たして、アップデートを行ったり、初期パスワードを変更したりすることで対策ができたのでしょうか。
残念ながら、Miraiはさらにパワーアップし各種脆弱(ぜいじゃく)性を悪用するようになったことで感染を今も広げています。それに、この2年間全く対策されていない端末もたくさん存在すると考えられます。つまり、状況はさらに悪化しているといえるでしょう。
その実例として、今回の“NOTICEにも参画”している、ネットワークプロバイダーのIIJがレポートした、ボットネットのトラフィックを見てみましょう。
2019年1月28日にIIJの根岸氏が公開したブログによると、Miraiおよび亜種は2018年も感染手法を変え、かつ攻撃ポートも変化するだけでなく、特定の地域での感染が急に増えるなど、特定の国、特定の機器が狙われることで攻撃トラフィックが大きく変化する様子がレポートされています。
技術的な観点からの大きな変化は、2018年の途中から感染手法が大幅に増えたことが挙げられます。IPカメラやホームルーターなどの機器にはもともと脆弱性を持つものが多く存在していましたが、2017年までは主にTelnetやSSHによる認証試行がボットの感染手法として使われていました。それが2018年になると各機器に固有の脆弱性を利用して感染を試みる活動が活発に見られるようになりました。特にRealtek、Huawei、D-Link、Linksys、DASAN、MikroTik、XionMai、GoAhead、Avtech、Netgearなどの機器の脆弱性がよく狙われています。
⇒出典:IIJ Security Diary:2018年のIoTボット観測状況と最近の動向
このように、実はインターネットの世界というのは目に見えないところでさまざまな攻撃が既に行われているというのが現状なのです。これを踏まえると、NICTがなぜ“無差別侵入”と表現できてしまうようなことを、法改正をしてでもやるのかということが見えてくるかもしれません。
これまでNICTは、セキュリティの脅威をなるべく分かりやすく可視化するプロジェクト「NICTER」「NIRVANA」「DAEDALUS」など、さまざまな研究成果を世に出しています。もしかしたら、各種報道でその画面を見たことがある人もいるかもしれません。個人的にはNICTは信頼できる組織だと考えており、そのNICTの行為には、きっと日本のインターネットを安全に、安心して使ってもらいたいという思いが根底にあると信じています。確かに広報活動が足りなかった(私たちメディアを含め)のは確かでしょう。だからこそ、皆さんにはぜひ今回の話を冷静に判断してもらいたいと思っています。
この負の連鎖を止めるのは、IoT機器ベンダーだ
このプロジェクトがスタートし、運用が行われればまた新たなインターネットの形が見えるかもしれません。利用者としての私たちは、“プロジェクトが始まる前に”、初期パスワードが変更されていることをしっかり把握しましょう。基本的にはブロードバンドルーターに接続された機器は、ルーター自体が守ってくれるはず。しかし万が一、ポートフォワーディングなどで外部に直接、デジタル家電をつなげている場合は、パスワード変更が行われていることを確認しましょう。もう1つ重要なのは「諦め」です。万一、アップデートが止まった(サポートが切れた)古いIoT機器を持っていて不安な場合――利用を諦め、最新の“安全な”機器に買い換えるしかありません。
そしてもっと重要なのは、Miraiの解説記事でも触れたようにIoT機器ベンダーの働きです。初期パスワードを単一のものにしている場合、もはやサイバー犯罪者に「どうぞ狙ってください」と言わんばかりの状態です。“Mirai後”に開発する機器でそのようなものがないよう、“シフトレフト”で企画、設計段階からセキュリティを組み込んでいきましょう。余談ですが、小学生向け雑誌の付録ですら、初期パスワードを複数用意する時代ですよ! (次回に続く)
◎併せて読みたいお薦めホワイトペーパー:
» 制御システムの「安全神話」は既に崩壊している
» WannaCryが明らかにした、生産システムセキュリティ「2つの問題点」と「2つの対応策」
» 2つの事例で理解する工場セキュリティ対策の考え方とソリューション導入
» 5分で分かるMirai
» セキュリティリスクから工場/生産ラインをどう守る?
著者紹介:
宮田健(みやた たけし)
元@ITの編集者としてセキュリティ分野を担当。現在はフリーライターとして、ITやエンターテインメント情報を追いかけている。自分の生活を変える新しいデジタルガジェットを求め、趣味と仕事を公私混同しつつ日々試行錯誤中。
2019年2月1日に2冊目の本『Q&Aで考えるセキュリティ入門「木曜日のフルット」と学ぼう!<漫画キャラで学ぶ大人のビジネス教養シリーズ>』(エムディエヌコーポレーション)が発売。スマートフォンやPCにある大切なデータや個人情報を、インターネット上の「悪意ある攻撃」などから守るための基本知識をQ&Aのクイズ形式で楽しく学べる本です。
筆者より:TechFactoryでの本連載では、ITセキュリティの「あるべき論」「正論」だけでなく、モノづくりに携わる方たちに「気楽に」「楽しく」セキュリティを考えていただけるように、さまざまな話題を取り上げたいと思います。「セキュリティっていわれてもねえ……」と思わず考えてしまった皆さまに覚えていただけるようなコラムにしたいと思います。お楽しみに!
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宮田健の「セキュリティの道も一歩から」
「モノづくりに携わる人」だからこそ、もう無関心ではいられない情報セキュリティ対策の話。でも堅苦しい内容はちょっと苦手……という方に向けて、今日から使えるセキュリティ雑学・ネタをお届けします。
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