第273回 NRIメディアフォーラム
2024年、産業用ドローン市場は1500億円規模に――活躍が期待される5つの領域(2/2 ページ)
産業用ドローンの活躍が見込まれる5つの領域における展望と課題
続いて、名武氏は先ほど挙げた5つの領域における内訳や今後の見立て、市場拡大に向けたハードルについて順番に紹介した。
まず、(1)農林水産業の生産支援に関しては、前述の通り2018年時点では農薬散布が同領域における市場をけん引するとみられている。農業従事者の高齢化や人手不足、コスト削減への期待が利用を後押ししているという。また、水田以外に散布可能な農薬の種類がドローン向けに解禁されるなど、利活用のさらなる広がりが期待できるとする。「それ以外の用途、例えば農作物の発育状況の把握などは、検討自体はされているが、費用対効果など正確な試算ができておらず、導入には至っていない」と名武氏は述べる。
(2)インフラなどの点検・検査に関しては、現時点(2018年度)で約60億円規模と推定。その多くは実証ベースのものがほとんどと予測されるが、ソーラーパネルなどの電気通信設備の点検においては、一部導入が進んでいるという。「期待としては、人が行けないような場所の点検、要修繕箇所の特定の効率化、AIを活用した画像解析による点検の自動化などが挙げられる。一方、「工場やプラントなどでの利用を考えた場合、防爆性が求められるため、その安全性、信頼性を担保することが難しい。高圧ガス保安法や消防法の規制の強さは日本特有とも言われているため、海外と比較して工場やプラントでの利用は遅れるだろう」と名武氏は話す。
(3)空撮・監視については、映像撮影と災害状況把握に分類される。映像撮影に関しては、コンシューマー含めドローンで空撮を利用するユーザーも増えているため、裾野が広く、ロングテールで成長が見込めるという。一方、ニーズとしては災害状況把握も高い。しかし、現状はボランティアの方が災害時にドローンを飛ばすなどして情報提供するケースもあるため、災害対応の在り方含め、市場としてどのようにマネタイズするのかなど、検討する必要がある。
そして、既に市場としてある程度普及が進みつつあるのが(4)測量である。公共測量については、国土地理院がドローンによる測量のマニュアルを整備するなど、活用を意識した取り組みが進みつつある。さらに、「土木測量については新しい市場に該当するため、ドローンとしてどのような付加価値を提供できるのか、それでビジネスが成立するのか、といった点が今後市場を拡大する上での大きな論点になるだろう。また、ITに不慣れな現場の方々に理解してもらい、業務フローに取り入れてもらうためには現場に寄り添った対応が不可欠だ」(名武氏)
(5)輸送に関しては最も注目度が高く、「ラストワンマイルの輸送」「過疎地の輸送」などへの期待の声が聞かれる。しかし、都市部への輸送を考えた場合、安全性の向上が大きな課題となる。「万一、落下してしまった場合、誰が責任を負うのか。その損害を保険で賄おうとした場合、その分の費用が配送サービス料に上乗せになってしまうし、そもそもそうした保険を提供する保険会社が存在しないという課題もある。また、受け取りの印鑑をどうするか、といった事業法の整備の問題もある」と名武氏。一方、過疎地における輸送は、実証実験などが各地で進められており、実現可能性は高い。しかし、「利用者の少ない過疎地でどのように市場性を確保するのかについては議論が必要だろう」と名武氏は指摘する。
クリアすべき技術的なハードルとそれ以外のハードル
ここまでの内容の通り、ドローンの利活用をこれまで以上に推進するためには、クリアすべき幾つかのハードルが存在し、その中には政府が主導して整備すべき事項も含まれる。日本政府は現在、2020年代前半に都市部などでドローンを活用するためのロードマップを策定し、技術開発の支援や制度設計などを進めている。
「注目は、2020年度前半に有人地帯での目視外飛行が実現するのか、である。仮に実現したとして、本当に市場性があるのか、それがビジネスとして成立するのか、政府の取り組みだけではなく、産業としての発展についても注視すべきだ。ドローンの普及、発展には技術的なハードルだけではなく、社会的受容性や制度改革など、技術以外のハードルも多くあるので、このあたりの動向も併せて注視する必要があるだろう」(名武氏)
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