設計者CAEは普通の解析と何が違う?(11)
実機製作後ではなく、開発設計の初期段階でCAEを先行的に運用せよ(2/2 ページ)
問題の再現をCAEによるシミュレーションでトライ&エラー
しかし、実物を見てもその問題の原因が分からないことがあります。そこで、シミュレーションの出番です。CAEが社内で認められるようになってくると、断ることはなかなかできません。仮に断ってしまえば……
何だ、しょせんCAEはその程度のものか
といわれてしまうからです。筆者もそうですが、解析担当者の多くは、この“エラー再現”をCAEによるシミュレーションで行おうとします。しかし、問題の原因すら分かっていない、実はCAEを設定する上でインプットすべき入力データすら明らかでない場合も多く、“問題結果を再現する”のには大変苦労します。
ここで筆者は疑問を感じます。問題結果を再現することに苦労するということは、再現のための工夫をすることになります。この工夫とはすなわち“入力する条件の工夫”のことを意味します。
例えば、構造解析の場合、
- 拘束条件であれば、結合状態なのか
- 接触状態なのか、摩擦を考慮するのか、その摩擦係数はどうするのか
- バネ性を持った結合にするのか、そのバネ定数はどうするのか
といったものです。
熱流体解析であれば、熱伝達係数の入力値は、
といったように、解析結果を見ながら問題の状態を再現できているかトライ&エラーを繰り返すわけです。このような設定は、経験によって培われるスキル(技術力、知識)により成り立つものであり、開発設計工程での先行的なCAE運用でも行われます。
さらにこのCAEでの結果は実体と照らし合わされ、その精度を上げていくものですが、エラー再現となると、“帳尻合わせ”の作業のようになりかねません。筆者も、薄板と薄板に対して十分な厚みを持つ部品を、溶接によって数十箇所、小径で溶接をすることで作られたアセンブリが自重によって変形してしまったという問題に直面した際、これをCAEによるシミュレーションで再現した経験があります。
筆者が使用するCAEソフトウェアでは、溶接により各部品に溶け込みが生じる現象(相変化)をシミュレーションすることはできません。溶接となると部品同士の接合部分は高温になります。高温ということは、熱による膨張により応力が発生し、この応力により変形が生じます。
この熱応力をどう考えるのか、溶接箇所の拘束条件をどう考えるのかを、熱応力連成解析や部品間の結合の度合いをバネ定数とし、そのバネ定数変更を繰り返すトライ&エラーを行い実態に近づけていきました。この作業で筆者は1週間を要しました。
エラー再現というものではありますが、このトライ&エラーによって、問題の原因を予測することができました。さらに、その予測をCAEの設定に反映しながら確信を得ることができ、CAEによるエラー再現も“エビデンス(証拠)”を得る効果があることが分かりました。この経験は解析担当者の“引き出し”を増やすことになり、スキルアップはもちろんのこと、企業の技術力向上にもつながります。
しかし、解析担当者からすれば、「まずは実物からその原因を突き止めてほしい」という気持ちに変わりはありません。
実物から問題の原因を発見せよ! CAEは問題発見を助けるもの
おそらく、解析担当者の多くが、このエラー再現を行った経験があり、実体との整合性に頭を抱えたことでしょう。3D CADの活用がフロントローディングだといわれている中、このように実機製作以降でCAEを多用するのではなく、開発設計の初期段階でCAEを先行的に運用できるようにならなくてはなりません。
さて、前回に続き、CAEで必要とされる工学的な知識について解説します。
有限要素法とは(1)
これまで紹介してきたCAEですが、「有限要素法」を使用しています。ではこの有限要素法とは何でしょうか? 筆者も大学工学部の時代にこの有限要素法を学びましたが、理論がメインでした。今から約30年前のお話です。ここまでCAEの話を進めている中で、「今さら『有限要素法とは?』って」と思われる方もいるかもしれませんが、有限要素法は、FEM(Finite Element Method)ともいわれる“数値解析”手法の一つです。“計算領域の分割(メッシュ分割)”を行います。メッシュという語句はCAEを扱う人の中ではとても一般的になりました。またこのメッシュ分割を行うことを、“離散化”ともいいます。
この分割された小さな領域の中で、微分方程式の近似式の計算を行います。そして、その小さな領域(小さな領域の近似式)を組み上げていくことで、計算領域全体の計算を行うものです。
ということで、次回はCAE技術を高めていく上で欠かせない解析結果の検証について紹介します。お楽しみに! (次回に続く)
◎併せて読みたいお薦めホワイトペーパー:
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設計者CAEは普通の解析と何が違う?
「設計者CAE」という言葉が設計現場で聞かれるようになって久しいですが、3D CAD推進とともにきちんと設計者CAEに取り組んでいる企業もあれば、まだ途上あるいは全く着手していないという企業もあるかと思います。本連載では、設計者CAEがもたらすメリットや実際に導入していく上での注意点を、現場目線でご紹介します。◎こんなキーワードに興味のある方にオススメ:[CAE][設計者CAE][3Dデータ][3D推進][3次元設計][設計品質向上][ツール導入]
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