インドネシアにおける日系製造業のIT事情(4)
インドネシア“ローカル”のシステム会社の実態(2/2 ページ)
地元(ローカル)企業とビジネスを始める際のポイント
ローカルのビジネスパートナーとビジネスを始める場合は、中国市場と同様にコピー製品を作られないか? 注意する必要もある。その観点からすれば、イスラム教に起因する契約書世界のインドネシアではきちんとした契約書を結ぶ必要があり、結果、知的著作権は守られるものと考えている。
ローカルのシステム会社のSEは皆、英語に堪能だ。花形のIT業界のSEであるから高い教育を受けてきた結果ともいえるが、インドネシア語のできない筆者でも、英語でのコミュニケーションには不自由をしない。また、IT業界といえども、インドネシア人以外の従業員が少ないのも特徴だ。会社自体もそうだが、全てインドネシア人により経営、運営されている。この国の人口は多いが、それにもかかわらず、正社員の口が少ないという実情を反映しているのかもしれない。
インドネシアの企業であっても、IT業界の場合、当社製品のようなその技術保有に時間のかかるものは、その会社のSEの定着度にも注意しなくてはならない。当社中国市場のように上海法人で育成したSEが独立し会社を興して当社製品をメニューに加えるような状況が生まれればまだよいが、どうもまだインドネシアのIT業界は、高い給与を求めてSEが短期間にジョブホップしてしまう傾向が強い。従って、1つの代理店候補の中には、Asprova(当社)ファンになってくれる人材が最低1人は必要だと感じる。
ここまでSEのことばかり書いてきたが、営業はどうだろうか? 営業に関していえば、特定の顧客に長く付いて結果を出している、いわゆる御用聞き営業が圧倒的に多い。インドネシアのイベントなどに出ても、ハードウェア製品を取り扱う企業の出展は多いが、ソフトウェアのそれに関してはあまり見掛けない。イベントやセミナー、広告宣伝やコールセンターなどを利用して新規開拓する姿はあまり見られない。「Salesforce」のような営業支援システムがインドネシアであまり売れていないのも、営業の地位の確立や営業プロセスの充実がされていないことが原因ではないだろうか? また、当社のようなソフトウェアパッケージ会社の営業は、営業と開発のはざまに当たる営業技術の存在が重要だ。しかし、前述のように営業は営業、SEはSEで職務掌握が厳密に分かれているインドネシアの企業では、営業技術としての新しい部署、もしくは人材の育成が必要となる。また、相手がローカル企業の顧客となると中国市場同様にアンダーマネーの存在も看過しなければならない。特に小さなシステム会社の場合、営業力が弱く、その会社のキャッシュフローが悪い会社も多いので要注意だ。
ちなみに、当社のローカルIT企業の現地代理店は社長をはじめ全ての従業員が中華系のインドネシア人だ、IT企業としては少人数だが、中堅の財閥グループの1社であり、財務的な安心感もある。また、蛇足だが、中華系のインドネシア人の大半はイスラム教徒ではないので、ラマダン月の業務効率低下の恐れもない(まあ、その期間、顧客が休んでしまえば同じだが……)。
インドネシアの人口は2億人を超え、まだまだ、増える傾向にあるそうだ。IT業界(ソフトウェア製造業)も、その他製造業と同様に早い進歩と進化が期待される。
先日、ジャカルタ新聞で、インドネシアの大手通信会社が工場団地を建設経営する会社と提携して工場区へのインターネット環境をさらに充実させるといった記事が掲載されていた。「インダストリー4.0」の流れに沿うということだが、実現すれば、インドネシアのIT業界にとっても喜ばしいことではないだろうか? また、人手不足に悩む日本のIT業界でももっと東南アジアの人材を採用育成して頂けるとありがたい。確かに、現地では欧米系の会社の方が日系のそれよりも高い給与でインドネシア人を雇う傾向があるが、やはり、一度日本で覚えた開発技術や共同作業の姿勢はそう簡単には消えないと信じている。実際、前述の当社ローカルIT会社のパートナーで当社製品の販売に汗をかいてくれている人材も、過去に日本で6年間働いてからインドネシアへ帰国している。もちろん日本語も堪能だ。
次回は、当社ソリューションを現地で長く有効利用している会社と、他社製品も含めて導入および利用に失敗している会社の“違い”を紹介する。(次回に続く)
◎併せて読みたいお薦めホワイトペーパー:
» 「カイゼン」を中心にデータ活用が進む製造業、課題はROIと人材
» 77.3%が“つながる工場”実現に向けて取り組みを開始――経営層も投資に意欲
» PTCはIoTベンダーになったのか? CAD、PLMユーザーに向けたメッセージ
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
インドネシアにおける日系製造業のIT事情
インドネシアに工場を持つ、日系製造業のIT事情とは? 中国に3年、タイに3年駐在した経験のある筆者が、それらの国と比較したインドネシア特有のIT導入の実態について現地からレポートする。
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] AIで脱炭素計画を最適化、初年度からエネルギーコストとCO2を削減する方法 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の開発動向、日本の投資戦略やコスト目標の見通しは?
関連記事
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:フィジカルAIが生み出す新たな「設計思想」――電子版2026年8月号
-
2
半導体装置メーカー 業績まとめ【2027年3月期第1四半期】
-
3
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part4)
-
4
一時は時価総額トヨタ超え キオクシア2026年度の動向
-
5
微細配線間の絶縁劣化をどう捉える? 先端パッケージ評価の最前線
-
6
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part1)
-
7
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:2026年上半期の半導体業界を振り返る――電子版2026年7月号
-
8
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part3)
-
9
CADツールの見直しは本当に必要? 切り替えの理由と効果を7つの質問で検証
-
10
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part2)
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー