Intel Automotive
「自動運転の安全確保には経験が必要だ」インテルが語る自動運転へのアプローチ
Uberが自動運転の実験中に起こした死亡事故は、自動運転技術そのものについて、再度、懐疑の視線を招くことになった。Mobileyeを買収し、BMWやフィアットらと自動運転の開発を進めるインテルは「安全確保には経験が必要だ」と自社の取り組みを説明する。
「自動運転車の課題」と聞いて思い起こされる近年の話題は、やはり米Uber Technologiesの実験車両が公道で起こした死亡事故だろう。原因については調査が行われている最中であるが、自動車の制御を機械に任せる自動運転という技術に対して大きな影響を与えた出来事であることに間違いない。
BMWやFiat Chryslerらと自動運転技術の開発を進めるインテルは車両の生産こそ手掛けないが、自動運転向け画像処理技術を開発するMoblieyeを傘下に収め、コンピューティングプラットフォームの提供を通じて自動運転を推進する立場にある。同社Automotive執行役員である大野誠氏がインテルの現状を解説した。
自動運転は2年だが、車載は10年
「データにまつわる全てに関わる“データカンパニー”になりたい」と2017年3月に、同社の目指す方向性を説明したのは前社長の江田麻希子氏だが、その方向性は今も変わっていない。大野氏は「自動運転」「5G」「AI」「仮想世界」と4つの注力領域を挙げ、デバイス/エッジからネットワーク、クラウド(データセンター)に至るまで、エンドツーエンドの環境を提供できることが同社にしかない強みであると述べる。
注力領域の筆頭とした自動運転について、インテルが本格的に着手してから約2年が経過している。その間にはデジタル地図を手掛けるHEREの株式取得、Mobileyeの買収といったハイテク企業への出資や買収があり、BMWやFiat Chrysler、Continental、Delphiといった自動車メーカーおよびティア1サプライヤーとの協業も積極的に進めている。
このなかで大きな位置を占めるのが、Mobileyeである。カメラを用いたADASシステムの開発と提供で先行した企業であり、テスラをはじめとした自動車メーカーにカメラベースの運転支援システムを供給していることで知られる。2017年3月にMobileyeを傘下としたインテルだが自社に統合するのではなく、2018年1月のCESでは自動車向けAtomとMobileyeのプロセッサ「EyeQ5」を組み合わせた自動運転プラットフォームを紹介するなど、「インテルとMobileyeの組み合わせが最適なソリューションである」と訴求している。
Mobileyeがインテルの自動車に向けた取り組みで大きな位置を占めることは、Uberの事故に対するリアクションを、MobileyeのCEO兼CTOであるアムノン・シャシュア氏(米Intelの上級副社長でもある)が、インテルからの意見として発表(Experience Counts, Particularly in Safety-Critical Areas)したことでも明らかだ。
シャシュア氏の声明では「安全の確保には経験が不可欠である」「業界全体での取り組みが求められる」などと述べられており、大野氏も「完全なソリューションを提供できているわけではないが、業界関係者と協力して自動運転の実現に向けて活動している」と述べる。加えて大野氏は「自動運転への取り組みという意味では2年あまりだが、インフォテイメント(車載情報機器)の分野であれば10年にも及ぶ自動車に関する経験をインテルは有しており、この経験を生かすことができる」とする。
加えて、自動運転技術の普及には「人的エラーの低減による事故件数の低下」「交通事故減少による公共安全コストの低減」「移動/輸送の最適化による燃料の削減」などによる経済効果も見込まれるため、「自動運転技術は現実的で最適なものである必要がある」(大野氏)と既に多くの車両やメーカー採用されているMobileyeを擁することの利点を紹介した。
ただ、Mobileyeを擁することから、カメラオンリーでの自動運転開発を進めるのでは?という観測は否定した。カメラを中心としたADASや自動運転技術の開発を進めていることは事実としながら、「カメラを(車載センシング技術の)中心にしていることは事実だが、要望があればライダーなどを組み合わせたセンサーフュージョンも提供する」(大野氏)と方向性を述べた。
ちなみに、自動運転について「“経験ある企業”を信頼する。つまり新興のハイテク企業よりもよく知っている自動車会社を信頼する」かは国によって異なるという調査結果がある。この調査を紹介した英「The Economist」の調査・コンサルティング部門であるザ・エコノミスト インテリジェンス ユニットの近藤奈香氏はこの結果に加えて、日本の消費者は諸外国に比べて慎重派であり、「自動運転が安全ではない」と答えた率も諸外国より高いという調査結果も紹介した。
この信頼に関する調査は自家用車を対象としたもの(自家用車における自動運転技術)であり、バスやタクシーといった商用車は対象に含まれないが、世界的に見ても自動運転という技術について、消費者からの十分な信頼はまだ確立されていないことを示しているとも言える。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
企業戦略(自動車)
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] AIで脱炭素計画を最適化、初年度からエネルギーコストとCO2を削減する方法 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の開発動向、日本の投資戦略やコスト目標の見通しは?
関連記事
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:フィジカルAIが生み出す新たな「設計思想」――電子版2026年8月号
-
2
半導体装置メーカー 業績まとめ【2027年3月期第1四半期】
-
3
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part4)
-
4
一時は時価総額トヨタ超え キオクシア2026年度の動向
-
5
微細配線間の絶縁劣化をどう捉える? 先端パッケージ評価の最前線
-
6
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part1)
-
7
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:2026年上半期の半導体業界を振り返る――電子版2026年7月号
-
8
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part3)
-
9
CADツールの見直しは本当に必要? 切り替えの理由と効果を7つの質問で検証
-
10
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part2)
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー