つながる世界の開発指針(2)
つながる世界の「安全安心」に向け、考慮すべき17の項目(3/3 ページ)
2つの指針から見る開発指針のポイント
前述した通り、本開発指針の特徴は以下の3つに集約される。
- 1.安全なIoT機器やシステムを実現するために、開発の関係者が考慮すべきリスクや対策を17の指針として明確化した。
- 2.IoT機器やシステムのセーフティ、セキュリティ、リライアビリティに着目し、安全・安心をライフサイクルで維持するために考慮すべきポイントを解説した。
- 3.IoTに関するさまざまな製品分野、業界において、分野横断的に活用できるように抽象度の高い表現を採用し、「各指針の検討は必須、対策の実施は任意」とした。
ここでは前ページ「つながる世界の開発指針」(表1)に記載した指針のうち、特に「基本中の基本指針」と「長期利用の視点で重要な指針」の2つを紹介する。
【表1 指針5:つながることによるリスクを想定する】(基本中の基本指針)
- ポイント(1):クローズドなネットワーク向けの機器やシステムであっても、IoT コンポーネントとして使われる前提でリスクを想定する。
- ポイント(2):つながる相手が偽物であることや、乗っ取られるリスクを想定する。
- ポイント(3):保守時のリスク、保守用ツールの悪用によるリスクも想定する。
今まで、ネットワークにつながっていなかった家電や生活機器がつながるIoTの世界では、つながることで発生するリスクの想定が重要になる。また、クローズドなネットワークでつながっていた機器やシステムが広域ネットワークにつながる場合も、想定していない事が起きる危険性があることを忘れてはならない。
具体例として挙げられるのは、プリンタ複合機の危険性だ。2013年、複数の大学がプリンタ複合機のパスワードを未設定のままインターネットに接続していたことが発覚した(図5)。また、2016年にはインターネットで閲覧可能となっている監視カメラが、国内だけでも6000台あることがニュースとなった。
これらは、設置業者やユーザーがインターネットに接続したときのリスクを想定していなかった典型的な例だ。こうした事態を防ぐためには、機器の初期出荷時のパスワードをそのまま利用しないことを周知徹底する必要がある。
また、DNS(Domain Name System)への攻撃などにより、IoTコンポーネントが不正な接続先に誘導されるリスクや、接続先がウイルス感染しているリスクもある。さらに、機器に装備されている保守用ポートの脆弱性を悪用した攻撃や、保守専用のツールが流出したことによる被害が頻発している。特に、保守関連の機能に対するリスクの想定は、悪意をもった攻撃者からの防御という視点から、開発者にとって重要項目となる。
【表1 指針14:時間がたっても安全安心を維持する機能を設ける】(長期利用の視点で重要な指針)
- ポイント(1):経年で増大するリスクや変化する使い方・利用環境に対し、アップデートなどで安全安心を維持する機能を検討する。
IoT機器・システムの特徴の1つに、ライフサイクルが長いことが挙げられる。10年以上利用されることを想定し、出荷後も安全・安心を維持する仕組みと製品開発が開発者には求められる(図6)。
特にIoT機器・システムの重大な欠陥や脆弱性問題が起きた時は、迅速な修理が必要になる。また、こうした機器には継続的に改修できる機能も必要となる。さらに、屋外や人手が届かない場所に設置されるIoT機器などは、遠隔で改修できるリモートアップデートなどの仕組みが必須となる。
しかしながらその一方で、リモートアップデート機能がリスクの一因となることも想定しておく必要がある。アップデート実行中のIoTコンポーネントへの性能劣化の影響や、多数のIoTコンポーネントの同時アップデートによるネットワーク帯域不足の影響など、運用にも考慮が必要だ。
次回は「つながる世界の開発指針」の関連施策としてまとめた『「つながる世界の開発指針」の実践に向けた手引き』の中から、IoT機器やIoTシステムの開発時に検討すべき安全・安心を確保する機能(IoT高信頼化機能)を取り上げる。
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「つながる世界の安心安全」実現に向けた重要ポイント
IoT(Internet of Things)は、新規ビジネスの創生や利便性の向上による市場獲得などが期待されている一方で「つながる」ことで発生するセキュリティ脅威の増大や、“1つのモノ”の障害が、ほかのモノに波及/拡大する危険性も懸念されている。 こうした現状を鑑み、情報処理推進機構 技術本部 ソフトウェア高信頼化センター(IPA/SEC)では、IoT機器/システムの開発者や経営者に検討してほしい事項を「つながる世界の開発指針」や「『つながる世界の開発指針』の実戦に向けた手引き」としてまとめた。本連載ではこれら内容をより具体的に紹介していく。
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