つながる世界の開発指針(1)
つながる世界「4つの課題」、対策は「経営マター」である(3/4 ページ)
4 技術の進化に対応する
IoTを取り巻く環境は多種多様で日進月歩で変化が激しく、その関連技術は多岐にわたる。また、IoT機器や一度構築したシステムは、10年以上使い続けることも想定される。特に、セキュリティ技術は攻撃者側も進化することから、時間がたつにつれて安全・安心が相対的に劣化することが想定される。2020年には、インターネットにつながるIoT機器が250億個にも達するといわれるが、今後、メンテナンスが実施されないIoT機器が大量に放置されることで、セキュリティの脅威が増大することが懸念される。
こうした課題に対応するためには、IoT機器・システムのライフサイクル全体を網羅した安全・安心の維持が重要であるのはもちろん、製造ベンダーやサービス事業者、さらに利用者が一緒に考える必要がある。
経営層の関与が成功のカギに
IoTは大企業だけでなく、中小企業にとっても大きなビジネスチャンスとなる。成功するためには、前述したような安全・安心に関するリスクや課題をきちんと認識し、経営マターとして取り組む必要がある。しかし、IoTの安全・安心の取組みに関しては、経営層の関与が少ないのが実情だ。
IPA/SECが2015年に行った「IoTの安全・安心の取組みに関する調査」(*)では、セーフティやセキュリティの基本方針の設定に、経営層が関与ほとんど関与していない実態が明らかになった。
(*)プレス発表 自動車や家電など製品のセーフティ設計・セキュリティ設計に関する実態調査の結果を公開(IPA) https://www.ipa.go.jp/about/press/20150910_2.html
この調査は、今後IoT製品が拡大していくと考えられる「自動車」「スマートフォン」「ヘルスケア」「スマート家電」の4分野を主な対象に、製品のセーフティ設計・セキュリティ設計に対する企業としての認識や取り組みの現状などを明らかにしたものだ。
調査の結果、図2~4に示すように、基本方針の必要性は認識しているものの、64.9%が「セーフティ設計の基本設計は、明文化されたものが無い」と回答した。また、「セキュリティ設計の基本設計は、明文化されたものが無い」と回答した比率は54.4%だった。
つまり、半数以上の企業で、IoT製品・システムの安全・安心の対策として最も基本的なセーフティ設計、セキュリティ設計の基本方針がなく、現場の力量に任されているのが実態なのだ。
また、「セーフティ設計、セキュリティ設計の判断を誰が行っているか」の質問に「経営層が関わっている」と回答したのは、セーフティ設計で26.4%、セキュリティ設計で29.8%と、両方とも30%に満たないことが判明した。
IoT製品・システムの安全・安心を確保し、ビジネスリスクを低減させるには、開発の設計段階において、その製品の要求されるレベルのセーフティやセキュリティ、信頼性などをあらかじめ確保しておくことが重要である。それらを実現するためには、企業としての基本方針やルールを設け、品質の判定などに経営層の積極的な関与が不可欠だ。
IoTの安全・安心を支えるセーフティやセキュリティ、信頼性などの機能は、投資対効果が見えにくく、どこまでコストをかけてよいかの判断が開発現場では難しい。しかし、ジープ・チェロキーのリコールからも分かる通り、リスクと事故が発生した時のビジネスダメージは計り知れないIoT製品の開発やシステムの構築、サービス事業の責任者は、そのリスクと事故が発生した時の被害の大きさを認識し、安全・安心の対策は経営マターとして捉え、対応できる体制を整備することが肝要である。
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「つながる世界の安心安全」実現に向けた重要ポイント
IoT(Internet of Things)は、新規ビジネスの創生や利便性の向上による市場獲得などが期待されている一方で「つながる」ことで発生するセキュリティ脅威の増大や、“1つのモノ”の障害が、ほかのモノに波及/拡大する危険性も懸念されている。 こうした現状を鑑み、情報処理推進機構 技術本部 ソフトウェア高信頼化センター(IPA/SEC)では、IoT機器/システムの開発者や経営者に検討してほしい事項を「つながる世界の開発指針」や「『つながる世界の開発指針』の実戦に向けた手引き」としてまとめた。本連載ではこれら内容をより具体的に紹介していく。
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