つながる世界の開発指針(1)
つながる世界「4つの課題」、対策は「経営マター」である(2/4 ページ)
こうした状況に対処するためには、製品の利用環境やユーザー動向の把握も重要になる。つながる世界で想定される代表的な課題は、以下の4つに大別される。
1 さまざまなモノどうしがつながる
さまざまなモノどうしがつながることで、1つの製品の故障やセキュリティ異常が、ネットワークを介してほかの製品にも及ぶ。その結果、被害が波及・拡散することが想定される。自社製品が被害を受けるだけでなく、加害者となるケースもありうる。これを防止するためには、個々のIoT製品・システムの素早い異常検知と、被害の拡散を最小限に食い止める対策が求められる。
また、つながる世界で異常が発生した時に、どこが問題の発生源であるかを特定するのが困難になることが予想される。IoT機器・システムの動作ログやネットワーク通信のログの充実及び障害箇所の切り分けと原因特定のための対策も不可欠だ。
2 異なる分野のサービスがつながる
異なる分野のサービスがつながる場合、接続する相手の信頼性レベルが異なると、思わぬ被害が発生することが懸念される。
代表例として、コネクテッドカーを想像してほしい。一般のスマートフォンで自動車の自動駐車を制御するとしよう。もし、自動駐車中にスマートフォンがハングアップして操作不能になったら、事故が発生することもありうる。
IoT機器やサービスがつながる時には、利用状況に合わせて本当につないでよいかを判断する対策が不可欠だ。具体的には、信頼性の実装レベルに合わせて、使える機能を制限するなどの対策が考えられる。
3 第三者が勝手につなげる
IoTの特徴は、今までの情報システム(ITシステム)とは異なり、サービス企業やユーザー自身がIoT機器を購入してつなげることだ。IoT機器の利用者は、幼児や高齢者まで幅広い。さらに、世界中のあらゆる場所と時間で利用される。そうした環境には専門の管理者がいないことも多く、さらに、IoT機器ベンダーが想定していないつなぎ方や使い方を利用者が実施するケースも想定される。ベンダーには今まで以上に、「利用時の品質」(*)を考慮した設計対策が求められる。
*ISO/IEC25000シリーズ(SQuaRE)の25010製品品質モデルと利用時の品質
「利用時の品質」という考え方は、IoT機器が多様化する状況において重要な意味を持つ。この考えは、「どのような利用者が」「どのような環境で」「どうやって利用するか」を想定し、安全・安心を確保する機能を組み込むというものだ。
例として金融取引が可能なデバイスや重要データにアクセスできるIoT機器を想像してほしい(PCでもよい)。もし、デバイスが盗難にあったりどこかに置き忘れてしまったりしたらどうなるだろう。「パスワードでシステムにログインできないようにする」という対策はもちろんだが、それで十分だろうか。
こうしたデバイスには、GPS機能や遠隔からの操作ロック機能、さらにデータ消去機能などが必要だ。万が一紛失してもGPS機能があればどこにあるのかを検索できるし、遠隔操作機能で操作そのものを不可能にしたりデータを消去したりできる。IoT時代では今まで以上に使う側の立場になって、利用スキルや利用環境を想定することが求められる。
話は少々脱線するが、IoT機器の品質向上は、ネットワークに接続されていない機器よりも迅速に実現できるというメリットもある。なぜなら、IoT機器はその利用状況(利用データ)をリアルタイムで収集できるからだ。こうした操作ログを分析することで、「どんな環境で」「どうやって」利用されているのかを把握し、間違いやすい使い方を回避したり、新たな使い方を提案したりといったことが可能になる。つまり、IoT機器の品質向上のPDCAサイクルを早く回すことで、新しい価値創出にもつなげられるというわけだ。
IoT時代では、利用時の品質に考慮することが、ビジネス上でも重要な要素となる。「利用者視点に立った使いやすい機器を迅速に提供する」ことが、他社との差異化となることを覚えておきたい。
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「つながる世界の安心安全」実現に向けた重要ポイント
IoT(Internet of Things)は、新規ビジネスの創生や利便性の向上による市場獲得などが期待されている一方で「つながる」ことで発生するセキュリティ脅威の増大や、“1つのモノ”の障害が、ほかのモノに波及/拡大する危険性も懸念されている。 こうした現状を鑑み、情報処理推進機構 技術本部 ソフトウェア高信頼化センター(IPA/SEC)では、IoT機器/システムの開発者や経営者に検討してほしい事項を「つながる世界の開発指針」や「『つながる世界の開発指針』の実戦に向けた手引き」としてまとめた。本連載ではこれら内容をより具体的に紹介していく。
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