TechFactory通信 編集後記
メモリなき東芝と新CEO
メモリ事業の売却先が決まり、東芝は債務超過の解消も見えてきました。ですが、世界的な好況にある半導体の事業を切り離した企業にとって、今後のかじ取りは困難なものになります。外部より招かれたCEOの手腕に注目です。
メモリ事業の売却で債務超過の解消を目指す東芝は、投資会社の米BainCapitalを軸とする企業連合を売却相手に選び、現在はその手続きを進めています。その東芝が2018年2月14日に発表した2018年3月期(2017年度)第1~3四半期(4~12月)業績はメモリ事業の好調さと立ちこめる暗雲を暗示する内容となりました。
メモリ好況、黒字転換を果たすが
さまざまな調査会社の資料やSEMI(エレクトロニクス製造サプライチェーン工業会)が発表する半導体製造装置の販売額などを見る限り、メモリを含む半導体市場は好況です。米Gartnerによると、2017年の世界半導体売上高は前年比22.2%増の4197億米ドルで、特にメモリは売り上げ伸張が著しく、「NAND型フラッシュメモリは17%、DRAMは44%、価格が上昇した」と資料中で言及されています。
東芝のメモリ事業(2017年度第1~3四半期業績)は、売上高8756億円(前年同期比37.9%増)、営業利益3227億円(前年同期比3.15倍)と大幅な増収増益を達成しており、これを含めた東芝の売上高は3兆5823億円に達しています。なお、2017年通期の業績見通しも修正されており、最終損益は1100億円の赤字から5200億円の黒字に転換するとしています。
黒字転換の要因としては、メモリ事業の増収に加えて、原子炉メーカーであるウエスチングハウスの債権売却や売却に伴う税額減少などを挙げられますが、メモリ事業を除いた通期業績予想は売上高で前年比4%減の3兆9000億円とほぼ前年並みとなるとしています。2017年業績見通しには600億円の構造改革費用が組み込まれていること、TV事業の売却が2018年2月に完了することなどもあり、東芝は2018年以降に継続する事業による最終的な営業損益は1000億円程度の黒字という見込みを示しています。
2018年以降に継続する事業は、以前から明らかにしているように「エネルギー」「インフラ」「(メモリを除く)電子デバイス」「ICTソリューション」の4セグメントです。なかでも社会インフラを核に事業を展開にするとしており、2019年度に「売上高4兆円超、ROS(売上高利益率)5%」の達成を目標としています。
売上高は2016年度実績で4兆437億円、2017年度予想で3兆9000億円となっているので「2019年度の売上高4兆円超」は慎重な設定に見えます。ただ、東芝がもう1つの指標としているROSについては2016年度実績で2%、2017年度予想では0%であり、「2019年度の5%」はこれから行う企業活動が、売上高よりも利益率を重視する、いわば身より実を取る方針であることを意味します。
「社会インフラの東芝」への転進
東芝といえば以前、多くの事業領域において「チャレンジ」と称した過剰な数値目標を掲げ、その結果、不正会計事件に発展。歴代3社長が引責辞任したいう過去があります。そこから再建中に原発事業の損失問題が発覚し、虎の子であったメモリ事業を売却し、「社会インフラの東芝」へのシフトを掲げるというのが現状です。
東芝の社会インフラ事業は2016年実績で1兆2624億円の売上高を持ち、現在の手掛ける領域においては最も大きな事業です。ですが、社会インフラ事業は東芝だけがプレイするブルーオーシャンではありません。既に日立製作所やNEC、三菱電機など大企業がしのぎを削っており、環境や交通、再生可能エネルギーなど特定領域を得意とする専門企業も数多く存在します。
東芝がなぜ社会インフラ企業を中核とする企業を目指すのか。社会インフラ事業においては、既に事業として確立している公共インフラ(水処理、防災、道路、放送、航空管制など)で安定した収益を確保し、二次電池や空調、物流システムなどでの成長を図るというプランは提示されていますが、思うように進むのは分かりません。
2018年4月1日付の人事では、三井銀行出身の車谷暢昭氏が招かれて代表執行役会長 兼 最高経営責任者(CEO)に就任、現代表執行役社長の綱川智氏が社長と最高執行責任者(COO)を兼ねる体制が発表されました。ここ数年で大きく変化した事業内容や資本構成に対応するために外部出身者を招いたとしており、車谷氏の手腕が注目されます。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechFactory通信 編集後記
「モノづくり総合版 TechFactory通信」に掲載された、TechFactory担当者による編集後記の転載記事一覧です。
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] AIで脱炭素計画を最適化、初年度からエネルギーコストとCO2を削減する方法 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の開発動向、日本の投資戦略やコスト目標の見通しは?
関連記事
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:フィジカルAIが生み出す新たな「設計思想」――電子版2026年8月号
-
2
半導体装置メーカー 業績まとめ【2027年3月期第1四半期】
-
3
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part4)
-
4
一時は時価総額トヨタ超え キオクシア2026年度の動向
-
5
微細配線間の絶縁劣化をどう捉える? 先端パッケージ評価の最前線
-
6
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part1)
-
7
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:2026年上半期の半導体業界を振り返る――電子版2026年7月号
-
8
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part3)
-
9
CADツールの見直しは本当に必要? 切り替えの理由と効果を7つの質問で検証
-
10
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part2)
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー