IoT時代の組み込み系ソフトウェア品質(6)
上流工程の品質活動でソフトウェアの品質は向上するのか(5/6 ページ)
組み込み系品質の上流における作り込み
組み込み系品質も上流工程で作り込む方が、大きな効果を得られる。しかし組み込み系開発では派生開発(既存開発、改良開発)が多く、また、すり合わせしながらの開発となる。そして、派生開発やすり合わせ開発では、実際のコード差分やすり合わせ部分のコードなどが注目され、仕様レベルでの差分やすり合わせは軽視されることが多い。
この結果、上流工程での品質の作り込みがおざなりになることが多い。もちろん派生開発やすり合わせ開発で上流工程を軽視していい理由はないが、これも現実である。
ソフトとハードのすり合わせ開発
組み込み系開発では、ソフトとハードをすり合わせて開発する。そのためかどうしても機能適合性や性能効率性ばかりに注目が集まり、ハードとソフトが連携して動作するかを中心に確認することが多くなる。そして残念ながら、上流工程での議論はそこで終わることが多い。下流工程に入ったときにやっと機能や性能だけでなく、他の品質特性も気にしだすが、既に時遅しである。
組み込み系開発でも上流工程で品質を作り込むべきであり、後の祭りにならないように、上流工程の開始段階で総合的な品質を注目し、明示的に品質制御ができるよう、企画から要求分析、設計の各段階考慮しなければならない。それもソフト単独だけでなく、ハードも含めたシステム全体での品質を考える。もちろん、ハードとの品質文化の衝突も考慮しながらである。
行える施策としては、チェックリストの擦り合わせ、品質予測モデルの擦り合わせ、個々の品質特性の優先順位付け、品質責任者の決定、(あまり開催したくはないが)品質会議の開催などがある。
派生開発する上流工程での品質
組み込み開発はその大半が派生開発、または既存開発や改良開発と呼ばれるものである(*)。新規開発の割合が低く、派生開発が中心となっているので、組み込み系では派生開発での品質を第一に考える必要がある。
(*)IPA/SECの「組込みソフトウェア開発データ白書2017(p.33)」でも、その傾向が見て取れる。エンタープライズ系のデータ白書と比較して、組み込み系は改良開発の割合が高い。
派生開発では、基本開発で開発する基本部とそこから派生して作る派生部がある。派生部の品質は基本部の品質に大きく影響を受ける。これから基本部は派生開発される将来も見渡して品質を作り込まなければならない。これは至難の業である。さらに言えば組み込み系ソフトウェアの品質は他に比べても見えにくく、将来を見越しての開発は困難である。
基本部の開発で将来の品質特性を予測できないのであれば、具体的な品質特性の話ではなく、一段階抽象化した品質ポリシーの策定をするしかない。例えば、「どの品質特性に重点を置くのか」「どの品質特性は切り捨てていいのか」「品質特性間の関係はどうするのか」などだけを決める。
派生開発における品質の問題として「品質は徐々に悪くなる」という「ゆでガエル」の法則がある。派生開発を続けると品質は少しずつ劣化するので、いつか基本部のリファクタリングをして品質の再構成をしなくてはならないが、そのタイミングを逸しがちである。結局、基本部はそのままに派生部で複雑怪奇な作り込みをすることになる。こうならないために、基本部は計画的なリファクタリングが必要である。または古いシステムを捨てて新規開発を行う心意気と蛮勇(*)が欲しい。
(*)組み込み系では古きを捨て新しきを作るときには、勇気以上の蛮勇が必要。蛮勇は「失敗する勇気」と言い換えてもいい。
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IoT時代の組み込み系ソフトウェア品質
組み込みソフトウェアにおける「品質」とは、一体、何者であろうか。多用されている言葉であるがその実態はようとしてしれない。この連載ではIoT時代の組み込み系ソフトウェアの品質」をテーマに開発現場の目線で見ていく。出演者は情報系に籍を置く大学1年生の紅美 香美(くみ こうみ)と品質 寛容(しなしち ひろい)。
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