PTC Forum Japan 2017|ブラザー工業 講演レポート
ブラザー工業が“考えてから作る”設計を実現するために選択した道(2/2 ページ)
3つの課題を解決する「Mathcad」、その活用方法とは?
お詫びと訂正:本レポート記事の基となる講演のスライド撮影および記事化に関して、TechFactory編集部では事前に主催者であるPTCジャパンから許可を頂いておりましたが、2018年1月15日、PTCジャパンからの申し出により、記事公開段階で掲載していたスライド画像を全て削除することとなりました。記事初出時から大幅に修正することとなり、読者の皆さまに深くお詫び申し上げます(TechFactory編集部)
では、Mathcadを用いて、どのように3つの課題を解決していったのか。順番に紹介していこう。
3Dメインの設計スタイル
まずは、3Dメインの設計スタイルだ。これまで与えられた設計要件、設計目標の実現に向けて、3D CAD上でモデリングをしながら(考えながら)目的の形状を作り上げていた。「しかし、3Dモデルから始めると最初にできた形状に固執し過ぎる傾向があり、これではムダなモデリング時間が増え、無意味な履歴ばかりが積み重なってしまう。その結果、履歴機能を使って後から修正しようにも思ったように形状が変わらなかったり、エラーが発生したりして、品質や作業効率が落ちてしまう。また、3Dモデルメインで形状を考えていくと、機能、サイズ、強度、コストといった要件は満たせるが、組み立て性や耐久性、規格といったものへの配慮が不十分となり、レビュー時にそれらを指摘されて手戻りが発生していた」と高橋氏。
その解決策として、「まず設計書からスタートすることだ」と高橋氏は述べる。もちろん、多くの現場においてもExcelなどを用いた設計書から設計を始めていると思われるが、ブラザー工業では設計書にMathcadを用い、Mathcadの中で数式や変数を駆使して設計書を作り上げていくこととした。「Mathcadによる設計書を用いることで、目指すべき形状について、3Dモデリングをする前に“机上”で検討が行える」(高橋氏)。設計書作成の段階である程度形状に当たりを付け、変数を連動させてCreoの中にMathcadで定義した諸条件などを渡す。そして、これを基にCreoでモデリングを行って形状を作り、重心位置、トルク、荷重といった項目を測定して、その結果を再度設計書にフィードバックする。これにより、設計書で形状を考えてから3Dでモデリングを行う(考えてから作る)という一連のループを回すことが可能となる。
分断された設計書と3D
2つ目の課題、分断された設計書と3Dについてはどうか。通常、設計書はExcelなどで作成され、設計現場では設計書のメンテナンスをしつつ、それらをファイルとして管理している。しかし、設計書と、図面にひも付く3Dモデルがリンクした状態で管理されることはほとんどなく、別々のファイルで、別々の場所に分断されて管理されるケースが多い。「そのため、情報源として唯一正しく、最新であるべき設計書の所在が分からなくなるという事態が発生する。また、設計書と3Dモデルは別ツールであるため、数値の転記ミスも発生しやすい」と高橋氏は指摘する。
この問題に対しても、Mathcadを設計書とすることで解決できる。例えば、それぞれの部品単位でMathcadによる設計書を用意し、このMathcadによる設計書を基に部品のモデリングを行う(Creoの3DモデルにMathcadの設計書を内包する)。必要であればExcelコンポーネントを活用して、Excelの数値とMathcadをリンクさせて一緒に管理することも可能だ。これで設計書と3Dモデルは完全にリンクした状態を保つことができ、「“3Dモデルを見れば、同時に設計書も確認できる”といった運用が実現可能となる」(高橋氏)
伝わらない設計根拠
そして、3つ目の課題が伝わらない設計根拠だ。前述の2つの課題、3Dメインの設計スタイル、分断された設計書と3Dのような状況下にある設計現場では、設計変更や次期製品の開発が発生した際に、設計書ではなく、過去の3Dモデルを参照して、それを流用していきなり3D CAD上で設計してしまいがちだ。「そうなると、いつまでたっても3Dメインの設計スタイルから脱却できず、設計書がおろそかとなり、“作りながら考える”というループから抜け出せなくなってしまう」と高橋氏は述べる。
これまでのおさらいになるが、設計書をMathcadで作成し、3Dモデルとひも付けて一体管理することを続けていくことで、製品のバリエーションやバージョンが増えても、目的の設計書を容易に3Dモデルから見つけ出すことが可能となる。「3Dモデルにひも付くMathcadの設計書を見れば、設計基準となる変数などが一目瞭然であり、その当時の設計根拠を理解した上で、設計変更や次期製品の設計が行える」(高橋氏)
ブラザー工業では、設計品質向上、設計効率化という大きな目標に向けて、PLM推進活動の一環でCreo Parametricの活用を進めてきたが、設計現場の足元の部分で十分な成果を出せていなかった。その壁を今回、Mathcadを活用することで見事に乗り越えることができたという。講演の最後、竹ノ下氏は「Mathcadを用いることで、3Dモデリングをする前にアイデアを深掘りでき、ムダな履歴を作ることなく、結果的に設計効率化や品質向上につなげることができた。またMathcadの設計書とCreoの3Dモデルがリンクしているので数値入力のミスもなくなり、さらには設計書の管理という面でも負荷を大幅に軽減できた」と現段階で得られた効果についてまとめた。
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