大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
「GbEのMarvell」より脱却なるか、Caviumの買収は理想的だが新CEOの手腕は不明(2/2 ページ)
刷新された首脳陣、新CEOが打ち出したCavium買収
2016年4月に発表された経営陣の刷新により、CEOのSutardja氏ならびにCOOのDai氏はその職を解任される。何があったのか公式な発表はないが、同年5月にMitch Gaynor氏をChief Legal Officerとして招聘(しょうへい)、同8月にNASDAQの上場要件を回復したと発表した(Marvell Technology Group Ltd. Regains Compliance with Nasdaq Listing Requirements)ことから、何かやらかしたであろうことは容易に想像がつく。
同社は上級副社長による共同CEO体制を取りながらCEO/COO探しを開始し、2016年6月にAndy Micallef氏がCOOに、Matthew J. Murphy氏がCEOにそれぞれ就任する。ただ、新CEOのMurphy氏は就任からしばらく目立った言動を見せず、基本的には既存ロードマップに沿って製品を投入していく程度で、投入頻度も2016年4月以降は減っていた。その中で見せたCaviumの買収提案は、Murphy氏が初めて(公に)見せた戦略的な動きといえる。
ハイエンドにフォーカスするCavium
翻ってCavium。もともとはCavium Networks、現在はCavium, Inc.という社名であるが、こちらはMarvellよりもさらに新しい2001年の創業で、一貫してハイエンドのネットワークプロセッサにフォーカスしてきた。創業者はMuhammad Raghib Hussain氏で、現在もCEOを務める他、2003年から2016年まではCOOと最高技術責任者(CTO)、それにソフトウェア担当Vice President(VP)まで兼任していた。
同社はMIPS TechnologiesからMIPS64のアーキテクチャライセンスを取得し、cnMIPSと呼ばれる独自のMIPSコアを開発、これを搭載した「OCTEON」シリーズSoCを2005年に発表する。ちなみにこのcnMIPSを開発したのは、DECでAlpha EV7のチーフアーキテクトだったRichard Kessler氏(彼が初代CTOで、現在はServer&Embedded Computing部門のCTO)ら35人のエンジニアで、EV7で実装するつもりであったのだろうアーキテクチャをcnMIPSにつぎ込んだ。このcnMIPSコアを搭載したOCTEONとその後継のOCTEON Plusは最大16コアで800MHzの動作速度という、当時としてもかなり高速な部類の製品である。
この後同社は、マルチスレッド対応やIPCの改善などを施したcnMIPS II/cnMIPS IIIを搭載したOCTEON II/OCTEON IIIを投入、ラインアップを充実させてゆく(Photo03)。OCTEON IIIのハイエンドであるCN7xxxxシリーズの構成はかなり重厚なもので(Photo04)、エンタープライズグレードのルーターやスイッチ、4Gの基地局などにも十分対応できる性能を持ったものである。これに加えて、Network AdapterやSearch Engine、Security Processorなども用意しており、基幹ネットワーク向けのトータルソリューションを提供できる体制になっている。
このハイエンドとは別に、ARMからCPU IPを購入して構成したのが「PureVu」シリーズである。こちらはVideo Processorと称されているが、セットトップボックスやワイヤレスディスプレイ、さらには監視カメラなどのマーケットをターゲットとした製品群である。
さてそのCaviumの最大の目玉はARMv8Aコアである。cnMIPS IIIコアをARMv8Aベースのコアに置き換えた「ThunderX」シリーズは2014年に発表されたが、当初こそエコシステム(主にソフトウェアの対応)の遅れもあって、広範に普及するには至らなかった。
ところが2016年に14nm FinFETプロセスを利用した「Thunder X2」をアナウンスすると、今度は多くのソフトウェア/ハードウェアベンダーがこれに参加することになり、単にネットワークプロセッサ向けだけでなく、HPCやクラウドなどにも利用されるようになってきた。2017年8月に発表されたQualcommのCentriq 2400と併せて、Thunder X2もARMベースサーバ用SoCとして広範に利用され始める兆候を見せている(Photo05)。
理想的に見えるMarvellのCavium買収
MarvellとCaviumの概要を紹介したところで、話は「MarvellによるCaviumの買収」という本題に戻る。
ここまで紹介したように、両社の製品ラインアップにはほとんど重複が無い。強いて言えばPureVu製品の一部は重複するが、これは大きな問題ではない。しかもCaviumが抱えているマーケットは、これまでMarvellがリーチできなかったマーケットでもあり、なので理想的に合併が完了すれば、それだけ売り上げが伸びることになる。
問題は理想的な合併が可能かどうか?である。かつての(Sutardja氏/Dai氏が経営を行っていた時代の)Marvellであれば、Caviumのビジネスを全部自分でハンドリングしようとして、失敗してビジネスごと捨てられる、という未来像がなんとなく予想できたのだが、このあたりを現CEOであるMurphy氏がどうかじ取りするのかを現時点では予測できない。Caviumの開発陣の大量離脱などを起こさず、うまく顧客と製品ラインを維持できれば、今後はHPCや汎用(はんよう)サーバまでマーケットが広がる可能性を秘めているだけに、今後どうなってゆくかが楽しみである。
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これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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