製造業のIoTスペシャリストを目指そう(2)
「ひとづくり」から始まらないIoTは進まない(2/2 ページ)
(1)IoTスキルマップ
製造業における必要なIoTスキルも、その部門や職制において異なります。また、全てがつながるIoTの世界では、「従来の縦割り組織」や「明確な要件を決めてからシステムを設計する方法」では効果が発揮できません。
つながったモノのデータが一元管理され、全ての部門がそれらのデータを基に、全体最適な対応が必要であるため、IoT時代では担当者も幅広い知識が求められます。それらのスキルエリアは、(1)工場運営(生産管理などを含む)、(2)戦略とマネジメント、(3)関連システムと標準化、(4)法律、(5)ネットワーク/通信、(6)デバイス/エッジコンピュータ、(7)プラットフォーム、(8)データ分析、(9)セキュリティなど多岐にわたります。
従来はFA(ファクトリーオートメーション)などの担当である生産技術部門も、今後はFA機器をつなぐためのネットワーク(通信)の知識や、それらを基幹システムと合わせてデータを処理するためのクラウド技術なども知らなければいけません。従来は基幹システムの担当である情報システム部門などのIT技術者も、製造現場の生産管理や工場レイアウトなどの知識が無いとIoT化は進みません。また、営業部門なども顧客からの問い合わせなどに対し、都度関連部門に確認しなくても、一元管理されたデータを用いての対応が可能になるようにスキルレベルを上げる必要があります。
また、IoTの担当者(L1)やIoT推進リーダー(L2)、工場長など含む経営層(L3)などにおいても、その必要スキルやレベルは異なります。下記は、製造業におけるIoT人材に必要な知識・スキル体系について、(1)工場運営(生産管理などを含む)から抜粋したものです。
(2)Off-JTによるIoTスキルの習得
IoTによる製造現場改善やスマート工場構築のプロジェクトでは、今まで業務を一緒に実施してこなかった部署も参加しての推進が必要になります。その際には、知識エリアが異なる担当者が使用する用語などでも誤解が生じるなど、意思疎通ができないという問題が発生することがあります。
また、自社の専門分野以外では、他社との連携やベンダーの協力を得る必要もあると思いますが、連携先やベンダーの話をうのみにすると、後になって問題が発生したり、自社に不利益な状況での契約となってしまうことがあります。この問題を解決するためには、生産管理やIoTの基礎となる技術などを適切に把握するOff-JTによるIoT関連スキルの習得が必要です。
ただし、Off-JTと言っても、より現場に近い事例や演習などを含めた研修や単なるクイズ形態では無く、実践で生かせることが可能な試験問題などの実施が効果的です。連載「製造業のIoTスペシャリストを目指そう」は「まず、試験問題に関する背景を説明してその後に試験問題に挑んでもらい、最後にその正解を含めた解説」という流れになっています。単に正解/不正解というだけでなく、目的意識をもった上で、自分の知識レベルの確認が可能になります。
(3)データの収集と分析、改善の試行
IoTにおいて「つながる」ことは本質ではなく、収集したデータをいかに有効活用するかがポイントになります。データの分析では、AI(人工知能)を活用することも重要ですし、有効活用するエリアも、「作業改善」「製品検査」「工程シミュレーション」「産業用ロボットの自律化」など多数考えられます。IoT人材には、データを収集し、分析し、有効活用できる能力が求められます。従来の定性的な業務の進め方では、改善改革は進みません。
統計分析の知識も重要ですが、今後はデータを生かし、どのように業務改善に結び付けるかを考える「データサイエンティストの資質」が、業務や製品の改善、新たなビジネスモデルの構築に大きく関わってくるといっていいでしょう。
このデータを有効活用できるIoT人材を育成するには、経営層などのトップマネジメント自らがデータドリブンで判断する行動を示し、IoT時代の組織文化を醸成していく必要があります。従来型のトップマネジメントが都度責任者に状況を確認するのではなく、一元管理されたIoTデータを見て判断し、全体最適を目指した定量的ゴールを設定した指示を出す流れが必要です。
さいごに
先ほども記載しましたが、実際にIoTに関連する知識などの理解のために、「製造業のIoTスペシャリストを目指そう」では、毎月製造業とIoTに関連する問題を出題し、その解説を実施していきます。参考にしていただければ幸いです。
著者紹介:
高安篤史氏(たかやすあつし)
コンサランス 代表、中小企業診断士、サートプロ IoT技術講師
早稲田大学理工学部工業経営学科卒業後、大手電機メーカーで20年以上にわたってストレージ製品などの組み込みソフトウェアの開発に携わり、プロジェクトマネジャー/ファームウェア開発部長を歴任する。
自身の経験から「真に現場で活躍できる人材」の育成に大きなこだわりを持ち、その実践的な手法は各方面より高い評価を得ている。DFSS(Design for Six Sigma)に代表される信頼性管理技術/プロジェクトマネジメントやIoT(Internet of Things)のビジネスモデル構築に関するコンサルタントとしての実績やハイスキル人材の育成にも定評がある。2012年8月合同会社コンサランスを設立し、代表に就任。
- 中小企業診断士:神奈川県中小企業診断協会所属
- 情報処理技術者(プロジェクトマネジャー、応用情報、セキュリティマネジメント)
- 2011年IPA(独立行政法人情報処理推進機構)SEC journal No.25にて、論文「DFSS(Design for Six Sigma)による組込みソフトウェアの品質改善」発表
- 「ETEC(組込み技術者試験)・クラス2」グレードA
- IoT検定制度委員会メンバー
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製造業のIoTスペシャリストを目指そう
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