カルソニックカンセイ 新会社「WHITE MOTION」
未パッチでも「停止」はできるように――過渡期ならではの「車のセキュリティ」を模索(2/3 ページ)
「セーフティ」と「セキュリティ」の二軸を両立
車もサイバー攻撃のリスクと無縁ではないことが知られるにつれ、車本体のメーカーはもちろん、「Tier1」と呼ばれる大手部品サプライヤーなども、セキュリティを意識したモノ作りに取り組み始めている。その中でWHITE MOTIONは、「セーフティ(機能安全)」と「セキュリティ」という2つの軸を両立させることで特徴を打ち出していくという。
「車だけで考えると、サイバーセキュリティのナレッジがあまり豊富ではなくセーフティに寄りがちだ。一方でITはというとセキュリティを優先してセーフティが抜けがちだ。WHITE MOTIONにはこの二軸がそろっている」(蔵本氏)
昨今、サイバー攻撃が巧妙化するにつれ、防御だけでは不十分であり、侵入される可能性があることを前提に、検知、対処、復旧をどう実現するかが重要になっている。車のセキュリティにおいても、侵入を前提とした取り組みが必要だ。それも、「ITの場合は何か起きたときのロジックはさまざまあるが、車の場合、何よりも重要なのはどう機能安全に倒すか、どうセーフティに倒すかということ」(蔵本氏)。つまり、仮に巧妙なサイバー攻撃を受け、機能不全を引き起こしたとしても、乗員に危険を及ぼさないようにするフェイルセーフの仕組みを確立しておくことが重要だという。
同時に、車に関する知見や特性、性能を生かした対策も考慮していく。一例が、バッファオーバーフローの脆弱性を狙った攻撃から保護する「アドレス空間のランダマイゼーション(ランダム化)」だ。Windowsなどで採用が広がっている仕組みだが、PCに搭載されるCPUに比べると処理能力が貧弱な車載/IoT機器のチップでは、実装が難しい。将来的にはハードウェアのパワーが向上していくかもしれないが、「過渡期にある今には、過渡期ならではのソリューションが求められる」と蔵本氏はいう。
「ITの知見をそのまま車のセキュリティに生かせるかというとそうでもない。『こうあるべき』というべき論だけで守れるほど車のセキュリティは甘くない。今の車のアーキテクチャを大きく変更することなく、延長線上でどうセキュリティを提供できるか。うまく現実解を出しつつ、理想像に近づけていきたい」と蔵本氏は述べた。
知見をWhtieMotion社内だけに閉じず、オープンに公開していくことも考えているという。また車載システムに限らず、広くIoTや重要インフラといった領域にも提供していく計画だ。
車ならではのライフサイクルに合わせた最適解を模索
もう一つ、ITと車とで大きく異なるのがライフサイクルだ。「ITはトライ&エラーで短いサイクルでリリースし、どんどん変えていく。一方車の場合、『取りあえず出してみよう』なんてことはあり得ないし、ちょっとした追加やアップデートが簡単にできるものではない。ITのセキュリティライフサイクルと車のセキュリティライフルが違うのはしょうがない話で、それを前提に、ITをどう生かせるかが問われている」(蔵本氏)という。
ITシステムでは、脆弱性が発見されるとパッチが提供される。ただ、重要な役割を担うサーバでは、アプリケーションの動作検証などに時間がかかり、その間に攻撃を受けてしまうケースもある。2017年5月から感染を拡大し、いくつかの企業でいまだに被害が生じているランサムウェア「WannaCry」は、そのギャップを示す一例だ。
では、車の場合はどうだろうか。セキュリティパッチの適用を支援するような枠組みは存在していないが、万一脆弱性が狙われ、悪用されると、人命に関わる被害が生じる恐れは否定できない。蔵本氏は、ここでも「全てを防御することは無理であり、レスポンスとリカバリー、対処と復旧ができるかが問われる」と述べた。
また、「走る」「曲がる」「止まる」という車としてのベーシックな機能と、ネットワークと協調してよりよいサービスを実現する「アドオン機能」とを切り離し、仮に脆弱性が見つかってもレスポンス&リカバリーによって基本機能だけは確保できるセキュアなデザインを採用することも一つの可能性だ。パッチが当たっていなければ外部接続やテレマティクス機能は利用できなくても、きちんと走り、曲がり、止まれるような車――前述の車の開発ライフサイクルの関係上、その実現には時間がかかるだろうが、そんなアイデアも考えられるという。
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