「ARMコアの普及」(後編)――Intelの牙城に迫るプロセッサIP(2/2 ページ)
Intelのホームグランドを侵食するARM
ここまでの話はCortex系のプロセッサほぼ全てに当てはまる話であるが、ハイエンドのCortex-Aに関しては更にもう1つ、他社に優位性を持つファクターがある。それは最終製品価格だ。
Cortex-Aがカバーする領域はタブレットからサーバまで幅広いが、ここで圧倒的なシェアを握っているのがIntelであることはよく知られている。そのIntelが高い利益率を誇っているのも有名な話であるが、それは高い製品の利益率設定に起因するところが大きい。Intel製品を使ってシステムを作ろうとすると、プロセッサの値段が下がらない以上、自社利益を限界まで削らない限り製品コストは高止まりすることになる。
ここにARMベースのプロセッサを使うことで、劇的にコストを下げられる可能性が出てきた。
例えば下図(Photo02)は、2UのストレージサーバをIntelのXeon E5-2690v3ベースで構築した場合と、CaviumのThunder Xベースで構築した場合で比較したものだが、システムコストで1万4000ドル、消費電力で35W下げられるという試算になっている。
絶対的なパフォーマンスなどXeonが優れている部分も多いが、最終的なシステムコストの低さはエンドユーザーには魅力だし、Intelベースで構築した場合に比べてより利幅を取りやすい事もメリットとなる。
Thunder-Xはアーキテクチャライセンスを受けてCaviumが独自開発したコアなのでCortex-Aそのものではないが、既に多くのベンダーがCortex-Aベースでこうした用途に向けたサーバ向けSoCを多数開発中(その最右翼がFreescaleだが、他にもTexas InstrumentsやMellanoxなど幾つかのベンダーが名乗りを上げている)であり、既に出荷開始されている製品も少なくない。
IntelはこのCortex-Aと正面から勝負した経験がある。最初の主戦場はモバイル向けで、Cortex-Aシリーズが高い支持を得ているタブレットやスマートフォンに向けてAtomベースのSoCを投入してマーケットシェアを握ろうとしたが、担当部署であるMCG(Mobile and Communications Group)は記録的な赤字を垂れ流し続け、2016年に撤退したのは記憶に新しい。
要するにIntel製品は性能はともかく高価格なのは間違いなく、これをARMベースにすれば劇的に最終製品価格を下げられる可能性が浮上しており、そのため、さらにARMへの傾倒が始まりつつあるというのが、昨今の状況なのである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
特集(エレクトロニクス)
「エレクトロニクス」関連の特集記事です。
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] 自動車業界には好機 脱炭素×コスト削減×現場改善を実現するエネルギー戦略 -
製品資料
[株式会社 Green AI] 脱炭素投資をすぐ回収したい 自動車業界にも有効なCO2削減アプローチ -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向
関連記事
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
CAE解析をAIエージェントに任せてみた 人は何を担うのか
-
2
高度な半導体/電子デバイスの非破壊不良解析を支える「3D X線技術」に迫る
-
3
「ロボットアーキテクチャ」実態調査2026年版:現在の課題と優先事項を解説
-
4
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:製造現場にフィジカルAIをどう実装するか――電子版2026年9月号
-
5
スマート工場動向調査2026
-
6
「見て覚えろ」が通じない時代 製造業の保全技術はどのように継承すればよい?
-
7
動き出したファナックの「フィジカルAI」
-
8
【読者調査結果】製造業の脱炭素動向調査2026
-
9
自律走行搬送ロボット(AMR)の位置推定と自律走行はどこまで高精度化できる?
-
10
はじめての化学工学まとめ(Part1)
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー