TechFactory通信 編集後記
素直な発展こそ「3Dプリンタ」の進む道
3Dプリンタ市場は今後も拡大傾向だそうです。
メルマガ読者の皆さま、あけましておめでとうございます。お正月は、たこ揚げ、羽子板、コマ回し……ではなく、新年早々「3Dプリンタ」で子どものためにおもちゃ作りをしていた筆者です。
筆者のように個人で“モノづくり”を楽しんでいる人たちが少なからず存在することは皆さんもよくご存じかと思いますが、かつての“3Dプリンタブーム”の際、勢いで導入してしまい、十分に活用されぬままホコリをかぶっている3Dプリンタが多くみられるのも事実……。子どもと一緒に3Dプリンタでモノづくりを楽しんでいる立場からすると、そうした話を聞くたびに何だか悲しい気分になってしまいます。
素直な発展こそ「3Dプリンタ」の進む道
2016年12月に矢野経済研究所が発表した「3Dプリンタ世界市場」に関する調査結果によると、国内における3Dプリンタ出荷台数の状況としては、2013年下期~2014年にかけて巻き起こった“3Dプリンタブーム”の反動(理想と現実のギャップ)から、2015年はローエンド機種を中心に出荷数量が大きく落ち込んだそうです。
確かに、3Dプリントするために必要な3Dデータの作成には専門知識が必要になりますし、3D CADなどのツールを使いこなすためのスキルも必須となります。そのため、十分な準備のないまま導入してしまった個人/企業の方々にとって3Dプリンタは、“何でもできる魔法の箱”どころではなく、“何だか面倒臭い箱”となってしまい、結果的に出荷数量の伸び悩みにつながっていったのだと思います。
皆さんもよくご存じの通り、3Dプリント技術自体は「ラピッドプロトタイピング(RP)」と呼ばれる試作手法として、製造業を中心に以前から活用されてきましたが、先のブームではその裾野を十分に広げるほどのインパクトはなかったといえますし、多くの方に“過剰な期待に対する落胆”というマイナスイメージを残す結果となりました(もちろん、筆者のように楽しんで使っている人やビジネスでうまく活用している人たちもたくさんいます!)。
……と、ここまでは60万円未満のローエンド3Dプリンタのお話で、高額な産業用ハイエンド3Dプリンタに関しては、モノづくりの現場における導入が本格化しています。
自動車分野や航空宇宙分野などでは、3Dプリントされたパーツを実際の最終製品に組み込んだり、治具の製造や金型の代わりとして活用したりと、着実に利活用が進んでいます。実際、矢野経済研究所の調査でも試作品の造形の他に、治具、最終製品(の一部パーツなど)、金型の造形といった回答が目立ちました。ご存じの方もいるかもしれませんが、個人的にはスワニーの3Dプリント樹脂型「デジタルモールド」に可能性を感じています。同技術を用いることで、量産材料を用いた試作や小ロット生産を安価に、迅速にでき、金型製作コストの削減にも貢献できるそうです。
産業用ハイエンド3Dプリンタの今後のけん引役としては、航空宇宙、自動車、医療、家庭用電気製品などの分野を中心とした最終製品の造形。そして、造形サービス事業者(サービスビューローなど)での導入増加だそうです。装置の性能向上、新素材の開発、製造現場などへのさらなる普及により、市場は今後も拡大傾向にあり、世界の3Dプリンタ出荷台数は、2013~2019年までの年平均成長率(CAGR)は77.0%で推移し、2019年における出荷台数は215万台になる見通しだそうです。
また最近では、金属積層造形技術を活用した動きも活発化しています。材料となる素材を繰り返し積層していく“足し算”の加工である3Dプリント(AM:積層製造)技術に、材料のカタマリから形を削り出していく“引き算”の加工である切削などを組み合わせた“複合型加工機”にも注目が集まっています。2016年11月に開催された「第28回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2016)」では、先行するDMG森精機やヤマザキマザックに対抗する形で、オークマからも金属積層造形を含む複合型の加工機が発表され、工作機械市場の中で注目すべき動きの1つになっています。
3Dプリンタは、ローエンド、特にパーソナルの領域ではブームの波にイマイチ乗り切れなかった感がありますが、ハイエンドの領域に関しては製造・加工装置としてある意味“素直な発展”を遂げているといえるのではないでしょうか。個人的にはパーソナル領域のさらなる進化(?)にも期待しつつ、2017年の動向をウォッチしていきたい所存です。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechFactory通信 編集後記
「モノづくり総合版 TechFactory通信」に掲載された、TechFactory担当者による編集後記の転載記事一覧です。
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] AIで脱炭素計画を最適化、初年度からエネルギーコストとCO2を削減する方法 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の開発動向、日本の投資戦略やコスト目標の見通しは?
関連記事
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:フィジカルAIが生み出す新たな「設計思想」――電子版2026年8月号
-
2
半導体装置メーカー 業績まとめ【2027年3月期第1四半期】
-
3
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part4)
-
4
一時は時価総額トヨタ超え キオクシア2026年度の動向
-
5
微細配線間の絶縁劣化をどう捉える? 先端パッケージ評価の最前線
-
6
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part1)
-
7
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:2026年上半期の半導体業界を振り返る――電子版2026年7月号
-
8
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part3)
-
9
CADツールの見直しは本当に必要? 切り替えの理由と効果を7つの質問で検証
-
10
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part2)
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー