IT導入完全ガイド
“走りながら考える”プロジェクト管理に必要な機能とは
アイデアが市場競争力の源泉となる場合が少なくない現代では、「走りながら考える」開発スタイルに追従できるプロジェクト管理手法が必要とされている。本稿では、こうした環境下でのプロジェクト管理の在り方について考えてみたい。
要件が複雑化、多様化している現在、製品開発ではより効率的でガバナンスの効いたプロジェクト管理が求められるようになってきた。物理的なモノを作る場面だけでなく、ソフトウェア開発など“形のない製品”を生み出す場面でも同様だ。むしろソフトウェア実装のアイデアが市場競争力の源泉となる場合が少なくない現代では、「走りながら考える」開発スタイルに追従できるプロジェクト管理の手法が必要とされているともいえる。今回はこうした環境下でのプロジェクト管理について考えてみたい。
今はビジネスモデル構築よりも先に走り出さなければ間に合わない
企業内でのIT活用を考えたとき、以前は「ビジネスモデルが固まった後に必要とする機能をITで実装する」という手順が当たり前だった。ITがビジネスモデルの根幹に影響を与えることはなく、あくまでも業務支援などの目的であった。
この場合のプロジェクト管理はほとんどが静的なものであり、全体計画を立てれば、以降はステイタスだけを変えていけば運用できるものだった。ITで実現したい要件が最初から最後まで首尾一貫していたからだ。
しかし、情報技術の革新が進み、さまざまな業務やビジネスが顧客ニーズや世の中のITトレンドに合わせて随時要件が変わるのが当たり前になりつつある。計画はその都度、修正が求められるため、プロジェクトの計画も変更があることを前提とする必要がある。
ビジネス環境の変化に伴って、プロジェクト管理の在り方もまた変えていかなければならない時代になっている。
要件定義が難しく、不確実性も高いプロジェクトをどう管理していくか
状況に応じて随時計画を見直して変更していく必要がある開発プロジェクトの場合、従来のようにExcelシートなどを使った管理では手が回らなくなったり、適切なメンテナンスができなくなってしまうリスクがある。
もちろん、神業を持った専任のExcel職人的な管理担当者を置いて、随時変わっていくスケジュールやリソースの状況をきちんとアップデートしていくことができるのなら不可能ではないが、そのために人員を割いて運用を続けるのは決して効率の良い作業ではない。
ではどうすれば要件定義が難しく、不確実性も高いプロジェクトを管理していくことができるのか。
そのためにはまず、従来のようにトップダウン型で開発チームにプロジェクトを投げるようなプロジェクトの進め方を見直す必要がある。熟練のプロジェクトマネジャーでも判断が難しい要件が上がってきたときに、チーム(現場)の課題解決能力に任せる、という判断も必要だ。その場合には、きちんと権限を委譲した上で、開発に関わる判断を現場に任せ、マネジャーは進捗状況のレポーティングを徹底させたり、都度の状況判断に徹したりする、という進め方を取り入れる必要がある。
開発チームには、人のアサインから予算の管理、場合によっては開発計画の立案自体も委譲する。成果の評価も開発メンバー個々ではなく、チーム単位だ。今まではプロジェクトマネジャーが開発項目を細分化して各メンバーにタスクを割り当て、メンバーは自分の担当分が終わればプロジェクトとの関わりも終わっていたが、新たな進め方においては、メンバーはチームの中での自分の担当分が終わったなら他のメンバーの支援に回るという動き方をすることになる。
専用のプロジェクト管理ツールで、アジャイル開発に対応する
こうして開発チームがプロジェクトを能動的に主導できる環境が整ってくると、開発チームには“プロジェクトは上から与えられるものではなく、自分たちで獲りにいくもの”という意識が芽生えてくる。より困難なプロジェクトにチャレンジし、成功に導くことができれば、開発チームとしての高い評価に直結するからだ。“I’m done”から“We’re done”への意識の変化が起こるのである。
この環境下では、あるプロジェクトが発生したとき、各開発チームはプロジェクトマネジャーに対して、“自分たちがやります”あるいは“自分たちならできます”と自ら名乗りを挙げるようになる。一方のマネジャーも、各チームの現状のスキルや過去の実績を踏まえた上で、任せるチームを選定することが可能となる。
こうしたプロジェクトの進め方と非常に相性がいいのが、今ソフトウェアの開発現場で取り入れられている「アジャイル開発」だ。1~2週間といった短いスプリント(=作業サイクル)で開発と修正を繰り返し、“現場で使われるソフトウェアを作り上げる”ための開発手法である。主体的に動く開発チームが一体となってSCRUM(スクラム)を組み、現場部門と密にコミュニケーションを取りながら、現場がソフトウェアに求めるビジネス価値を定期的に再認識して開発を進めていくため、完成したソフトウェアがビジネス要件と懸け離れてしまうような事態は発生しにくい。
またスプリントの繰り返しやプロジェクト経験の積み重ねで各チームのスキルもより正確に見える化されていくので、プロジェクトマネジャーは“この案件ならあのチームに任せよう”という判断もより的確にできるようになっていく。
このようなソフトウェア開発プロジェクトを正確かつ効率的に管理していくことは、Excelではもはや不可能だ。そこで専用のプロジェクト管理ツールが求められることになる。
アジャイル開発を支援するプロジェクト管理ツールのさまざまな機能
アジャイル開発に対応したプロジェクト管理ツールでは、まずチームが担当する全ての要件が、保留/作業前/作業中/レビュー中/完了という5つのステイタスの今どこにあるのかを一目で示してくれる“カンバンボード”というビューを提供している(図3)。ちなみにここでいう要件とはプロジェクト自体のことではなく、開発するソフトウェアが実装すべき1つ1つの要件だ。
カンバンボードの中で各要件は、チーム内での担当者とともに横長のボックスで表されており、チームに権限委譲されている場合には、要件の優先順位付けもチーム内で意思決定できるので、メンバー間で話し合って“ある要件の優先度が上がったので、今作業中のこの要件はちょっと保留にしよう”というステイタスの変更も、該当するボックスをドラッグ&ドロップするだけで簡単にできるようになっている(図4)。
このカンバンボードを見るだけで、全メンバーは今自分たちのチームがどれぐらいの作業をしているのか、それぞれがどれぐらいの進捗状況にあるのかを把握することが可能となり、さらには“この人が担当しているこの要件は1週間以上も作業中になっているが、何か困ったことが起きているのではないか?”という状況も読み取ることができる。
その場合、このプロジェクト管理ツールではバージョン管理ツールと連携することで、
具体的にその人が何をしたのか、例えばソースコードを変更した内容までをトラッキングできるようになっている。そこでその状況を見た他のメンバーは、バージョン管理ツールを介してアドバイスを送ったり(図5)、あるいは直接相談に乗ったりすることが可能となる。これはメンバー間のスキルのバラつきを解消することにもつながっていくだろう。従来のようにプロジェクトマネジャーがメンバー個々にタスクを割り当て、その進捗をExcelで管理しているような状況では、こうした相互フォローアップの環境は絶対に生まれない。
次にソフトウェア開発のプロジェクトを運用担当者の視点から見た場合、一番困るのは、開発側から追加や修正の機能が次々と押し寄せてきてデプロイしてくれといわれることだ。システムの安定稼働を最優先に考えたとき、そう簡単に実装していくわけにはいかない。
そこで開発側に何が変わったのかを問い合わせてみても、きちんとテストしたのでとにかく大丈夫だといわれてしまう。これでは運用側は不安で仕方がない。
そこでプロジェクト管理ツールがデプロイツールと連携することで、プロジェクト管理ツール側の要件に付与されているIDベースで、どんな機能が追加されたのか、あるいはどんなバグが修正されたのかが分かるようになる。
これによって運用担当者は、この機能が追加されるならアップする価値がある、このバグが修正されているならアップする価値がある、という判断を行うことが容易になる。
そして最後になったが、ソフトウェア開発のオーナーは言うまでもなくビジネス部門だ。彼らは当然プロジェクトの進捗状況も確認したいと考えている。
しかしIT部門が使うプロジェクト管理ツールは、ビジネス部門にとって見やすいものではない。そこでIT部門はビジネス部門から“進捗状況はExcelで出してほしい”というオーダーを受けることになる。これではいつまでたっても、Excelを使ったプロジェクト管理から抜け出すことはできない。
そこでプロジェクト管理ツールはドキュメント管理ツールとも連携して、ビジネス部門が使いやすいビューを提供する。
ビジネスオーナーは、ドキュメント管理ツール上で企画書を作成し(図7)、さらにQ&A形式の入力画面で解決してほしい要件を作成していく(図8)。そして実際に作ってほしいタイミングが来たとき、正式に開発チームに依頼して要件化するのだ。その要件は開発チームのカンバンボード上に表示され、一方のビジネスオーナーはドキュメント管理ツール上で、準備完了、レビュー中など、各要件の進捗状況を確認することができる(図9)。
ここまでアジャイル開発を支援するプロジェクト管理ツールの各種機能を紹介してきた。しかしカンバンボードのような機能は、従来型のウオーターフォール開発においても非常に有用なものだ。プロジェクト全体を一目で把握することが可能になり、仮に手戻りが発生したとしても、スケジュールの組み直しは簡単だ。少なくともExcelでガントチャートを描いて、Excel上でステイタスも変えて、という作業よりもはるかに効率的だし、全体像も見渡しやすくなる。実際にまだウオーターフォール開発が主流の企業でも、カンバンボードでプロジェクトを管理するというところは出てきているようだ。
そして最後に1点、留意すべきポイントがある。それは開発チームに権限を委譲し、今回紹介したようなプロジェクト管理ツールも導入して、アジャイル開発に臨もうとする場合には、現行の組織体制や人事制度も見直す必要があるということだ。
例えば能動的に動いてくれるチームを編成するためには、どんなメンバーが必要で、彼らを適切に評価するためには、どのような指標を設定するのかを考えなければならない。真の意味での“脱Excel”を実現するためには、今の組織体制や社内ルールにテコ入れする必要があるということも忘れてはならない。
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IT導入完全ガイド(提供:キーマンズネット)
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