IT導入完全ガイド
あの自動車部品も! 大規模製品開発プロジェクトの脱Excel管理術とは
プロジェクト管理に「Excel」を活用しているケースは多い。しかし、複雑化・多様化するニーズに迅速に対応し、厳しいグローバル競争を勝ち抜くためには、Excelシートによるプロジェクト管理では限界がある。では、プロジェクト管理ツールを導入してみてはどうだろうか?
さまざまなプロジェクトの管理に、Excelを利用している企業は数多い。しかし、多くの市場がグローバル化しつつあるため、短納期や原価低減要求への迅速な対応が市場での競争優位に結び付く傾向が強まっている。一方で、製品に求められる要件も複雑化、膨大化しており、他部門とのタイムリーな情報連携が必須になっている。こうしたことから、Excelシートに頼ったプロジェクト管理は非効率かつ不便な状況が増えてきた。それでは、プロジェクト管理専門のツールは、市場の要請にどのように対応し、どのような機能を実装しているのだろうか。
短納期化でコストダウン! 「複数部門のコラボ」を前提としたプロジェクト管理とは
製造業におけるモノづくり、例えば自動車部品メーカーにおける部品製造を考えたとき、現在ではメーカーを取り巻く環境そのものが以前とは大きく変化してきている。
顧客からは高機能化と納期の短縮を迫られ、同時にコストダウンも求められる。短納期化とコストダウンのための工夫として、設計から製造に至る複数の開発プロセス――例えばメカ機構の設計や試作と制御ソフトウェアの開発――を並行して行わなければならない。いわゆる「コンカレントエンジニアリング」だ。部門をまたいで、進捗状況やスケジュールの全体像を抜け漏れなく共有できなければ手戻りが多くなってしまう。
またその際には、全体工程の中のどのポイントで、どんなデザインレビューを行うのかなどについて全部門のコンセンサスを取り、さらにプロジェクトの日程を管理するツールの標準化を図る必要もある。
この日程管理を行うための標準的なツールとして、現在多くの企業で利用されているのがExcelに代表される表計算ソフトだ。既にさまざまな業務シーンで使われているので、プロジェクトの管理者やプロジェクトメンバーが使い慣れているというメリットがあり、また表形式なのでスケジュールの表現もしやすいといった利点がある。
しかし一方で、各部門が大本の日程表から自分たち専用のシートを作成して、管理することが多くなると、二重管理が発生することになる。また日程が変更された場合の修正が面倒で、転記ミスが起こる恐れもある。
一度動き出したプロジェクトが当初の予定通り、ほとんど変わらないという場合なら、Excelでの管理でも十分かもしれない。しかし今はビジネス変化のスピードが急激で、製品に求められる要件や取り扱わなければならないデータ量も膨大になってきている。さらに、「企画→設計→試作→量産準備……」といった各プロセスも、前工程が終わってから次工程というように1つずつ順番に進められるという状況ではない。プロジェクトの開始時から複数部門のコラボレーションが求められているのだ。
Excelでは今のプロジェクト管理が立ち往かない3つの理由
それではもう少し細かく、いまExcelで行われている開発日程管理の課題を見ていこう。
まずプロジェクトマネジャーが、プロジェクト全体の日程(=大日程)を立案する。そこには企画や設計など、関係する各部署がいつから、どんな作業を行うのかも記載されており、またこの大日程の中で、全体の進捗管理も行われることになる。
進捗管理を行う際、プロジェクトマネジャーは各部門から進行状況の情報を収集し大日程に反映する。複数のプロジェクトが同時に動いていて、それらを一覧で管理したいと思ったときには、別途案件一覧のシートを作成し、大日程から転記するという作業が必要だ。
一方、各部門の日程管理者は、プロジェクトマネジャーが立てた大日程から自部門に関係する日程を切り出して自分のExcelに転記する。さらにそこから部門内の各チームの計画や、人や製造用機械など製造に必要なリソースの計画、あるいは自部門が担当している案件一覧など、必要に応じて切り口の異なる複数の日程表を作成する。ここでも転記が発生する。
こうしたExcelを使ったプロジェクト管理には、大きく3つの問題点が存在する。
まず情報の管理を人手に頼ることになるので、転記時の情報漏れや管理レベルの差が発生する恐れがあることだ。
また、コンカレントエンジニアリングが求められる現在、複数部署が同時並行でプロジェクトを進めることになる。その際に部門間の日程の擦り合わせ、すなわち情報連携をリアルタイムに行うことが難しいことだ。
さらに各部門が参照するプロジェクトの日程は大日程表ではなく、各部門がそれぞれに作成する日程表が利用されることになり、ここで情報の二重管理が発生する。大日程表は報告のためだけに存在することになり、ほぼ形骸化してしまう。
これでは効率的なプロジェクト管理を行うことができないだけでなく、最終的にアウトプットされる製品の品質にも大きな影響を与えることになる。企業には今、転記ミスや二重管理、日程調整の難しさといったExcelの数々の問題点を克服し、効率的なプロジェクト管理を実現することが求められている。
プロジェクト管理ツールが、Excelによる日程管理の問題点を全て払拭する
その際に有用となるのが、プロジェクト管理ツールだ。変更データの即時反映や他の行程への影響度合いのアラート機能といった、各部門マネジャーが管理する際に有効な機能を持っていることも少なくない。プロジェクト管理に特化したツールであるだけに、導入実績が多いほど、現場の声を取り込んだ機能強化が行われている可能性が高い。
まずプロジェクト管理の基本となる日程の管理については、大日程から自部門の日程、さらには関連部署の日程までを1つの画面内で、多段のガントチャートで表示することが可能となっている。そしてプロジェクトマネジャーが大日程を変更したら、それと連動して各部門の日程も自動的に変更され、部門担当者にはアラートが通知されるようになっている。部門担当者は、自部門が関わるプロジェクトの進捗状況や変更状況を確認し、それらとの整合性を取りながら自部門の日程調整を行うことが可能となる。情報の転記や二重管理も不要だ。
自動車部品メーカーなど、組み立て加工系の製造業での導入実績を持つ日立ソリューションズ東日本のSynViz S2の場合、特に評判の良い機能が「シャドウ」機能だという。
機構設計、強度解析、制御ソフトウェア開発、ソフトウェア実装……のように多数の部門がプロジェクトに参加している場合、全体の日程や、関連部門のおおよその日程を参照したい場合がある。関わっている他のプロジェクトの関連日程を自部門の日程内で、一画面で参照できれば、周囲の部門の作業進捗状況を確認しながら、調整できるようになるため、地味ながらも現場の評価が高い機能なのだという。
この点、Excelで大日程を管理している場合は、計画に変更が発生すると、プロジェクトマネジャーは大日程用のExcelを修正する。しかし、そこから転記して各部門の日程を作成していると、変更点が分からなくなることがある。また、転機漏れが致命的なエラーになることも少なくないという。
実際に、「ある部署で計画変更を把握したのが2カ月後で、そのときにはもうスケジュール通りにプロジェクトを完遂させることが不可能になっていた」という場合も少なくないという。たった1つの転記漏れが、プロジェクト全体の遅れを招いてしまうのがExcelを利用したプロジェクト管理の問題点の1つといえるだろう。
・製品大日程や他チームの日程など、必要なプロジェクトを参照しながら日程調整が可能
・他プロジェクトの関連日程を「シャドウ」として貼り付け可能で、日程の不整合が分かる
専用ツールならではの機能も多くあり、例えば制約条件を定義できたり、GUI操作でスケジュール調整が可能であったりする。また、製造業でいえば、定期的に実施される「デザインレビュー(設計内容を複数の部門で評価する会議)」など、特定のアクティビティーパターンを事前に登録したり、新規プロジェクト作成時に幾つかのパターンからドラッグ&ドロップで配置したりできる。
全プロジェクト/設定したプロジェクトグループの進捗を、チェックポイントと進捗率により大日程単位で俯瞰的かつ“一目”で“簡単”に確認できる(プログラムチャート機能)。また、進捗が気になるプロジェクトは、別ウィンドウで詳細確認できる
参考までに、計画に変更があった場合には、その差分のみを報告してくれる機能もある。少し細かくなるが、この場合には計画変更履歴一覧画面からドリルダウンしていくことで、追加や変更のあった個所を一目で確認することができ、さらにこの画面はスナップショットとして保存できるので、週次あるいは月次で進捗状況を確認する際の補足資料として利用することで、前回報告時からの変更点を簡単に把握することが可能となる。
一方各部門の担当者も、自部門の実績を登録する際にはドラッグで簡単に行うことができ、また成果物を日程表とひも付けて管理することも可能となっている。
アクティビティーとファイルを一元管理することにより、成果物管理の手間を低減。ファイルの履歴管理も可能
自動車部品メーカーのように製品開発に関わる関係者、関係組織が多いプロジェクトでは、システム連携の有無も重要なポイントだ。最近では、HTTP経由でデータを参照/更新できるWeb APIを介して、例えば受注管理システムと連携して「受注が入れば自動的に日程を組み立て、納期を計算する」といった仕組みを用意することもできる。
ここまで“脱Excel”をキーワードに、ツール活用による効率的なプロジェクト管理の実現方法について紹介してきた。しかし実際にExcelからプロジェクト管理ツールの導入に踏み切る企業の最も大きな動機は、プロジェクト管理の効率化というよりも“納期厳守”のためだという。
先に、ある部門が計画変更を把握したのが2カ月後で、そのときにはもうスケジュール通りにプロジェクトを完遂させることが不可能になっていたという話を取り上げたが、Excelを使ったプロジェクト管理では、こうしたトラブルが発生する恐れは永遠に付いて回ることになる。それはいわば企業のコンプライアンスとしての問題であり、さらには顧客企業にも多大な機会損失を与えてしまうことにもなり兼ねない。より正確で迅速な情報管理を実現するという観点からも、プロジェクト管理ツールの活用は必要不可欠だ。
今回は多数の部署や組織が連携して製品を作り上げる製造業におけるプロジェクト管理とその支援ツールを見てきた。大規模プロジェクトでは全体の進捗管理だけでなく部門やサブプロジェクト単位でさらに詳細なスケジュールやリソース調整を行う必要がある。モノの取引を伴う製造業では、人的なミスが発生したりデータ破損が発生したりした場合に、財務的にも大きなリスクにつながりかねないだけに、プロジェクト管理の標準化やシステム化は急務といえるだろう。
■コラム:プロジェクト管理ツールの効果的な活用は“運用次第”!
今回紹介したプロジェクト管理ツールでは、プロジェクトマネジャーが大日程を変更したら各部門の日程も自動的に変更され、部門担当者にはアラートが通知されるようになっている。
確かにツールの機能としては非常に有用なものだが、この仕組みがあるからといってプロジェクトマネジャーが一方的に大日程を変更し、各部門担当者はツールから通知されるアラートを確認してくれという姿勢では、プロジェクト全体のスムーズな運用もままならない。
やはり事前にプロジェクトマネジャーは部門担当者と調整を行い、それを踏まえた上で大日程に変更を加え、ツールからのアラートはあくまでその確認用、というような決めごとを作っておく必要がある。
また製造業の工場などでは、PCの操作にそれほど慣れていない担当者もいる。どんな場面でツールを使うのか、また実際にどんな操作をすればいいのかを、きちんと理解しておいてもらうことが肝要だ。
どんなに使い勝手がよくて、便利な機能を提供してくれるプロジェクト管理ツールを導入しても、結局手を動かすのは人間だ。ツールと人をどうつなぐか。それが運用のルールである。ツールの導入時には、運用ルール作りも併せて考える必要がある。
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IT導入完全ガイド(提供:キーマンズネット)
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