IDC Japan 国内情報セキュリティ成熟度調査
情報セキュリティ責任者を取締役にすべし! 国内情報セキュリティの現状と課題
国内企業は、情報セキュリティ対策にどこまで積極的に取り組んでいるのだろうか。IDC Japanが実施した「国内情報セキュリティ成熟度に関するユーザー調査」の結果を基に、国内における最新の情報セキュリティ対策事情を紹介する。
近年、国内大手・中堅企業を中心に、IT投資への意欲が高まっているという。その主な目的は「セキュリティ対策/強化」が挙げられる。企業は、サイバー攻撃や情報漏えいなどのリスクに備え、情報セキュリティ対策への取り組みを強化する傾向にある。
こうした傾向は製造業でも同様で、設計開発のグローバル化やIoT/インダストリー4.0の到来により、海外拠点との設計データのやりとりや、ネットワークを介したセンサー情報の収集、設備機器とITシステムとの連携、クラウド活用など、ネットワークを介して取り扱うデータが増大しており、情報セキュリティ対策が急務となっている。
万が一、サイバー攻撃などにより設計データや顧客情報が流出したらどうなるか。その被害の大きさによっては企業の信用を大きく揺るがしかねない。そうならないためにも、企業は被害を最小限に抑えるための取り組みを行わなくてはならない。
では、実態はどうか? 国内企業は情報セキュリティ対策にどこまで積極的に取り組んでいるのだろうか。IT調査専門会社であるIDC Japanが実施した「国内情報セキュリティ成熟度に関するユーザー調査」の結果を基に、国内における最新の情報セキュリティ対策事情を見ていこう。
外部からの脅威対策とコンプライアンス対応に終始していてはダメ!
同調査は2016年7月に、ITサービス業界を除く、従業員数500人以上の企業に属するIT関連部門の課長職以上で、情報セキュリティ戦略や計画策定に関与する200人を対象に実施された。回答企業の産業分野は、製造業(32%)、流通(12%)、金融(11%)などで構成され、これらを総合して国内企業における情報セキュリティ成熟度を分析した。なお、成熟度は、全く導入していない場合を「ステージ0(未導入)」とし、導入後のユーザー企業の成熟度を「ステージ1(個人依存)」「ステージ2(限定的導入)」「ステージ3(標準基盤化)」「ステージ4(定量的管理)」「ステージ5(継続的革新)」までの5段階で評価している(補足)。
このたびの調査・分析の結果、国内情報セキュリティの成熟度は以下のような分布となった。
まず、基本的なセキュリティ戦略とマネジメントが欠如している企業が20.7%いることが分かった。これらの企業の多くが決まったセキュリティ予算を持たず、必要になったときにはじめてセキュリティ対策を実施している。このステージにある企業は、被害を受けて初めて次のステージへのステップアップを検討することが多く、極めて場当たり的であるといえる。
そして、注目は63.2%の企業が、ステージ2(限定的導入:36.0%)およびステージ3(標準基盤化:27.2%)にとどまっている点である。その理由について、IDC Japan ソフトウェア&セキュリティグループ リサーチマネージャーの登坂恒夫氏は「国内の半数以上の企業が、外部からの脅威対策と、コンプライアンス対応に終始するだけで、ITリソース全体でのリスク管理を考慮した情報セキュリティ対策に取り組めていない」と指摘する。
さらに、セキュリティ部門を持つ企業でも部門長のリーダーシップや、セキュリティ部門と他部門とのコミュニケーションが弱く、組織全体として情報セキュリティ対策に取り組めている企業が少ない傾向にあるという。中でも前述したステージ2および3にとどまっている企業の多くでは、「情報セキュリティ責任者やセキュリティ担当幹部が取締役レベルにおらず、事業施策における意思決定に参加できていない。そのため、セキュリティ侵害が起きることを前提とした演習や侵害分析などの運用プロセスの構築、先端的なテクノロジーの導入のための投資がなされていない」と、登坂氏は見解を述べる。
米国との差はどこにあるのか?
では、米国と比較した場合、日本企業の情報セキュリティ成熟度は、どのような傾向にあるのだろうか。
まず挙げられるのは、ステージ3(標準基盤化)より先のステージへの移行が米国よりも遅れている点である。米国の場合、ステージ4(定量的管理)とステージ5(継続的革新)の割合が日本よりも高く、ステージ3(標準基盤化)よりも上のステージの割合の減少率は日本よりも緩やかで、日本に比べてさらに上のステージへ移行している状況であるという。
また繰り返しになるが、多くの日本企業では、情報セキュリティ責任者やセキュリティ担当幹部が取締役レベルにおらず、米国と比べてセキュリティ部門の幹部のリーダーシップが弱い傾向にあり、さらに上のステージに進むことを遅らせているとする。
国内企業が今後取り組むべきこと
こうした現状を踏まえ、登坂氏は「情報セキュリティ部門の幹部を取締役レベルに置き、情報セキュリティ責任者のリーダーシップを強化すべきである」と述べる。これにより、リスク評価とコスト評価を考慮した事業施策の意思決定が可能となり、運用プロセスや先進的なテクノロジーの活用への取り組みが進展し、さらに上のステージへと成熟度が高まるという。加えて、「情報セキュリティ責任者やセキュリティ担当幹部は、情報セキュリティ基本計画を立案する際には、情報セキュリティの目的にリスク低減とコスト低減を含めるべきである。そして、基本計画でリスク評価できる評価基準を明確に示しておくことが必要だ」(登坂氏)と指摘する。
なお、今回の調査では産業分野別の調査を行っていないため、製造業に特化した詳細については触れられていない。このことに対して登坂氏は「例えば、グローバル展開しているような企業であれば当然リスク管理について検討を進めているはずであるし、法的な面でも不可欠になってくる。そういった要因により産業分野ごとに成熟度の差異はあると思われる。また、業界規定、法令順守などの側面からも情報セキュリティ対策を強く求められる産業分野もあるので、傾向の違いが見られるかもしれない」と述べる。
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