宮田健の「セキュリティの道も一歩から」(7)
もしも「サイバー攻撃」の被害に遭ったら? 次に取るべき行動は……
「モノづくりに携わる人」だからこそ、もう無関心ではいられない情報セキュリティ対策の話。今やサイバー攻撃の被害に遭うことは珍しいことではない。では万が一、その被害に遭ったらどうすべきか。ダメージコントロールや被害の復旧を粛々と行いつつ、次に取るべき行動とは?
あなたが普段使用しているシステムが、何らかの形でネットワークにつながっているのであれば、サイバー攻撃は人ごとではありません。あなたが思っている以上にあなたのシステムは重要で、情報が集まっており、それが「価値(=お金)」に置き換わるからです。
そんな時代ですから、もはや「サイバー攻撃の被害に遭った」ということは珍しくない話です。もちろん、珍しくない話を「恥ずかしい話」にしないようにするための努力は必要です。しかし、万が一は起こり得ます。その際、同業他社が行っている常識レベルのセキュリティ対策が同じように行われていたのであれば、周囲からある程度「仕方がない」と受け取ってもらえる場合もあるでしょう。
ここでは「同業他社」というのがポイントです。攻撃者は同じような情報を持ち、似たようなシステムを運用する「特定業種」を狙うことがあります。同業他社のA社は攻撃から守られたのに、自社は守れなかった……という場合は大きく報道されてしまうかもしれません。ですので、できれば同業他社とは「セキュリティ対策」の情報共有をしておいた方がいいでしょう。
そしてもう1つ、大事な情報共有のポイントがあります。
やられたことは仕方がない――それを「次」につなげよう!
そのポイントとは、「『攻撃された手法』は共有すべき」ということです。攻撃されること、そして被害を受けてしまうことも、この時代では仕方がないことです。やられたことはやられたこととして、ダメージコントロールや被害の復旧を粛々と行うとして、「どのようにやられてしまったのか」という点に関しては、積極的に情報を共有することが重要です。
例えば、攻撃のきっかけが「メール」だったとしましょう。そのメールの文面や、添付されていた文書(これこそが「マルウェア」です)、そのメールが着弾した時期、規模、対象などは全て、次なる攻撃から身を守るための「ヒント」になります。特定の文字列やマルウェアの特長が分かれば、自動的にそのメールをシャットアウトすることもできるでしょう。
では、これらの情報はどのように情報共有すべきでしょうか。一番よいのは、その情報を取りまとめ、適切に処理してくれる機関に任せることです。日本においては「IPA」が頼りになります。IPAとは「情報処理推進機構」という組織で、ウイルス/マルウェア感染の報告や不正アクセスの報告を受け付けており、定期的に情報を一般向けに告知したり、あまりに同様の攻撃が集中している場合には、注意喚起を出したりしています。多くの企業にとって、心強い味方になってくれるはずです。
もちろん、皆さんの企業が契約している、ウイルス対策ソフト/セキュリティ対策総合ソフトのベンダーに報告することも有用です。IPAをはじめ、セキュリティ対策ソフトを提供する企業は、多くの攻撃を観測することで、被害を未然に防ぐように活動しています。あなたの企業が攻撃されたという事実は残念なことかもしれませんが、その事実が次の攻撃を防ぐ重要な情報になり得るとも考えられるのではないでしょうか。
「サイバー攻撃対策の教科書」が無料で提供されている!?
実はこの観点で考えると、「サイバー攻撃を受けて、どのように攻撃が進行したか」という情報は、守る側にとってもヒントの宝庫であるといえます。具体的に言うと、情報漏えい事件や不正アクセス事件の「調査報告書」は無料で配布されている“サイバー攻撃対策の教科書”とも言えます。例えば、2015年に発生した「日本年金機構」の不正アクセス事案は、3つの報告書が公開されています。
これらを見ると、本来インターネットにはつながっていないはずのデータベース/サーバから、いかにして情報が持ち出されていったのか、不審なメールが着弾してから、どの程度の時間をかけて最終目的が達成されていったのかがよく分かります。
セキュリティに長く携わっている方が、高度なサイバー攻撃を「凄腕スナイパーによる狙撃」と表現したことがありました。どれだけ万全に準備をしても、『ゴルゴ13』に狙われたら守り切れない可能性が大きいということです。
そんな攻撃者に狙われたらひとたまりもありませんが、企業としてはせめて「一度やられた手は二度とくわない」ようにしっかりと対策をしたいものです。
そのためには、過去の事例から学び、万が一守れなかったとしても「次につなげる」ために、公開できる限りの情報をきちんと共有することが重要だと思います。その際、ぜひセキュリティベンダーやIPAなどの組織を“活用”してください。きっと相談相手になってくれるはずです。
著者紹介:
宮田健(みやた たけし)
元@ITの編集者としてセキュリティ分野を担当。現在はフリーライターとして、ITやエンターテインメント情報を追い掛けている。自分の生活を変える新しいデジタルガジェットを求め、趣味と仕事を公私混同しつつ日々試行錯誤中。現在、ITmediaエンタープライズにて、もはや誰もが人ごとではないITの課題や話題を紹介する「半径300メートルのIT」を連載中。また、それをまとめた書籍「デジタルの作法~1億総スマホ時代のセキュリティ講座」も発売中。
筆者より:TechFactoryでの本連載では、ITセキュリティの「あるべき論」「正論」だけでなく、モノづくりに携わる方たちに「気楽に」「楽しく」セキュリティを考えていただけるように、さまざまな話題を取り上げたいと思います。「セキュリティっていわれてもねえ……」と思わず考えてしまった皆さまに覚えていただけるようなコラムにしたいと思います。お楽しみに!
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宮田健の「セキュリティの道も一歩から」
「モノづくりに携わる人」だからこそ、もう無関心ではいられない情報セキュリティ対策の話。でも堅苦しい内容はちょっと苦手……という方に向けて、今日から使えるセキュリティ雑学・ネタをお届けします。
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