宮田健の「セキュリティの道も一歩から」(1)
もう無関心ではいられない「情報セキュリティ対策」
「モノづくりに携わる人」だからこそ、もう無関心ではいられない情報セキュリティ対策の話。でも堅苦しい内容はちょっと苦手……という方に向けて、今日から使えるセキュリティ雑学・ネタをお届けします。
「セキュリティ? そんなものはセキュリティソフトだとか、ネットワーク機器が何とかすることでしょ?」――そのように考えている読者の方々もいらっしゃるのではないでしょうか。
そう思う気持ちはとてもよく分かります。セキュリティベンダーやネットワーク機器ベンダーは、利用者自身がセキュリティのことを気にしなくてもよい/意識しなくてもよい状況を目指すべきだと思います(実際、関連企業の皆さんはそれに向けた努力をされていると思います)。
しかし、今やPCやスマートフォンだけでなく、ゲーム機、テレビ、HDDレコーダー、複合機、自動車、電車など、多種多様なものが当たり前のようにインターネットにつながります。「モノのインターネット(IoT:Internet of Things)」などと呼ばれる通り、かつてスタンドアロンで機能していた小さな組み込みデバイスであってもネットワークにつながる時代なのです。
こうした10年前とは大きく異なる状況から、今、モノづくり(製造業)に携わる皆さんであっても“サイバーセキュリティ”に関する基礎知識や勘所について理解を深める必要が出てきています。
もはやPCだけじゃない、ネットワークにつながる全ての機器が狙われている
2015年3月、情報処理推進機構(IPA)がネットワーク対応機器に関する注意喚起を公開しました。具体的には、ネットワークにつながる機器が、不用意に“全世界へ公開されている”可能性を指摘するものでした。
関連リンク:情報処理推進機構(IPA)
IPAは、複合機、Webカメラ、情報家電がインターネットに接続できるようになり、非常に便利になった半面、“攻撃者から丸見えになっている”と指摘しています。
確かに、家族の一員であるペットの様子を外出先からも見たいというニーズを、Webカメラは簡単に実現できます。オフィスに置いてある複合機はコピー、FAXだけでなく、スキャンした結果をメールで送信することもできるようになりました。これまで単独で動いていたものがネットワークにつながることで、外出先からも操作ができるのはとても便利で未来的な機能です。
しかし、そんな便利な機能を実現するエンジニア自身が、「最新のサイバー攻撃やその対策」について知らないと、本来必要な「セキュリティ機能」が欠落したまま製品化されてしまうリスクがあるのです。
セキュリティ機能が不十分だと、例えば、家庭内に置くデバイスであるという前提で作った機能が、実はインターネット経由で誰からも操作できてしまうケースも考えられます。もし、そのデバイスが監視カメラだった場合、世界中からのぞき見されてしまう可能性があるのです。
前述のIPAの注意喚起は2015年3月に行われたものですが、これが2016年1月になって再度話題になり、JPCERT コーディネーションセンターからも同様の注意喚起が行われました(IPAやJPCERT コーディネーションセンターって何? という人がほとんどだと思いますので、これらの組織については本連載でもあらためてご紹介します。ご安心を!)。
関連リンク:JPCERT コーディネーションセンター
モノづくりに携わる人にこそ、セキュリティを身近に感じてほしい!
もちろん、これらの事象は利用者側が適切な設定を行っていれば防げるものばかりです。それに「注意喚起」も何度も出ていました。
しかし、実際は機器を最初に設定する際に分かりやすくアクセス制限を行うよう誘導していなければ、誰も「適切な設定」などしてくれませんし、何度も注意喚起が出ていても、それを自主的に見に行かなければ意味がないのです。
「セキュリティは重要だ」と理解しつつも、どうしても後回しになる現実があります。なぜなら「利益につながらないから」――。これはあらゆる業界で共通の悩みごとです。
しかしそれでも、皆さんのような「モノづくりに携わる人」にこそ、セキュリティを気にしてほしいのです。皆さんが日々作られているモノは、PCやモバイルデバイスのように、簡単にソフトウェアアップデートできるものばかりではなく、自動車や電車、あるいは産業機器や医療機器のように、社会生活/企業活動/人命に関わる“簡単には停止することができないモノ”も含まれるでしょう。
だからこそ、製品開発の最初の段階で、なるべくセキュリティに気を使うべきなのです。きっと皆さんも「手戻り」が一番嫌いな言葉だと思います。これからはその要素の1つに“情報セキュリティ”を入れてほしいのです。
本連載は、そんなモノづくりのエキスパートに向け、ともすると面倒くさくて余計な存在である「セキュリティ」を、ほんの少しでも興味深いものにできればという思いからスタートさせます。セキュリティの“あるべき論”はここではなるべく語らず、「誰でも実現できるセキュリティ」の浸透を目指したい考えです。
狙いは「朝礼で話せるセキュリティ」。さっと読めて、いつかどこかで“使えるネタ”を紹介していきたいと思います。それではまた次回お会いしましょう!(次回に続く)
著者紹介:
宮田健(みやた たけし)
元@ITの編集者としてセキュリティ分野を担当。現在はフリーライターとして、ITやエンターテインメント情報を追い掛けている。自分の生活を変える新しいデジタルガジェットを求め、趣味と仕事を公私混同しつつ日々試行錯誤中。現在、ITmediaエンタープライズにて、もはや誰もが人ごとではないITの課題や話題を紹介する「半径300メートルのIT」を連載中。また、それをまとめた書籍「デジタルの作法~1億総スマホ時代のセキュリティ講座」も発売中。
筆者より:TechFactoryでの本連載では、ITセキュリティの「あるべき論」「正論」だけでなく、モノづくりに携わる方たちに「気楽に」「楽しく」セキュリティを考えていただけるように、さまざまな話題を取り上げたいと思います。「セキュリティっていわれてもねえ……」と思わず考えてしまった皆さまに覚えていただけるようなコラムにしたいと思います。お楽しみに!
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