戦略コンサルの論考を変革のヒントに(1)
半導体企業はデータで強くなれる!(2/2 ページ)
研究開発にはこう使える
続いてこの論考は、半導体企業が(1)製造、(2)研究開発、(3)営業それぞれの領域で、アドバンスド・アナリティクスをどのように適用し得るのか、順番に解説していきます。ここでは(2)研究開発に注目して、読み込んでみましょう。
マッキンゼーは、これまでのコンサルティング経験から、半導体企業のほとんどは研究開発部門の運用が非効率的だと指摘します。80%程度の割合で、開発プロジェクトは当初のスケジュールに間に合わないとしており、その理由としてチームの生産性を過大評価したり、プロジェクトの複雑性を過少評価したりすることがあると述べています。
同社が2000件を超えるIC開発プロジェクトを対象に調査したところ、開発の初期と後期には所要の人員規模を大幅に少なく見積り過ぎる半面、中期には余剰人員を抱えがちという結果が出ました。このような精度の低い見積りが1つの要因となって、IC開発プロジェクトの予算や市場投入時期が当初の計画からずれてしまいます。
また、個々のプロジェクトチームや研究開発の取り組み全体について、複雑度合いや生産性を厳密に測定できる指標がほとんどないことや、市場開拓の状況を評価したりプロジェクトの必要性を見積もったりするための適切なフレームワークを持っていないために、研究開発のリソース配分を勘や経験だけで決めてしまうケースが少なくありません。マッキンゼーの調査によると、この手法では企業は完了までの所要期間を少なくとも15%、場合によっては400%も短く見積もってしまいます。
アドバンスド・アナリティクスを適用すれば、勘や当て推量によらない、ファクトベースの意思決定が可能になり、研究開発の効率を高めることが可能です。研究開発のリソースを製品のライフサイクルにわたって適切なプロジェクトに割り振り、最適に使えるようになります。それにより企業は、例えばプロジェクトの複雑度合いを統計的にモデリングしてスタッフの適正水準を決定することで、研究開発の有効性と効率を改善することが可能です。
マッキンゼーの調査では、半導体企業はIC製品の市場投入期間を最大10%短縮できることが分かりました(図2)。他にもアドバンスド・アナリティクスは、研究開発プロセスを効率化したり、製品ラインアップを最適化したりといった効果をもたらします。
論考を先へと読み進めると、研究開発において改善が見込まれる上記のような各領域について、もう少し詳しい解説と、いくつかの事例が具体的な数字とともに紹介されています。
今回は割愛しますが、この論考では研究開発と同様に、半導体企業における製造と営業(価格設定、顧客管理)についても、アドバンスド・アナリティクスの適用によってどのような改善が見込めるかが記述されています。
そして論考の最後のセクションでは、どうやってアドバンスド・アナリティクスを導入するのか、高い抽象度で説明しています。そこでマッキンゼーは、成功へのコア要素として次の4つを挙げました。
1.ロバストで、実際の行動につながるデータを集めること
2.トップマネジメント以下、全社を挙げてアドバンスド・アナリティクスをサポートすること
3.十分なトレーニングを積んだ分析チームを用意すること
4.適切なITインフラを備えること
マッキンゼーの論考ではこれらの要素について、もう少し具体的なアプローチが紹介されていますので、ご覧になってみてください。
答えは書いてない。得られるのは示唆
いかがでしたか? 「理想論っぽい話だよね。ウチで実際に使うのは想像できない」あるいは「そんなの常識。分かっているよ」と思ったかもしれません。そうです、こうした論考はあなたの会社に過不足のないピッタリの正解を必ずしも教えてはくれませんし、現場レベルでの着手方法や実行方法も示してはくれません。
でも「使えない」「自分は分かっている」と思ったなら、それ自体もヒントになりませんか? 「なぜ使えないのか」「分かっているのに実行してないのはなぜか」を考えるきっかけになるでしょう。
例えば、「アドバンスド・アナリティクスで営業効率を高めるなんて、ウチでは使えない」と思ったなら、その理由を自問してみましょう。もしかしたら市場が国内に閉じていて、顧客企業にいる特定のキーマンとの関係構築が何よりも重要かつ支配的であるから、その他の因子が与える影響は取るに足らない……のかもしれません。それで良いのか、いやマズい!! ということなら「アナリティクスよりも前に、市場戦略こそが課題だ」というふうに考えが前進するかもしれません。
結局のところ、考えるのはあなた、行動するのもあなたです!
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戦略コンサルの論考を変革のヒントに
大企業の上級役職者や経営企画室メンバーでもなければ、仕事で関わる機会がほとんどない戦略コンサルティング企業。でも、モノづくり業界の皆さんにも役立つ論考や調査レポートを、実はたくさん発信しているのです。そうした情報を筆者がピックアップして紹介する連載。
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