AtmelとMicrochipに見る、半導体企業M&Aの難しさ:大原雄介のエレ・組み込みプレイバック(1/4 ページ)
2016年春、安定経営といわれていたAtmelがMicrochipに買収された。買収に至る背景と経緯と、同種企業の統合の困難さについて触れてみたい。
2016年4月、Microchip TechnologyはAtmel Corporationを買収した。
ちょっと簡単に経緯を紹介すると、そもそもAtmel Corporationの買収が報じられたのは2015年5月までさかのぼる。当時、Atmelを率いていたSteven Laub氏の引退が公式に発表されたのがきっかけだ(Atmel:Atmel Chief Executive Officer Steven Laub to Retire)。
Laub氏は当時56歳だから、引退にはちょっと早いように思える。とはいえ、もう10年以上同社のCEOを勤めてきており、そろそろ交代しても不思議ではない時期でもある。引退を伝えるプレスリリースの末尾には、ごく一般的に「The board of directors will conduct the process to choose Laub’s successor and will consider internal and external candidates for the position.」(取締役会はLaub氏の後継者の選定作業に入る予定で、候補者は社内と社外の両方で検討する)とあり、少なくともこの時点ではAtmel自身の身売りという話にはなっていなかったと考えていい。
ところがその翌月になって「Atmelが身売り」という話が出てきたことで、にわかに騒がしくなる(EE Times Japan:Atmelが売却を検討か)。周囲からは、経営は安定しており身売りする必要は無いと思われていたからだ。
表面化しつつあったAtmelの苦境
ただ、決算報告書の数字を見てみると、また別の感想を抱かざるを得ない。
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