本気で「AIマーケット」を狙う半導体ベンダー:大原雄介のエレ・組み込みプレイバック(2/2 ページ)
IoTが招く「データの爆発」にAI(ディープラーニング、DNN)で対応する動きが本格化しており、組み込み機器におけるDNNの推論(実行)を担う半導体チップの競争も激化の様相を呈している。
競争激化する、組み込み機器でのDNN推論実行環境
推論に関しては来たデータをベースに判断を行う訳であり、学習よりもはるかに処理負荷は小さい。こう推論機能を組み込み機器、具体的にはセンサーハブやセンサーフュージョン機器に載せようという話が盛んになされている。
実はこれに向けても、既に多くのプレイヤーが手を上げている。まずGPUで言えば、NVIDIAが「Jetson TX1/TX2」を強力にプッシュしているし、Vivante Technology(2016年にVeriSiliconが買収)のGPGPUコアもDNN向けをアピールしている。「Mali GPU」を擁するARMはMali GPUに関して「DNN向けにも利用可能」という一歩引いた立場を崩さないが、別のDNN向けソリューションを現在準備中のためだろう。Imaginationは「PowerVR Series7XT Plus」から、DNN向けを強力にアピールしている。
ただこれらは強力な推論エンジンになりうる一方、コストと消費電力もまた高めである。そこでもっと低コストなソリューションを提案しているのがCEVAである。CEVA-XM DSPにソフトウェアフレームワークを組み合わせたCDNN(CEVA Deep Neural Network)は、MPUやGPUに比べるとずっと低コスト&低消費電力のソリューションになりえるという主張だ。Cadence傘下のTensilicaもDSPベースのIPを提供しており、他にもDSP IPを持つベンダーがやはりDNN向けのフレームワークを提供といったニュースが出てきている。
同様に、GPUに比べてずっと低い消費電力とコストを実現できるとするのがFPGAベンダーで、XilinxとAltera(Intel PSG)という2大ベンダーに加えて、小〜中容量のFPGAを提供するLattice SemiconductorとMicrosemi Corporationもこのマーケットを狙っている。
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