RambusがPhysical IPをCadenceに売却/GDDR7とMRDIMMが標準化に向けて前進:大原雄介のエレ・組み込みプレイバック(1/2 ページ)
エレクトロニクス/組み込み業界の動向をウオッチする連載。今回はRambusがPhysical IPをCadenceに売却した話と、GDDR7/MRDIMMの標準化に向けた動きを紹介する。
2023年7月はそれほど大きな動きがなかったエレクトロニクス/組み込み業界だが、細かい話をいくつかご紹介したい。
RambusがPhysical IP BusinessをCadenceに売却
2023年7月20日、CadenceがRambusの保有するSerDes/Memory Interface PHY IPのビジネスを買収することを発表した(Cadenceのリリース/Rambusのリリース)。これによりCadenceは、Rambusが得意としていた高速Interface PHY IPやMemory PHY IPを自社で提供できるようになる。
別にCadenceはこれまでMemory IPを保有していなかったわけではない。2010年にCadenceは2010年にVerification IPとMemory IPなどで有名だったDenali Software, Inc.を買収し、同社のIPポートフォリオを自社のものとしている。現在もこのDenaliベースのDDR/LPDDR PHY IPを提供中だ。これはInterface PHY IPも同じことで、PCI Express/CXLやMIPI、汎用のSerDesなどを各種提供している。
ただ昨今、こうしたI/Fの速度がどんどん向上しつつある。例えばPCI ExpressやCXLは次世代は64GT/sec PAM-4を目指しているし、GDDR7も標準化そのものはまだながら、技術仕様はほぼ固まった(21.3GT/sec PAM-3)。HBMはまだHBM4を目指しての標準化作業が行われている最中だが、既にMicronがHBM3 Gen2として9.6Gbps/pinの製品をリリースし始めた。Ethernetも、もうトランシーバとの接続が112Gbps(56GT/sec PAM-4)は当たり前で、既に業界は224Gbps(112GT/sec PAM-4)に移行を始めている。IPはそもそも市場でそうした標準規格が流行し始める前に用意しないと間に合わない訳で、なのでこうしたGDDR7とか次世代HBM、あるいはトランシーバ用PHYなどはもう既に準備ができているのが当然で、その次を目指して開発をスタートしていないと間に合わないということになる。この分野では結構Synopsysが積極的であり、例えばChiplet用のXSR(eXtra Short Reach)IPを最初に発表したのは2019年、Rambusが2020年でCadenceは2021年のことだし、Ethernet向けの224G SerDesをCadenceが発表したのは今年のことだが、Synopsysは昨年動作デモを行っているという具合に、ちょっと後手に回っている感が否めない。このあたりを挽回して、Synopsysと並ぶPHY IPベンダーのポジションを確実にするために、RambusのPHY IPを丸ごと買収するというのは、納得できる話である。
納得できないというか理解が難しいのはRambusの側の事情だ。
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