IoTセキュリティの現実的な仕組みと課題(4)
完全な答えのないIoTセキュリティの世界、最後はやはり……(2/3 ページ)
1.データの改ざん
ここ数年、自動車会社による“検査データの人為的な改ざん”が問題になっているが、外部の悪意ある第三者によって測定装置自体が改ざんの影響を受ける可能性も考えられる。これはCPUとソフトウェアによって構成され、制御される機器や装置の全てに当てはまる問題で、仮に排ガスなどの測定装置が影響を受けた場合、正しいデータを得られないばかりか、出荷した自動車の改修、当局や販売店への対応、顧客の信頼や売上、株価の下落を招く恐れがある。
あるいは薬剤の製造データが改ざんされてしまうと、製薬会社はゆっくりと死に至る風邪薬を製造することになるかもしれない。それがどのような原因であれ、実際に死者が出てしまえば、自身が改ざん被害を受けた企業であるとしても、事業への影響はかなり大きなものになるはずだ。
2.ビジネスシステムの改ざん
経理、営業、製造、在庫、配送、給与など、さまざまなシステムがビジネスを支えており、それらはコンピュータシステムによって動作している。今ではクラウドで提供されているものも多いが、犯罪者はこれらを改ざんすることで大きな利益を得ようと考える。
金融機関では、顧客の利便性向上を目的にネットバンキングやモバイルバンキングなどのサービスを提供している場合もあるが、警察庁の統計によれば2017年度の不正送金は10億円を超えているという。また、金融庁のレポートを見れば、金融機関における内部犯行者による着服や横領などの不正行為が後を絶たないことが分かる。外敵だけでなく、“内なる犯罪者”への対策も考えなければならないということだ。これは製造業も同じである。
3.製品の改ざん
製品の設計や製造工程で改ざんを受けた場合、マルウェアそのものを含んだ製品が出荷される恐れがある。米国では、安全保障上の理由で中国製品の輸入規制が行われ、Appleなど米国国内メーカーの製品に搭載されている半導体が改ざんされているのではないか? と疑われた。製品の設計、製造から出荷までのサプライチェーン上で、改ざんが行われていないことを証明することは難しい。製品に使用される全ての半導体の設計、製造を自社で管理している企業は恐らくないだろう。もし、OSやアプリケーションなどのソフトウェアも自社で全てのソースコードを管理しているという企業があるとすれば、それはそれだけのコストに見合う収益を上げており、十分なエンジニアを雇っているだけでなく、製造のための設備も自社で(仮に外注していたとしても)管理していることになる。もちろん、内部犯行の可能性もある。仮にスマートフォンが改ざんされてしまうと、会話やメールの詳細、口座情報、ショッピング情報、移動経路などが盗まれる恐れがある。
自動車では、ソフトウェアでエンジン、ハンドル、ブレーキなどを制御している。これらが悪意ある第三者に改ざんされたとなれば、交通事故を一斉に引き起こすといった恐ろしい事態が起こるかもしれない。もし、事故に至る前に問題を発見できたとしても、製造出荷済みの部品の交換は非常にコストがかさみ、事業を圧迫することになる。
サイバー犯罪やサイバー攻撃が、どのような形で企業や組織に影響を及ぼすのかについて十分な検討が必要である。皆さんの会社では継続的な検討を行っているだろうか。
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IoTセキュリティの現実的な仕組みと課題
デジタル(サイバー)世界と現実世界を橋渡しする「IoT(Internet of Things)」の仕組み。その可能性や利便性についての話題は尽きないが、IoTのセキュリティリスクに関してもしっかりと情報収集し、対策を講じるべきである。本連載では、工場や重要インフラで利用されつつある「インダストリアルIoT(IIoT)」の世界に着目し、IoTセキュリティの現実的な仕組みと課題について解説する。
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