TechFactory通信 編集後記
「産業用Pepper」の可能性
ロボット「Pepper」を手掛けるソフトバンクロボティクスが、自律型の業務用清掃ロボットを2018年夏に販売します。Pepper頼みからの脱却を狙いますが、蓄積したノウハウは生かされるのでしょうか。
ロボット「Pepper」を販売するソフトバンクロボティクスの記者発表会に行ってきました。発表された自律型清掃ロボットについてはこちらの記事で紹介しましたが、aibo再登場からあまり時間がたっていなかったこともあり、「ロボット」について再考するいい機会となりました。
ソフトバンクロボティクスといえばPepperの印象が強く、実質的に「Pepperの会社」として機能しています。Pepperはヒト型をしていますが、中でもコミュニケーション能力に特化したロボットであり、重い荷物を運んだり、精密作業をしたりする用途には適しません。
ソフトバンクロボティクスもPepperに対しては、対人コミュニケーションが必要な作業(仕事)における人の代替や省力化を手助けする方向での機能強化を進めており、今回の発表会でも、業種別の応答パターンをパッケージ化したテンプレートや、店舗での接客から決済までをロボットに任せるPepper用アプリケーションなどが発表されました。
ですが、ソフトバンクロボティクスの冨澤社長は、「事業は第2フレーズに入った」として、これまで「顔」(声を中心としたコミュニケーション)に注目していたところ2017年からは「脚」、その次は「手」に注目すると話します。
Pepperには脚(移動手段)も手もありますが、自律型清掃ロボットの発表やソフトバンクによるBoston Dynamicsの買収などを併せて考えると、Pepperだけに頼った事業からの脱却を望んでいることは明確です。
冨澤社長は「Pepperも進化させていく」と言いますが、同時に「ソフトバンクロボティクスはPepper株式会社ではない」とも発言しており、Pepper色を薄めたい意向です。そして「脚」に特長を持つ自律型清掃ロボットを2018年夏に投入しますが、そこにソフトバンクロボティクスとしての独自性は発揮されるのでしょうか。
この自律型清掃ロボットは米ICE社の搭乗型清掃機「RS26」に、米Brainの自律走行機能を組み込んだものです。Brainはソフトバンクのファンドが出資するベンチャー企業なのである意味グループ企業ですが、発表会で話を聞く限り、ソフトバンクロボティクスがこれまで蓄積している知見との融合はなさそうです。
対人コミュニケーションロボットを手掛けているならば、ヒトを相手にしたインタフェース開発と実装に長けているはずで、実際、試験的ながらも“産業用Pepper”とも呼べる「Pepperを対人インタフェースにした産業用ロボットアーム」という取り組みを川崎重工と行っています。
産業用ロボットについては近年、「人間との協働」が大きなテーマとなっており、人と機械がどう接していくべきかの知見には、大きな需要があるように思えるのです。そうした意味では、Pepperはコミュニケーション特化、「脚」や「手」は別ロボットというアプローチは知見の断絶につながる気がしています。
個人的な意見ですが、これまで産業用以外のロボットが大きな産業(市場)になれなかった原因の1つに、事業や知見、機体などの非連続性があると感じており、ソフトバンクロボティクスの戦略には少々不安を覚えます。
ですが、冨澤社長は「総合的に利益を押し上げていく」とPepperを含めたロボット事業をビジネスとして成長させていきたいと断言します。Pepperという縛りをなくしたことで同社がどのようなかじ取りを見せるのか、注目していきたいと思います。
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TechFactory通信 編集後記
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