大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
DRAMとNANDの「二刀流」目指す? 中国2大メモリメーカーの思惑とは(2/3 ページ)
ばくちに近いメモリビジネス
このタイミングで、例えばキオクシアの前身である東芝はDRAM事業から撤退(2001年末)してフラッシュメモリに一本化しているし、Infineon Technologiesのメモリ部門が分社化したQimondaは会社ごと2009年に無くなっている。NECと日立のメモリ部門が合併したNEC日立メモリが改称変更したエルピーダメモリは、DRAMに加えてNANDフラッシュも手掛けていたが、2012年にMicron Technology(以下、Micron)に買収されている。そのエルピーダメモリにメモリ部門を売却したのが三菱電機といった具合に、結果的に日本系のメモリメーカーはキオクシアを唯一の例外として全部メモリ事業から撤退した。
海外でも台湾Mosel Vitelicはメモリ事業から撤退してパワー半導体にシフトしたし、VIS(Vanguard International Semiconductor Corp)もメモリから撤退してFoundryビジネスにシフトした。要するにDRAM/NANDフラッシュビジネスは好不調の波が激しく、それに耐えられなかったメーカーはどんどん脱落していった格好だ。結果として残ったのがSamsung、SK hynix、Micronのトップ3社である。これに続くメーカーは組み込みなどに向けて長期間の供給保障と併せて提供するか、特定用途向けのカスタム品の提供を行うといったもので、規模的にもトップ3社から大きな隔たりがあった。
辛うじてNANDフラッシュ専業という形でキオクシアは生き残ったが、そのキオクシアもちょっと前までは会社存続が危ぶまれるほど業績が悪かった事は記憶に新しい。現在のDRAM/NANDフラッシュの空前の好景気も、もし何らかの理由で突然現在のAI関連企業に資金が流れなくなったとしたら、たちまち過剰生産に陥り、在庫急増に伴う巨額の評価損を計上せざるを得なくなるかもしれない。メモリ事業とは、割と博打(ばくち)に近いビジネスモデルなのである。
「DRAMとNANDの二刀流」は合理的なのか?
こういう過去の経緯を踏まえると、CXMTやYMTCの動きは「本当に経営の安定性につながるのか?」という素朴な疑問が生じることになる。下のグラフは2020年第1四半期以降のMicronの売上高を、製品別(DRAM/NAND/その他)に分けて集計したものだが、ご覧のように、もうきれいにDRAMとNANDの売り上げが連動している事が分かる。少なくとも、DRAMの落ち込みをNANDでカバーできる(あるいはその逆)といった事は2020年以降には一度も起きていない(し、その前もそうした動きは筆者が記憶する限り無かったと思う)。むしろ全体としての売上高の変動幅を大きくする方向にしか作用していないのは事実だ。
ただ現状のCXMTとYMTCでは、メモリ以外の半導体を製造できる余地が無い。ロジックプロセスとDRAM/NANDフラッシュのプロセスは(基本的な部分は同じと言えば同じかもしれないが)かなり作り分けというか利用される特性が異なるし、トランジスタの組成も異なる。BCD(バイポーラ・CMOS・DMOS)系のアナログ向けとかパワー半導体系ともかなり違っている。なのでFabの能力を拡充したとしても、メモリ以外のデバイスの製造を受託するのはかなり困難である。そもそも両社ともFoundry Businessの経験が無いから、受託ビジネスを始めるのは難しい。せいぜいが、Fabless系のメモリベンダー(Alliance MemoryとかElite Semiconductor、JSCなど)向けのDRAMなりNANDフラッシュなりの製造を受託できる程度だろう。
だからといって、半導体製造以外のビジネスを始めるか?というとそれも楽ではないだろう。本業と全く関係のないビジネスを初めて失敗するというのは良くある話だし、CXMT CEOのZhu Yiming(朱一明)氏にしても、YMTCのCEOのSimon Yang氏にしても、一つの事に打ち込んで成功してきた人物だけに、脇道に逸れるようなビジネスは考えにくい。そうなると、CXMTとYMTCがそれぞれNANDフラッシュ/DRAMのビジネスの方向性を模索する事そのものは理にかなっているとはいえる。先にも触れたように、両製品の製造プロセスはもはや共通ではない。プロセスルールという観点で言えばNANDフラッシュの方がDRAMの先を行っているし、また3次元(3D)積層を先に実現したのもNANDフラッシュの方である(というかまだ3D DRAMは研究室レベルの域を出ていない)。とはいえ、別にDRAMが遅れているというわけでもなく、こちらはこちらで技術的に進化を続けており、それもあってSamsung/SK hynix/Micronのトップ3+は、CXMTに対してある程度の特性面でのアドバンテージを維持している。もちろん、これはフラッシュメモリも同じ話だが。
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これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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