大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
DRAMとNANDの「二刀流」目指す? 中国2大メモリメーカーの思惑とは(1/3 ページ)
中国のDRAMメーカーCXMTと、NANDフラッシュメーカーYMTCの動きが活発になっている。昨今のIPO(新規株式公開)による多額の資金調達や、AIブームを受け、DRAMやNANDフラッシュの「専業」メーカーではなく、両方の市場に参入することを検討していると報じられている。メモリビジネスの性質を説明しつつ、両社の思惑を探ってみたい。
中国メモリメーカーの動きが活発に
7月にITmedia Newsの方にこんな記事を書かせて頂いたのだが、最近、中国のDRAMメーカーCXMT(長鑫存儲)に加えて(分量が多くなりすぎるという話もあって割愛した)YMTCの動きが活発化している。NAND型フラッシュメモリの専業メーカーであるYMTC(長江存儲科技)は2026年8月にIPOを申請し、さらなる生産量拡充を目指している。一方のCXMTは?というと、こちらも7月にIPOを実施。同社は時価総額で中国1位に躍り出ており、その資金を製造能力拡充や新技術開発に充てている。これだけなら「めでたしめでたし」で終わるのだが、9月に入ってちょっと面白い動きに出た。まずCXMTの方だが、DRAMビジネスに加えてNANDフラッシュのマーケットに参入しようとしている事が報じられた。またYMTCについても、ロイターがDRAMマーケットへの参入を検討している事がロイターなどで報じられた。多分この2件を最初に報じたのは台湾DigiTimesのこちらの記事だと思うのだが、いろいろ思う所があるのでちょっと紹介したいと思う。
そもそもCXMTはDRAM専業、YMTCはNANDフラッシュ専業メーカーとして大成功した。もっとも、この大成功はここ1年ほどのAgentic AI(エージェンティックAI)ブームに拠るところが大きい。まずはAI向けというかGPU向けに広帯域メモリ(HBM)が大量に必要とされていたところ、Agentic AIの流行でGPUだけでなくCPUも大量に必要となり、しかもKV Cacheのために従来より大容量のメモリが必要になった。このためHBMだけでなくDDR5とかLPDDR5/5Xの需要も大幅に高まり、それでも足りないのでSecondary MemoryとしてNAND Flash Storageを利用したMemory Poolが多用されるようになる。そのため、DRAMに加えてNANDフラッシュまで需要が逼迫。価格高騰により記録的な売り上げを占めるようになったのがその主要因である。
この記録的な売り上げにより、例えばCXMTのIPOでは公開価格の一株8.66RMB(209.4円)に対し、初日は49RMB(1184.8円)で取引を終了。同社の時価総額は3兆3000億RMB(約79兆7940億円)に達した。YMTCの方はまだ結果が出ていないが、330億RMB(約7900億円)の資金調達を見込んでいると報じられている。そんな訳でCXMT、YMTC共に比較的資金にはゆとりがある訳だ。もちろん、その資金の大半は製造能力の増強や新技術開発に投じられるであろうことは先にも述べた通りだが、経営の安定性にも資金を投じる方向を模索しているようだ。それが、CXMTによるNANDフラッシュとYMTCによるDRAMの製造である。
製造ラインが酷似していたDRAMとNANDフラッシュ
実は歴史的に見ると、DRAMとNANDフラッシュの製造ラインは極めて類似“していた”(過去形)。実際2000年代は、主要なメモリベンダーはDRAMとNANDフラッシュを同一の製造ラインで製造していた。もちろん、混載での製造は無理であり、DRAMとNANDフラッシュのラインの切り替えにはそれなりの期間を要するが、逆に言えば需要を見極めて「DRAMの需要が減りそうだったらNANDに切り替え、NANDの需要が減ったらDRAMに切り替える」ことをうまく実行できれば、製造ラインの稼働率を高く保つ事が理論上は可能だった。
実際には、
・DRAMとNANDの需要が別々に増減するのではなく、同じタイミングで増減する事が多く、結果需要が減ってる時には切り替えても稼働率が上がらない
・DRAMとNANDのライン切り替えのオーバーヘッドが大きく、需要が急増してもそれに供給が追い付くまでしばらく掛かり、供給が増えた頃には需要が減り始めるというミスマッチが度々発生した
・プロセス微細化に伴い、DRAMとNANDフラッシュでは製造工程の違いが大きくなり始め、共通のラインで製造するのに無理が出てきた
などの理由から、結局どのメーカーもDRAMラインとNANDフラッシュラインは別々に操業するように切り替わってしまった。
ばくちに近いメモリビジネス
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これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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