大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
ams OSRAMが繰り出す「攻めの一手」 マイクロLEDで狙う新天地(2/3 ページ)
光イーサネットでは信号が「強すぎる」
ここでミスマッチの話が出てくる。現在CPO(Co-Package Optics)などで盛り上がっている光信号向けのパッケージだが、実は現在のCPOは、いずれも既存の光Ethernetの規格をベースに実装されている。例えばTSMCのCOUPEは100GBASE-DR1をベースにしている。これは1310nm帯の光を利用し、SMF(Single Mode Fiber)を使って100Gbpsでの送受信を行う光Ethernet規格で、COUPE以外でも広く採用されている規格なのだが、何が問題かというと伝送距離が2m~500mに設定されていることだ。つまり、今の電気信号をそのまま置き換えるには、信号が強ぎるのだ。数メートル離れた場所の相手に合図を送るのに、懐中電灯の代わりにサーチライトを持ち出すようなものである。
この100GBASE-DR1をベースとした規格(例えば8本束ねた800GBASE-DR8)のトランシーバーの消費電力は、16Wとかになっている。CPOを利用して省電力化しても、恐らく10Wを切るのは難しい。なぜかというと、光源に利用するCWレーザーの消費電力が大きいからだ。だからもっと電力を抑えた規格が必要になるのだが、そうなると既存の規格との互換性が失われる。あと、現時点ではそうした標準化を行える標準化団体が存在しない(というか、標準化団体が乱立し始めており、どこもマジョリティーを取れていないので、結果的に標準化ができていない)。
マイクロLEDへの期待
ここで話はMicroLEDに移る。どっちみち現在の光Ethernetを利用した規格は、ラック内の配線とか、将来的なチップ間の接続には適さない。大掛かり過ぎ、そして消費電力も大き過ぎるからだ。さらに、全く異なる規格を持ち込むのであれば、根底から異なる方式を持ち込んでも許容される可能性が高い。ここでMicroLEDに注目が集まる事になった。MicroLEDはなにしろ自己発光素子で、そして消費電力は他の方式と比べてはるかに低い。もちろん、光の出力そのものも小さいから、到達距離が長くなると無理があるが、数メートルのオーダーならば問題なく到達できる。MicroLEDそのものの製造も既に量産技術が確立しており、しかも歩留まりは非常に高い。図1は2025年のHot Interconnectsで米Avicena Techが講演した際の資料であるが、304個のLEDとPD(Photo Detector:受光器)をTSMCの「N16」プロセスを使って試作したテストチップの模様である。要するに304本の光信号を同時に送受信する形である。信号速度は1本当たり4Gbpsと低めに抑えられているが、それゆえ転送に要する消費電力は1pJ/bit未満とされる。つまり電気信号の5分の1未満になるわけだ。
現状、このAvicena Techの技術はデモキットが用意されている程度で量産には至っていない。一応Avicena Techの説明によればケーブル長は10~20m(最大で30m程度まで可能)、消費電力はBER(Bit Error Rate:データ誤り率)とのバーターで、BERが1E-3程度でよければ0.20pJ/bit、1E-11程度まで引き上げると0.80pJ/bitになるとしており、また信頼性も8KA/cm2、80℃の環境で7000時間の連続稼働をしても光出力にほとんど変化が無かった事がレポートされているから、基本的な要件はクリアしており、今後は実際の環境での信頼性試験を行ってゆく感じになるかと思う。
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