大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
QualcommのDragonfly C1000を読み解く 「苦手な戦場」で勝負できるのか(4/4 ページ)
搭載されているのは「第3世代」のOryonか
さてこの辺でC1000に話を戻すが、今回のDragonfly C1000に搭載されているものはOryonとしては恐らく第3世代になると思われる。つまり第1世代がSnapdragon X Eliteに実装された4nm世代のもの、第2世代がSnapdragon 8 Eliteに搭載された3nm世代のもの、第3世代が同じく3nmで製造される、Snapdragon X2 Eliteに搭載されたものである。
C1000の出荷は2028年の予定なので、時期的に言えば2nm(TSMC N2かN2P)でも不思議ではないのだが、十分な生産量を確保できるのかはちょっと疑問が残るところであり、3nmでも不思議ではない。ただ仮に3nmとしても、コアそのものは第3世代(Snapdragon X2 Eliteと共通)かもしれないが周辺は異なるだろう。そもそも第2世代以降のOryonはPrime(1コア)とPerformance(6コアのCluster)の2種類が用意され、これでbig.LITTLEを構成する形になっているが、C1000に搭載されるのはPrimeのみと思われる。また第3世代OryonからはNEONに代わってSVE/SVE2が実装されている。このあたりまではMobile向けと共通だろう。
ただD-Cacheに関しては間違いなく増強が図られているだろうし、これに伴いStore UnitのQueueの大きさも増やされていると考えられる。またL2とInterconnectの間の帯域も増強されているかもしれない。構造的には128コアを搭載するChiplet 2つがInterconnect(ここで旧Alphawave Semiの保有していたUCIe Die-to-Die IPが使われた公算は高そうだ)で相互接続される形になっているだろう。個々のChiplet内部でのコア同士の相互接続、及びMemoryとのI/Fに関してもAlphawave Semiが提供していたFabric IP/Interface IPが使われていたのかもしれない。
問われるOryonの競争力
問題はこのOryonがどの程度の競争力を持つか、である。このOryonの発表と同日、MetaがこのC1000を導入する事を発表した。ただMetaはこちらの記事でも触れているように、ArmのAGI CPUの共同開発のパートナーでもあり、また2月にはNVIDIA CPU(つまりVera CPUの事だ)を導入する事も発表している。要するにMetaはC1000とAGI CPU、それとVeraという3種類のArmアーキテクチャのCPUを導入する訳だ。
Metaは自社でMTIA AI Processorこそ開発しているが、自前のカスタムCPUの開発は行ってこなかった。その代わりに3種類のCPUを同時に運用して、自社のニーズにあったCPUはどれかを見極める事になるのだろうと思われる(もちろん、同時にx86との比較も行われることになるだろう)。C1000の投入時期は競合の中で一番遅い(Vera CPUは既に出荷開始されており、AGI CPUは2026年後半~2027年に出荷開始予定である)あたりで、果たして競合に勝てるだけの性能を確保できるかどうか。加えて言えば、Qualcommにとって初(厳密に言えば2度目だが、一度プロジェクトを完全にキャンセルしてしまったのでまぁ最初のようなものだ)のサーバ向け製品であり、OSだけでなくミドルウェアやドライバ、システム管理ソフトなどの提供も求められることになる(これはAGI CPUも同じだが)わけで、これらの完成度も評価の対象になるだろう。
Qualcommにとっては得意な戦場とはいえないマーケットでどこまで健闘できるか、しばらく動向を見守る必要がある。
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