大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
いくら何でも脇が甘い! AIサーバ密輸疑惑に見るSupermicroの「やらかし体質」(1/3 ページ)
2026年3月、台湾Super Micro Computer(SMCI/Supermicro)の創業者らが、AIサーバを中国に密輸したとして米国当局に起訴された。密輸に関してSMCIが関与しているわけではない。だが実はSMCIという会社、もう立派な大企業であるにもかかわらず、とにかく脇が甘い。特に会計関連では何度も“やらかして”いるのだ。
2026年5月はあまり大きなニュースは無かったが、細かい話が幾つかあった。今回はこの中で、台湾Super Micro Computer(SMCIまたはSupermicro)の話をしたいと思う。
SMCIは1993年創業の企業である。創業者は台湾出身のCharles Liang氏(写真1)ら5人で、本社は米国カリフォルニア州サンノゼに置かれている。その後、世界各地に拠点を開設。台湾拠点の開設は意外に遅く、2012年となっている。
AIサーバを中国に密輸
さてそんなSMCI、ことし(2026年)3月にYih-Shyan Liaw氏らがNVIDIA GPUを搭載したAI Serverを中国に密輸したとして米国当局に起訴された事を受け、同氏が取締役会を辞任した事を発表した。今回起訴されたのは、事業開発担当上級副社長兼取締役であるLiaw氏以外に台湾オフィスのSales ManagerであるRuei-Tsang Chang氏および、同社契約社員のTing-Wei Sun氏の合計3人であり、Liaw氏とChang氏は行政休職処分、Sun氏との契約は即時解除したと発表している。Bloombergの報道によれば密輸額は数十億ドル規模とされており、これは2022年に米国が対中輸出規制を開始して以来、最大規模の金額である。
これだけなら3月のニュースだった訳だが、5月になって再び今度は日本経由で中国に密輸しようとしたことが報じられた。実行者はLiaw氏らとは無関係であるが、またしてもSMCIのAI Serverだったことが台湾の基隆地方検察署によって公表されている。
どちらの事件もSMCIが主体になった訳ではない(といっても、Liaw氏はSMCIの創業者の一人であり、取締役会のメンバーであったことを考えると、ちょっと微妙ではある)とはいえ、同社の脇の甘さは責められても仕方がないように思われる。
1980~1990年代に外資系半導体/コンピュータ系企業に勤めたことがある方なら「COCOM規制」という言葉を覚えておられるかもしれない。COCOMは対共産圏輸出統制委員会の略で、1994年3月に終わった規制だが、旧ソビエト連邦を中核とする共産主義国に軍事技術や戦略物資の流出を防ぐために実施した輸出禁止・制限措置の事である。当然外資系の企業では、自社製品が共産圏に流出すると“シャレにならない罰則”(興味ある方は「東芝機械ココム違反事件」を調べて頂けると分かりやすい)が課せられるため、社内でDenied Party List(横流しをした、あるいはしそうな企業/団体をリストアップしたリスト)を構築し、取引先がこれに該当しないか確認する事が必須だった。普通に考えると、こんな事に関係しそうな事例はあんまり無さそうに思われるかもしれない。
筆者が会社員だった時代、隣の部署がまさにこのDenied Party Listに引っ掛かっているかをチェックするスクリーニング業務を行っていた。毎日のように営業マンを怒鳴りつける(「荷物の受け渡しが街角っていうのはどういうことだ」「地図にそんな住所は載ってない」etc...)課長様の声を聞きながら「ああ、結構密輸にトライする人は多いんだ」と実感した覚えがある。
毎年たっぷり予算を確保してたくさん製品を買ってくれる顧客を抱えている営業さんはともかく、ノルマに追われている営業さんからすれば、買ってくれさえするなら多少怪しくても……と考えたのかもしれないが、今回の話はまさにそういう話である。筆者の勤めていた会社はそのお隣の部署が防波堤になって不祥事が発生せずに済んでいたが、Supermicroでこの短期間に2回も発覚するというのは、やはり脇が甘いと評されても仕方ないだろう。
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