大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
IntelとSambaNova、提携の行く末――「最もあり得るシナリオ」は?(2/3 ページ)
買収から提携にシフト Intelにとってのメリットは
さてそんなSambaNovaだが、一時期Intelによる買収が囁かれていた。2025年12月にはBloombergが16億米ドルで買収間近という報道をしていたのだが、一転出資と提携に切り替わったのは、多分IntelとSambaNovaの両方にとって幸運だったのだろう。
まずIntel。もともとSambaNovaの買収はIntel CEOのLip-Bu Tan氏にとって利益相反になると以前から指摘があったからだ。というのはTan氏はSambaNovaの取締役会長を務めており、しかも自身のベンチャーキャピタルがSambaNovaに出資している事が以前から指摘されていた。
2つ目に、今回はあくまでも3億5000万米ドルの資金調達の一部をIntelが出資し、その代わりにSambaNovaとIntelの協業を獲得できた。Intelの決算は、2024年度は記録的な赤字であったが2025年度は一応黒字(2600万米ドルの純利益を計上)になったし、2025年12月末の時点における同社の現金および現金等価物の総額は142億6500万米ドルほどあるから、16億米ドルでの買収そのものは十分可能である。ただ、そうでなくてもリストラを繰り返して支出を絞っており、またIFS(Intel Foundry Services)の黒字化がいまだに達成できていない同社が、ここで16億米ドルを投じる事に抗議する株主は当然多いだろう。
3つ目に、ここでSambaNovaを買収しても、その先の展望が見えない事だ。これはNervana Systems(推定約4億8000万米ドル)、Habana Labs(約20億米ドル)と2つのAI Accelerator企業を買収し、しかも相乗効果がほとんど得られなかった事を考えれば容易に連想できる。Nervana Systemのソリューションは事実上すぐに打ち捨てられてしまったし、Habana Labsの製品も結局Habana時代に計画されたGaudi 1/2/3をTSMCで量産して、そこで計画が終わってしまった。Habana LabsのCEOだったDavid Dahan氏やVP developmentだったRan Halutz氏などの中核メンバーは2024年にIntelを離れ、新たなAIプロセッサ企業(Element Labs)を立ち上げている。要するにHabana Labsのノウハウも技術もIntelは結局生かすことができなかったわけだ。SambaNovaを買収しても、同じことが繰り返される可能性は非常に高いと思われる(過去のIntelの買収がまるでモノにならなかった事を考えれば、これは妥当な推定だと思う)。先に16億米ドルを投じる事の是非を示したが、その16億米ドルが生きた使い方をされるのなら抗議の声は出ないだろう。恐らく無駄になる、という推定が抗議につながるわけだ。
SambaNovaにも利点は多い
一方のSambaNovaは経営の自由度を確保しながら、シリーズEの資金調達に成功した事になる。おまけにIntelとの提携により、新たな販路を確保できることになった訳で、こちらも喜ばしい限りである。少なくともHabana Labsのように、築き上げた会社を売却してまた一からスタートする羽目にならずに済んだ事は間違いなくメリットだろう。
問題はその提携の話である。実はSambaNovaのソリューションはホストプロセッサとしてx86を利用している。図3はSN40Lをベースとしたラックサーバの例だが、ここでHost Server(SN40L-Hという名称がついている)は"An x86-based DataScale SN40L-H host module running either Red Hat Enterprise Linux or Ubuntu Linux."と説明されている。中身が何か?というのは公にはされていないが、まぁXeonかEPYCのどちらかの2 Socket製品であろう。これが今後は明確にXeonベースになる、という程度の話である。将来的には、それこそNVIDIAのGrace Hopper/Grace BlackwellとかVera Rubinのように、1枚の基板上にSN50とXeonが同居する可能性も否定はできないが、専用のInterconnectを使うのならばともかく、PCIeとかEthernetをベースにするのであれば、むしろInstallationの柔軟性を欠くことになりかねないので、あまり意味が無い。またSambaNovaはSN50世代で、最大256個のSN50同士をScale-up Networkで接続できると説明しており、Xeonを混載する基板でこれをやろうとするとシャーシの数が大きくなりすぎてしまいそうにも思える。だからもし同じ基板に載せるとなると、これは次世代ないし次々世代の製品という事になるだろう。
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これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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