大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
ちょっと「謎」な一面も――Marvellの買収攻勢を読み解く(2/3 ページ)
もっと不思議なCelestial AI買収
そんな訳でこのXConnの方は割と理解ができる買収なのだが、先の解説でも触れられていた2025年12月のCelestial AIの買収の方が実は謎なのである。「「AIの障壁は演算能力ではなくコネクティビティ」 Marvellが力説」の記事では「Marvellはこの買収により、短距離光分野に向けてコネクティビティのポートフォリオを拡大できるようになる」とか書いてあるのだが、Celestial AIの買収前から同社はCPO(Co-Package Optics)ソリューションを既に自社開発して提供可能になっており(図5)、単にCPOソリューションが必要というだけならCelestial AIを買収する理由が全くないからだ。
ではMarvellが開発してきたソリューションとCelestial AIのソリューションの何が一番違うか?と言えば、CPOの製造委託先である。MarvellはGlobalFoundriesと提携し、同社のFOTONIXという45nm SOIを利用したRFCMOSプロセスを使い、EIC(Electronic Integrated Circuit)とPIC(Photonic Integrated Circuit)を両方実装する技術を使ってCPOを実現している。
一方、Celestial AIのPFLinkというCPOソリューションはTSMCのCOUPEという技術を採用。EICにはTSMCの4/5nmを、PICには(恐らく)65nm SOIプロセスを利用して、EICとPICをSoICで接続するという構造になっている。技術的には一長一短というか、FOTONIXベースの方が恐らく低コストに実現できる(何しろEICとPICを別々のウェハで製造したのち、Hybrid Bondingで接続するなんていう手間は掛からないし、EIAとかホストへのI/Fを実装する程度ならRFCMOSのトランジスタで十分間に合う)。一方COUPEの方はEICを先端プロセスで実装するから、EICにいろいろ仕込みたいという場合にはFOTONIXより有利だし、恐らくEICの消費電力もFOTONIXより低く抑えられるだろう(RFCMOSのトランジスタは高速に動作するが、消費電力は低くない)。
それに、そもそもASICそのものをTSMCで製造する事を考えると、CPOだけGlobalFoundriesに委託するというのは厄介と言えば厄介である。もちろん、その辺はMarvellが間に入るから直接エンドユーザーには関係ないはずではあるのだが。ただGlobalFoundriesのFOTONIXベースのCPOソリューションを持っているにもかかわらず、あらためてCOUPEベースのCPOソリューションを手に入れたという事は、つまりFOTONIXでは実装できなかった何かがあるのか、もしくは顧客がTSMCでの一気貫通製造を望んだのか、どちらかという事になる。どちらにしても、GlobalFoundriesにはあまりうれしくない話のように思える訳だが、そういう事情がちょっと垣間見られる買収劇であった。
あともう一つ、XConn買収で見えたMarvellの狙い、AIインターコネクトに本格参戦で「今回の買収により、MarvellのUALinkスケールアップスイッチの開発チームは、PCIeスイッチングに関するXConnの深い専門知識を活用できるようになる。」なんていう記述があって、間違ってはいないものの「?」という率直な感想を抱いてしまった。UALinkは100G/200G Ethernetをベースとしつつ、Scale-up Networkに向けて最適化したネットワークである。なので物理層こそ100G/200G Ethernetと似ているが、その上にはPCI Expressに似た独自のNetwork Stackが載っている。あくまでも「似た」であって、同じではない。というか、考え方が似ているFLIT(Flow Control Unit)の考え方を取り入れている程度であって、ただそれでもプロトコルの実装はPCI Express/CXLというよりはEthernetに近い。本当にXConnの持つ専門知識は生かせるのだろうか?
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