大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
ちょっと「謎」な一面も――Marvellの買収攻勢を読み解く(1/3 ページ)
Marvell Technologyが最近、相次いで2社を買収した。今回は同社のXConn Technologies買収および、実はそれよりももっと「謎」なCelestial AI買収を解説したい。さらに、あまり詳細が見えてこないSK hynixの米国子会社「AI Co.」が何を売るのかについても考察する。
XConn買収を発表
1月も明けて早々、Marvell Technology(以下、Marvell)がXConn Technologiesの買収を発表した。「XConn買収で見えたMarvellの狙い、AIインターコネクトに本格参戦」に解説があるが、同社はPCIeおよびCXL Switchを手掛けており、これでMarvellはPCIe(PCI Express)/CXL(Compute Express Link) Switchマーケットへの足掛かりをつかんだ格好だ。
現状PCIe/CXL Switchの大手と言えばBroadcomである。もともとはPLX Technologyが得意としていた分野であり、2014年にBroadcomが同社を買収してそのマーケットを手に入れた格好だ。実を言えばPCIe Switchに関して言えば、他にもASMediaとかMicrochip Technology、ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)などもそれなりのシェアを持っている。ASMediaやMicrochipは自前で開発したものだが、ルネサスは旧IDTが持っていた製品ラインアップを拡充している。ただこれらの製品はいずれも16~32ポート程度の、比較的小規模なものである。PCや組み込み機器上での複数デバイスの接続とか、最近だと自動車内部の機器同士の接続に使うといった用途が新たに生まれているが、エンタープライズ向けとは言いにくい。
エンタープライズ向けPCIe Switch市場はまだ小さい
実のところを言えば、エンタープライズ向けのPCIe Switchというマーケットそのものがまだ十分に広がっているとは言いにくい状況だからだ。仕様的に言えば2008年5月にPCI-SIGがMR-IOV 1.0の仕様をリリースしており、その前年の2007年2月にはPCIe Cabling 1.0をやはりリリースしているから、もうこの時点で複数サーバとPCIe Switchを別シャーシで構成し、間をPCIeケーブルで接続するという形態が可能だったのだが、それをしても実現できることはPCIeデバイスの共有くらいしかなく、実際にそうした使われ方はほとんどされなかった。その昔、One Stop Systemsというメーカーが、PCI Expressケーブルを使って最大16台のサーバで共有できるShared Memoryという製品をHPC向けなどにリリースしていたことがある(図1)。あるマシンでメモリの内容を更新すると、PCIe Switch経由で他のマシンにもその内容が反映されるというもので、HPC向けの最初のPCIe Switchの採用例ではないかと思うのだが、あまり売れなかったようで、既に同社のラインアップには残っていない。
では現状どんな風に使われているのか、という一例がこちら(図2)。StorageがPCIe接続に切り替わった関係で、大量のStorageの接続には大量のPCIeが必要になり、そこに使われていた。ところがCXLでは、複数のHostと複数のResource(Device/Storage/Memory)をM:Nで接続するという構図が想定されている(図3)。こうなるともう図2のようなローカルホストにつながるSwitchではなく、限りなくUALinkとかNVLinkに近い、Scale-up Networkに近い構図になるし、Switchの側にもCXL Protocolをハンドリングする必要が出てくる。
これに最初に対応したのがBroadcomであり、2023年のOCP Global Summitでこんなロードマップを公開している(図4)。これに続いてソリューションを発表したのがAstera Labsで、既にScorpioという製品を発表済みである。
一方Marvellは?というと、Structera A/Xシリーズを2024年に発表しているが、これはCXL対応のMemory Controllerである。他にもCXL対応ReTimerなどは発表しているが、Switchに関しては後手に回っていた。EthernetのSwitchなどに関しては既に製品を提供しているが、PCIe/CXL Switchに関しては、やはりPLXとかIDTのようなノウハウを持った企業を手に入れていなかったのが製品ラインアップに響いた格好だ。
こうした観点で言えば、PCIe/CXL Switchを自社開発したXConn Technologiesを買収したのも納得できる。同社は2023年にはPCIe 5.0/CXL 2.0対応のApollo(Apollo 1)をリリースしており、2025年3月にはPCIe 6.2/CXL 3.1対応のApollo 2をアナウンスしている(参考)。XConnの買収金額は5億4000万米ドルだが、今後のCXLのマーケットの拡大を考えればこの金額で最先端のSwitch技術と製品、エンジニアが手に入るのは割安と考えて良いと思う。
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これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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