大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
DDR5の異常な価格急騰はなぜ起きた? 推測できるシナリオは(3/3 ページ)
「GPUの供給上乗せ」ではないか
ぱっと思い付くシナリオはこうだ。例えばA~Eの5社のパートナー企業があり、それぞれGPUメーカーから「来年のQ1までにそれぞれ毎月1万枚ずつGPUを供給できる」という話を事前にもらって、それに応じて事業計画を立ててコンポーネントの調達を行っていた。ところがGPUメーカーから「生産量を全体で毎月1万枚上載せできる」という通達が来たとする。するとA~E社はどう考えるか? その上載せ分を全部自社で獲得できるかどうかはまだ分からないが、獲得した後で「やっぱりコンポーネント足りませんでした」で出荷できなかったら機会損失も甚だしい。1万枚が自社で全部獲得できるか、5社で割って2000枚になるのかはまだ分からないが、当然自社で獲得する事をもくろんでコンポーネントの調達に走るだろう。1万枚のGPUに比べれば、コンポーネントのコストなどはるかに安いからだ。それをケチって機会損失を喰らう位なら、追加調達できなかったら在庫になるリスクを負ってでも追加発注したい、と思うのが人情である。かくしてA~Eの5社から発注されるコンポーネントは、1万枚分のGPUサーバに必要な分量では無く2万枚分になる。つまりざっくり倍だ。結果、Contractの形で需要が急増する、という事になる。もう完全にコロナの時のマスクと同じく、不足する事を恐れてユーザー(この場合パートナー企業)が在庫積み上げに走った結果、サプライチェーンが崩壊するという図式である。
図1を見ても分かるが、今回の価格高騰はかなり異常である。計画的に需要が積み上がったというよりもパニック的に需要が急騰し、メモリメーカーの対応が後手に回っている感が否めない。Crucialの事業廃止などその最たるもので、要するにCrucialの事業を継続するために必要な生産量を確保できない程に、突然にContractが大量に積みあがってしまったという事だろう。あと公式には否定されているが、Samsungが自社のスマートフォン部門からのLPDDRの契約を断った(外部に販売した方が高値で売れるので、結果としてSamsung全体の売上向上につながる、というロジックらしい)とか、NVIDIAがコンシューマー向けGPUの提供にあたり、従来はGPU+GDDRメモリの組み合わせで提供していたのを、GPUのみの提供に切り替えた(GDDRもやはり価格高騰とか入手性悪化が伝えられており、その入手性の悪化や価格上昇をパートナーに押し付けた格好である)といったニュースも伝わってきているあたりが、このパニックぶりを象徴しているように思われる。
GPUの供給量を増やせるのか
ただ素朴な疑問として、ではNVIDIAやAMDは果たしてそうした需要増に対応できるだけのGPUを本当に供給できるのか?という話で、これは最終的にTSMCのN4/N3プロセスが大幅に生産量を増やさない限り解決しない問題なのだが、今聞いている限りそういう話はない。もちろん、アリゾナ工場の稼働がスタートしているから以前よりは生産量が増えているのは事実だが、実を言えばアリゾナでチップの製造はできても「CoWoS(Chip on Wafer on Substrate)」パッケージは台湾でしか対応していない関係で、アリゾナで製造したチップを一度台湾に送ってパッケージングする必要があり、ここの生産量が増えない事には最終的なGPUの供給量は増えない事になる。
先の例で言えば、月産5万枚のGPUを6万枚に増やす程度の事は可能だろうが、それが10万枚になる可能性は現時点でも低いし、近い将来にこれが解決される可能性も低い。ではこの先どうなるか? というと、マスクの場合と同じだ。各パートナー企業には積み増したContractの分、メモリの在庫が山積みになる。ただ会計年度を跨いで在庫を積み上げできるか? というと結構厳しいのではなかろうか? なんとなく各パートナーは期末頃にそうした積み上がった在庫を何らかの形で放出、それがマーケットに流れて価格が下落、というシナリオが浮かんでくる。ただ年末決算の会社の場合、現状はまだそれほど在庫量は多くない(というかContractだから契約は済ませていても、まだDDR5メモリそのものは少量しか届いていないだろう)から2025年度の決算は通るだろう。ただ2026年度の決算まで耐えられるか? というと疑問であり、その前後に在庫を減らす工夫を始めるだろう。逆に言えば、そこまで価格は高騰しっぱなしであっても不思議ではない。
今回はContractベースということで、個人ベースの転売屋が介在する余地がないのが、せめてもの救いだろうか?
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