大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
AI半導体市場の「アキレス腱」 成長を脅かす電力不足(2/3 ページ)
AI半導体市場の成長を阻む電力問題
なのだが、これは本当に実現可能なのだろうか?というのが筆者の率直な感想。実はどこかでバブルが弾けるのではないかと考えている。要因は複数あるが、最大の要因と思われるのは電力供給である。2025年3月の「GTC(GPU Technology Conference)」の折、2027年後半に導入されるRubin UltraベースのAIサーバ「NVL576」はラック当たり600KWの消費電力になることが明らかにされている(図2)。このラックを1000本並べると、それだけで600MWになる計算だ。実際にはラック間のネットワーク接続もあればストレージやその他のサブシステム、照明、そしてなにより冷却にも電力が必要になる。
以前は「寒冷な地にデータセンターを置くことで自然冷却だけで賄う事で省エネ」とかのんびりした話もあったが、昨今の発熱量はクーリングタワーの内部での強制冷却が必須になっており、そうしたものにも電力が必要である。恐らくRubin Ultra世代の大規模データセンターの総消費電力は1GWに達するだろう。これは誇張でもなんでもないというか、そもそも冒頭に示したOpenAIとAMDの契約が、何万枚とか何億米ドルとかではなく「6GW分」とかいう前代未聞の表現になっているあたり、そういう時代になりつつあるという事だ。多分この6GWというのは、AMDがOpenAIに納入するInstinct(納入時期を考えると最初からInstinct MI500シリーズは間に合わないので、まずはMI450シリーズになるかと思われる)の消費電力分であり、全体で言えば10GW位になりそうな気がする(データセンター数で言えば10位だろうか?)。11月になってからのニュースで恐縮だが、11月6日に米New Era Energy & Digital、旧社名New Era Helium)はニューメキシコ州リー郡の約3500エーカー(約1416ha)の土地オプション購入契約を締結した。同社はここに7GWのAIデータセンターキャンパスを開設する予定だ。2028年に初期電力供給が開始される予定で、2GWの天然ガス発電と5GWの原子力発電所のコンビネーションとなる。まずは(相対的にリードタイムが短く建設できる)天然ガスでスタート、後に原子力発電を立ち上げる格好だろう。データセンターは初期容量250MWだが、最終的に1GWまで拡張可能とされている。もうそういう時代なのである。
この手の話をするとよく引き合いに出されるのがニューヨーク市の消費電力で、2016年には1年間の平均で6GW、ピーク時11GWだった。ちなみに最新のデータによれば、現在は年間平均16GW、ピーク時(ことしの夏場)は31GWを超えたらしい。日本で例えると、東京電力の東京エリア使用率が需要ピーク時の供給能力38GW、使用率ピーク時で26.9GWといったところ(図3)。ここに1GWの上乗せが入るのはかなりのインパクトである事が分かる。というか、例えば仙台市の2020年~2024年消費電力はおおむね1.3~1.4GW程度であり*1)、1GWのデータセンター2つで仙台市を超えることになる。今後のデータセンターが、どれだけ電力供給に負荷を掛けるのかお分かりいただけるだろうか?
*1)仙台市統計書(令和6年版)の「電気・ガス及び上下水道」より試算。
米ランド研究所が2025年1月に出した予測によれば、全世界で2027年までに68GW、2030年までに327GWに達する可能性があるとされていたが、多分現在はもっと加速している。The Kobeissi Letterの推定によれば、米国だけで2025年~2028年の間に69GW分の電力がデータセンター向けに必要であるが、このうち10GW分は現在建設予定の新規発電設備で賄う事ができ、また既存の発電設備の拡充でさらに15GW分は上乗せ可能だが、それでも44GW分が足りないとされている。
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これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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