大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
Intelを待つ「いばらの道」 困難を極める根本的な改革(2/3 ページ)
「最悪の期間」は?
では最悪の期間は?というと、筆者はBrian M. Krzanich氏がCEOになった2013年5月から、Bob Swan氏が退任する2021年1月まで、と定義している。Krzanich氏の話は2018年8月の記事「クルザニッチCEOがインテルを去った「本当」の理由」(TechFactory)でも触れているが、彼は本来14nm世代や10nmにつぎ込むべきであった資金をM&Aに費やし、また既存の製品ラインを蔑ろにして新しい製品ラインの確立に奔走した。もちろん、そこにはそれなりの理由はあったのだが、結果論から言えばKrzanich氏の時代に成立したM&Aで得られたものはほとんど残っていない(辛うじてHabana Labsの製品がまだラインアップに残り、またMobidiusのアーキテクチャが「Meteor Lake」以降のNPU(Neural Processing Unit)として利用されている程度で、Habana Labsベースの製品の今後は不明確である)。その一方で優れた製品エンジニアやプロセスエンジニアがIntelをどんどん去っていた結果、Intelの14nmは本来2014年から利用可能だったはずが、まともに動作するようになった「Skylake」が投入されたのは2015年。そして2016年に利用可能になるはずだった10nmは、10nm++として実用に耐える状況まで改良されたのちに2021年に「Alder Lake」で採用された。実に5年遅れである。結果論ではあるのだが、CEOというのは結果責任を問われる以上、直接的にIntelが没落する原因を作ったのはKrzanich氏と筆者は考える。
そして次のSwan氏は、もともと暫定CEOとして就任したという経緯はあるものの、何一つKrzanich氏時代の問題を解決しなかったという意味で、やはり責任はあると思う。変な方向の投資とかを行わずに手元資金をため込む方向に走ったのは、CFOらしい方策ともいえるが、新しい戦略を立てられなかったという意味でもある。結果、2018年6月の暫定CEO就任から2021年1月の辞任までの間、Intelは明確な戦略もなく空走していた格好だ。
4年もたたず水泡に帰したGelsinger氏の努力
あらぬ方向に進んでいた8年弱のIntelの進路を正しい方向に戻そうというGelsinger氏の努力は、しかし4年もたたずに水泡に帰すことになってしまった。Intelの2024年第3四半期決算は166億3900万米ドルもの赤字という壮大な数字だが、この大半を占めるのが159億米ドルもの減損処理である。これは何か?というと、Intel 7を含む10nm世代を減価償却する事にしたためだ。市場競争力が低いこのプロセスを、黒字化は到底見込めない。そもそも5年遅れというのが致命的であり、この間に競合となるTSMCのN7/N6は既に減価償却を終え、現在はその分安い価格で提供されている。もうIntel自身もIntel 7で製造する製品がどんどん減っており、仮にこの先Intel FoundryでIntel 7を提供しても顧客が付く可能性は低い。であればこのあたりで先に減価償却を行っておくべき、という判断は極めて健全であるが、結果として大赤字の決算になってしまったのが恐らく取締役会では気に入らなかったのだろうと思われる。やっている事は要するに最悪の8年の時代の膿出しにすぎないのだが、そうは判断されなかったようだ。
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