大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
Intelを待つ「いばらの道」 困難を極める根本的な改革(1/3 ページ)
2024年12月1日付(米国時間)でIntelを去った元CEOのPat Gelsinger氏。同氏が去らざるを得なかった経緯と、これからのIntelについて考察してみたい。
インパクトが大きすぎたGelsinger氏の退任
結局2024年12月の話題はIntelが全てかっさらっていった感がある。まぁPat Gelsinger氏の解任は、それほどにインパクトがあったということだ。既に「苦境のIntel、一体誰がPat Gelsingerの代わりを務められるのか」とか「『Intelは私の人生そのものだった』Pat Gelsinger氏がCEO退任」など、多数の記事が上がっているからお読みになった読者も多いと思う。
ちなみに今回の辞任で一番批判にさらされたのは取締役会である。解任から4日後の12月5日、Intelの取締役会は元ASMLのプレジデント兼CEOだったEric Meurice氏、それとMicrochip TechnologyのCEOであるSteve Sanghi氏を取締役会に加えた事を発表したが、これは新CEOの候補者探しのための一環といった雰囲気が強い。ただこの2氏はGelsinger氏解任後に追加されたメンバーであり、それ以前の11人のメンバーに対する風当たりが非常に強い。そもそもこの11人の取締役のうち、半導体業界でのビジネスの経験が豊富なのは事実上1人、元Intelで最高財務責任者(CFO)を務めていたStacy Smith氏だけであり、後はCEOなりマネジメントの経験とかコンピュータ業界の経験はある、もしくは半導体そのものの経験はあるものの、半導体業界でのビジネスの経験には乏しいメンバーがほとんどである。しかもそのうちの少なからぬメンバーが、2013年あたりから始まるIntel最悪の期間にずっと取締役であり続けた。
この「Intel最悪の期間」は人によって定義が異なっており、故Paul Otellini氏がCEOを務めた2005年~2013年をスタート期間としている人もいた。理由はIntelがMobile SoC(System on Chip)のマーケットに参入できなかった事である。そもそもは故Steve Jobs氏がOtellini氏に「iPhone」用SoCの製造を依頼したのだが、Otellini氏はこれを断った。この話はThe Atranticに掲載されたOtellini氏退職時のインタビューの中で、Otellini氏自身が、
"The thing you have to remember is that this was before the iPhone was introduced and no one knew what the iPhone would do... At the end of the day, there was a chip that they were interested in that they wanted to pay a certain price for and not a nickel more and that price was below our forecasted cost. I couldn't see it. It wasn't one of these things you can make up on volume. And in hindsight, the forecasted cost was wrong and the volume was 100x what anyone thought."(忘れてはならないのは、iPhoneが発表される前で、誰もiPhoneが何をするのか知らなかったということだ……結局のところ、彼らが興味を示したのは、ある一定価格以上を支払うつもりがないチップであり、その価格はわれわれの予測コストを下回っていた。私はそれを見抜けなかった。それは、数量をこなせば利益が出るような種類の製品ではないと思っていた。今にして思えば予測コストは間違っており、数量は誰もが考えていたよりも100倍も多かったのだ)
と述べているあたりが発端であり、結果としてIntelは後になって「Silvermont」ベースのモバイル向けSoCの参入に向けていろいろ苦闘したものの、最終的には完全に撤退を余儀なくされている。もしOtellini氏がここでiPhoneのマーケットに参入していれば、IntelはPC向けだけでなくスマートフォン向けマーケットでも支配的な地位を築けたはずだった、というわけだ。ただまぁこれは“たられば”の話であって、仮にそこでIntelがiPhone用SoCの開発を引き受けたとして、そのIntel製SoCを搭載したiPhoneが市場を変えられたかどうかは怪しいし、仮に変えられたとして今度はApple以外のセットメーカーからの大量の発注をIntelが独り占めできたかも怪しい。そう考えると、確かにOtellini氏の失敗ではあったとは思うのだが、ただスマートフォン向けSoCがArmベースで決定的になった後も別に急にIntelの業績が急落した訳ではない事を考慮すると、最悪の期間に筆者は含めたくない。
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これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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