大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
弱小メーカーの域を出られなかったFlex Logix ADIが密やかに買収(2/3 ページ)
順調に製品ラインを拡大
ただ、基本的な構造が既に完成(2014年のISSCCで発表しているので、論文自体は2013年中に完成しており、という事は基本的な研究は2012年末辺りまでに完了していないとおかしい)している以上、実装はそう難しくない。2014年3月に会社法人を立ち上げ、4月にはLux CapitalからシリーズAの投資を受け、2014年11月にはTSMCの28HPMプロセスを使った「EFLX-2.5K(2.5K LUT)」コアが完成。翌2015年2月には10K LUTのチップも完成して検証がスタートしている。2015年6月にはDSP VersionのEFLX FPGAコアがテープアウトし、同年9月にはBlock RAMのアーキテクチャのアナウンスが行われる、という具合に少しずつ機能を強化しながら製品ラインを拡張していった。
対応するプロセスもTSMC 28HPM以外にTSMC 40LP/40ULPが追加され、2016年にはさらにTSMC 16FF+/16FFCも加わる事がアナウンスされた(サービス開始は2017年)。その2016年にはFast-Track License(図2)などもリリースされており、より広範な顧客に対応するための手をうったという格好だ。2016年末にはTSMC 16FF+を使い、1GHz動作に対応したELEX-100も追加されている。
2017年にはシリーズBで500万米ドルの増資を受け、またTSMC 16FF+/16FFC/16FFC+/12FFCに対応した第2世代の「FLEX4K」もリリースする。同じ2017年、SiFiveが28nmのEFLXに向けたRISC-V IPの提供を行っている。そして2018年には、TSMC16FFCを利用したEFLX200Kを搭載したシリコンを使った開発用のボードも提供している。まぁこんな調子でeFPGAの対応できるプロセスや製品ラインアップを拡充していった。
AI用にも注力
これと並行して同社が力を入れたのがAI向けである。もともと2017年にはハーバード大学が同社のeFPGAをNeural Networkチップ向けに採用を決めるなどしており、2018年6月には「EFLX4X AI eFPGA」コアを発表する。当時はまだディープラーニングが緒に就いたばかりの時期であり、最適なアーキテクチャに関しても、半ば暗中模索状態という感じであった。結果、各社からこのディープラーニングに向いたアーキテクチャを実装したさまざまなプロセッサやプロセッサIPが出現し始めた時期であり、Flex Logixもその1社である。同社の「NMAX」と呼ばれるプロセッサコアは、畳み込み演算を行うNMAX Clusterに、その他の処理(例えばActivationとか)を担うeFPGA、それとSRAMを組み合わせた構成(図3)であり、例えばResNet-50を実行した場合の性能はこんな具合(図4)とされた。エッジというかエンドポイント向けの推論用という感じで、さすがに性能を上げようとすると外部のメモリが必要ではあるが、最小構成の512 MACs(NMAX Tile×1)でも93fps(フレーム/秒)の処理性能でありながら、平均80mW/最大210mWという低い消費電力であり、エリアサイズも1.4mm2にすぎない。
2019年にはここから一歩進めて、NMAX Tileをさらに改良した「nnMAX Tile」を搭載するAIプロセッサとして「InferX X1」をアナウンスする(図5)。ただ多少量産は遅れ、出荷は2021年からとなった。
構成としては
- InferX X1M1(InferX X1をM.2ボードに1個実装):TDP 19W
- InferX X1P1(InferX X1をPCIeボードに1つ実装):TDP 19W
- InferX X1P4(InferX X1をPCIeボードに4つ実装):TDP 75W未満
の3種類が用意(他にInferX X1そのものの提供も可能)されていて、800MHz駆動のInferX X1P1が800米ドルで、競合となるNVIDIAの「Tesla T4」(2000米ドル)よりかなりコストパフォーマンスが良いことをアピールしていた。サンプル出荷は2020年末からスタート、量産は2021年第2四半期(InferX X1P1)ないし第4四半期(InferX X1M1/X1P4)となっており、当初のロードマップから1年ほど遅れた格好である。
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大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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