大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
弱小メーカーの域を出られなかったFlex Logix ADIが密やかに買収(1/3 ページ)
2024年11月、Analog Devices(ADI)がFlex Logixを「こっそり」と買収した。両社から何もアナウンスがないというのも、なかなかに珍しい。今回は、Flex Logixがどのような会社で、どのような製品戦略をとってきたのかを、じっくり解説する。
ことし(2024年)は毎月いろいろな出来事があったが、逆に11月は珍しく穏やかというかあまり大きな出来事がなかった(12月はIntelのPat Gelsinger氏の解任から始まった事を考えると、余計に11月の平穏感が際立つ)月ではあるのだが、そんな中で相対的に大きな出来事だったのがAnalog Devices(ADI)によるFlex Logixの買収であろう。アナログ主体の半導体会社によるデジタル半導体会社の買収、というのがまず珍しいし、買収した側、された側ともにその事実を明示的に示していないのも珍しい。
「密やかに」行われた買収
ニュースが報じされたのは11月8日であるが、11月4日にFlex Logixのページを確認した時にはまだ買収の話はどこにもなかったから、多分買収が行われたのはこの後である。ちなみに11月26日にADIは2024年度の決算発表を行っているが、2024年度の決算は2024年11月2日締めということでForm 10-Kも、Q4決算に関するConference Callも、この買収には一切言及していない。買収された側のFlex Logixもトップページに"Flex Logix has sold its technology assets to a large public company that has also hired our technical team."とだけ示しており、なぜか「誰に買収されたのか」を隠しているあたりも、この買収の不思議さを強調しているとは言える。
異色の買収ではあるのだが、PitchBookによればFlex Logixは社員数52、資金調達の総額は8900万米ドル程度。売上高も年間1000万米ドル前後という規模の非上場企業であり、なので買収金額はそれほど大きくない(1億米ドル程度?)と想定される。2024年は前年に比べれて不調ではあったが、それでも94.3億米ドルの売上高と16.3億米ドルの純利益(それぞれ2023年は123.1億米ドルと33.1億米ドル)を確保しているADIにとって買収は容易だったとは思われる。
まぁADIの思惑については、恐らく2025年2月に公開されるであろう、2025年第1四半期の決算報告の中で何かしら言及があると思われるのでそこまで待つとして、そもそもFlex Logixはどんな会社だったのか? をちょっとご紹介したい。
Flex Logixの成り立ち
同社の設立は2014年である。創業者はCEO(最高経営責任者)を務めていたGeoffrey Tate氏と、CTO(最高技術責任者)を務めていたCheng C. Wang博士の2人だ。Tate氏は1979年から1990年までAMDに在籍していて、最後はMicroprocessor & Logicのシニアバイスプレジデントを務めていた。AMD退職後、1990年から2005年までRambusのCEO、2010年から2012年まではNanosolarのCEOをそれぞれ務め、2014年にFlex Logixの立ち上げに加わった形だ。
ただFlex LogixのコアであるeFPGA IPのルーツは、むしろWang博士の方にあった。Wang博士は2013年にUCLA(米カリフォルニア大学ロサンゼルス校)で博士号を取得しているが、博士らが2014年のISSCCに出した"A Multi-Granularity FPGA with Hierarchical Interconnects for Efficient and Flexible Mobile Computing"という論文(A Multi-Granularity FPGA with Hierarchical Interconnects for Efficient and Flexible Mobile Computing)はLewis Winner Awardを獲得している(図1)。論文での主張は、FPGAの非効率性はLogicよりもむしろInterconnectに起因する部分が大半を占めるとし、これを改良する方法として階層構造のInterconnectと粒度の高いPower GatingおよびKernelの再構築を組み合わせた技法を提案している。この論文で示されたFPGA構造を提供しよう、というのがFlex Logixの最初の目標である。
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これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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