大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
Arm対Qualcomm 泥沼化した特許係争はどう着地するのか(3/3 ページ)
AMDは順調であるが……
Intelと同じ10月31日に第3四半期決算を発表したAMD。第3四半期の売上高は68億1900万米ドルで、Intelの132億8400万ドルのちょうど半分ではあるのだが、粗利率は50.1%とはるかに健全であり、最終利益も7億7100万ドルで大赤字となったIntelとは比べるまでもない。もっと象徴的なのは、同社のData Center部門の売上高は35億4900万米ドルで、IntelのDCAI(Data Center and AI)部門の33億4900万米ドルをついに抜いたことだ。
実を言うとこれちょっとトリックがあり、AMDのData Center部門にはPensando由来のネットワーク製品が含まれている。一方IntelはNEX(Network and Edge)部門にこれを切り出しており、Intelの方は合算すると48億6000万米ドルとなって、まだAMDには大差をつけている。ただ部門別の営業利益で見ると、AMDのData Center部門は10億4100万米ドルなのに対し、IntelはDCAIとNEXを合算しても6億1500万米ドルでしかない。1年前の数字で言えば、AMDが売上高15億9800万米ドルで営業利益3億600万米ドルであり、対するIntelはDCAIとNEXの合算で45億2600万米ドルの売上高と営業利益4億9100万米ドルだったから、Intelが足踏みしているところをAMDが追い抜いてゆくという印象はそう間違ってはいないと思う。
IntelはClientではまだ強みがあり、DesktopとNotebook合わせて73億3000万米ドルを売り上げており、営業利益も27億2200万米ドルとそう悪くない数字で、これがあるからまだ屋台骨が揺らいでないというあたり。AMDは売り上げが伸びてはいるものの、合計で18億8100万米ドルでしかないし、営業利益は2億7600万ドルと振るわない辺りが、まだIntelに追い付けない最大の要因ではある。とはいえ、Xilinx由来のEmbeddedは9億2700万米ドルの売上高であり、営業利益はClientより多い3億7200万米ドルをたたき出している。Intelから分社化されたAlteraは売上高4億1200万米ドル、営業利益900万米ドルでしかなく、好対照をなしていると言える。そんな訳で順調に見えるAMDだが、唯一懸念事項があるのがGaming部門。要するにATI由来の、コンシューマー向けGPU部門である。売上高4億6200万米ドル、営業利益は1200万米ドルと振るわない。
ちょっと過去にさかのぼって見てみたのがグラフ1と2である。何で2021年第2四半期からか?というと、2023年に部門の変更があったからである。2021年まではClientとGamingが同一部門扱いされており、この関係でさかのぼって数字が追えたのは2021年第2四半期が限界だったという話である。まぁ直近4年分と思ってほしい。
まず売上高(グラフ1)を見ると、基本Data Centerが一貫して成長している。一方Clientは2022年第2四半期あたりがピークで2023年に谷が来ているのは、まずCOVID-19に伴う自宅利用のためのPC需要が2022年前半まで続いたが、その反動に加えてCOVID-19の自粛が2023年あたりから解除になり始めた事と無縁ではない。ただ2023年第1四半期に底を打った後は順調に回復しつつあるのが分かる。そのClientの落ち込みを補ったのがGaming部門だったのだが、こちらはClientとは逆に2023年第1四半期をピークに売れ行きが右肩下がりで、しかもそれがかなり急である。Clientはおおむね4年前の売上と同等以上まで回復したのに、Gamingは4年前の3分の1近くまで落ち込んでいるのが分かる。営業利益(グラフ2)の方はもっと極端で、Clientの2022~2023年のように赤字転落してないだけマシと言えばマシだが、売上高と利益の両方で、既にAMDの収益の柱になりえないほどビジネスが縮小してしまっているのが分かる。
実はこのGaming部門、コンシューマー向けGPUに加えてSemi Custom製品が含まれる。要するに「PlayStation 5(PS5)」とか「Xbox」向けであり、PS5の生産量削減やXboxの生産終了も売り上げ低下のかなり大きな要因ではあるので、単にAMDの努力だけでどうにかできる訳でも無いのだが、例えばNVIDIAの2025年第2四半期(2024年3月~6月)の決算を見ると売上高35億9400万米ドル、営業利益13億6900万米ドルとなっている。ここにはデータセンター向けの「H100」「H200」とかは含まれず、「GeForce RTX」とか「GeForce GTX」などのコンシューマー向けGPUがメインである。つまりコンシューマー向けGPUのマーケットそのものは間違いなく存在しており、ただしそれをAMDが獲得できない事が問題な訳だ。このままだと収益の柱が1本消えかねない事態なだけに、これに対してAMDがどういう手を打てるのか? が気になるところである。
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これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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