大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
Intelに追い打ちをかける「Raptor Lake」クラッシュ問題 根本原因はいまだ不明(3/4 ページ)
思い出される1994年の「Pentium」のバグ
この問題に絡んで思い出されるのは、1994年に起きた「Pentium」のFDIV Bugである。Pentiumプロセッサの浮動小数点の除算器(Floating Divider)用のテーブルにバグがあり、計算によっては間違った答えを出すという問題である。当初は軽微なバグであるとして問題の収束を図ろうとしたIntelだったが(何しろ当時はまだインターネットが一般ユーザーの手に届く所には無かったから、今みたいにSNS経由で炎上したりはしなかった)、IBMなどの有力なリセラーが相次いでIntelに交換を迫った事もあって、最終的にIntelはリコールを実施。これに要した費用は1995年当時で4億7500万ドルほどだったが、その費用と引き換えにIntelは何とか信用回復を勝ち得ることができた。もう30年も前の話だから、今のIntelでもこれを覚えている人は少ないのかもしれないが、Pat Gelsingerは間違いなくこの時の事を覚えている(1994年はVP, Product Group & GM, Personal Conference Division、1995年はVP, Internet&Communication Group & GM, ICG Product Developmentというポジションにいた)はずで、このあたりの経験がちゃんと生かされているのかな、と思う。
これは筆者の私見だが、もしまだ4月の姿勢を貫いていたら、さらなる大炎上は間違いなかっただろう。既に今回の問題に関して米国では集団訴訟が提起されている事をCNETなどが報じている。なのでいずれにせよRMAは避けられなかったと思うし、であれば早めにこのRMAを行う姿勢を示したのは賢明な判断だと考える。
ちなみにこれに加えてIntelは、第13/14世代のCore i5/i7/i9プロセッサのK SKUに関して、2年間の保証期間延長も打ち出した。実際のところ、(理由はともかくとして)電圧あるいは発熱過多で回路が損傷した場合は交換しか手は無いわけだが、「損傷しつつもまだ稼働している」という状況では、今は動いているが明日には動かなくなるかもしれない。そしてこれは回路素子レベルでの損傷だから、そうした状況が本当に発生しているかどうかというのはダイを削ってSEMなりTEMなりで観察するしか知る余地がない。要するに「現状どの程度壊れているのか」を判断する術がない(間接的にこれを確認できる方法が無いかIntelは検討中と伝えられているが、原理的に難しい様に思う)。そうした意味では、保証期間を2年延長するという今回の対応は理にかなっていると思う。
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