大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
Intelの命運を託されたファウンドリー事業 24年Q1決算から読み解く(3/3 ページ)
好調なAMD クライアントPC向けでは頭打ち感も
このIntelと逆の立場にいるのがAMDである。表3がやはり2023年第1四半期からの売上高、表4が営業利益である。ご覧の通り営業利益は毎期当たり10億ドル以上を維持しており、売上高はともかく営業利益の総額はIntelとさして差が無いというか、第1四半期で言えばIntelを上回っている。
そのAMD、2017年辺りからの復活の立役者だったClient PC向けに関してはちょっと頭打ち感が漂う。図6はMercury Researchの数字をもとにAMDが発表したCPUのセグメント別シェア(出荷数および金額)であるが、ServerはUnit Shareこそ23.6%なもののRevenue Shareで33%を達成しており、非常に好調である一方、Clientは1年前よりはマシとはいえ、Unit Shareでは20%程度、Revenue Shadeでは15%程度とそれほど高くない。実際営業利益で言えば、ClientはData Centerの15%程度でしかない。見事にIntelと逆転している訳で、このClientのテコ入れが現在のAMDの課題と言う事になる。Embeddedがやや落ち込んでいるのは、一つには5G向けの展開が一段落して、ハイエンドFPGA製品の出荷が多少減ったからと言う事になるが、同社の場合はミドルレンジ製品が引き続き好調に出荷されており、今後やってくるであろうAdvanced 5G向けの展開に向けて仕込みをしている最中といったところだ。
もう一つの懸念事項はGamingで、ここにはConsumer向けのRadeonシリーズGPU以外にPS5/Xboxなどゲーム機向けカスタムSoCの出荷が含まれているが、第2四半期ではこのカスタムSoCの売上高が落ちる事がConference Callの際に言及されている。まぁそろそろSIE/Microsoftともに大量出荷が一段落しつつあることを考えれば、これは避けられない事態ではある。
決算内容としてはそんな訳でそう悪いものではないと思うのだが、冒頭に書いたように株価が下落したのは、AI向けのビジネスが思ったほど伸びなかったからだ。Data Centerの中には生成AI向けのInstinct MI300Xのビジネスが含まれているが、今期はData Center向けがそこまで伸びなかった事が投資家に失望された模様だ。ただ引き続きNVIDIAのハイエンド製品は供給不足とされており(現在H100を新規発注すると、納期が1年を超えるそうだ)、またB100/B200はまだ出荷に至っていない(なにせDGX H200の初号機が4月25日に初納入されたほどだ)事を考えると、まだまだビジネスチャンスは十分に残っている。
またData Center全般で言えば、既にConference Callの中でZen 5コアを使う次期EPYC製品である「Turin」の特定顧客向けサンプル出荷が始まっている事が明らかにされている。TurinはIntelと異なりプラットフォームの変更もないことから、導入までの障壁はIntelより低い事が見込まれる訳で、このあたりも考慮すると2024年中もAMDのServer分野での強い立場はそう簡単には揺るがないだろう。Photo06を見直すと、ServerがUnit Shareで23.6%なのにRevenue Shareが33%というのは、要するに高単価なハイエンド品が多く売れており、Xeonは相対的に低価格品が売れているという事になる訳で、この優位性を維持することがAMDの最重要課題ということになる。
もう一つ挙げれば、Clientの中でも特にMobileが、昨年(2023年)に比べれば改善されているとはいえ、まだDesktopに比べると弱いあたりだろうか。Intelは昨年「Core Ultra」を発表しており、ことしもここに「Lunar Lake」や「Arrow Lake」ベースの製品を投入する事を明らかにしている。これにどう戦ってゆくか、というあたりだろうか?
しかし2024年の第1四半期だけで見ても、IntelとAMDの売上高の差は3倍少々まで縮まり、営業利益ではAMDに逆転されている。ちなみに表1~4は全て非GAAPベースの話であり、GAAPベースにするとAMDは赤字すれすれまで利益が減る(これはXilinxおよびPensandoの買収に伴うのれん代償却が加味されるため)が、IntelもGAAPベースだと赤字に転落するので、そういう意味でも両社に大きな差は無い。
Intelの命運の鍵を握るファウンドリー事業
Intelは再びAMDに売上と利益で大きな差をつけることが可能なのか? この鍵を握るのは、Intel Foundryだろう。AMDはTSMCに生産を委託している限りにおいて、製造能力にどうしても限界がある。かといって他に委託できるFabが存在するわけではないので、現在の売上高を今後大きく伸ばしてゆくのは難しい。比較的高価格な製品のシェアを高める事で、売上高に対する営業利益を最大化していく、というのが基本戦略である。対してIntelは自社でFabを持つことで、販売できる製品の量をAMDよりも多く確保できる(実際、現在もそうだ)のがメリットであり、ただしこれを続けてゆくためにはIntel Foundryの成功が必須条件となる。もし今後Intel Foundryの立ち上げが順調でなかった場合、Intelとしては先端プロセスのチップの製造をTSMCに頼らざるを得なくなり、そうなると条件的にAMDとさして差が無くなるというか、余計な固定費が無い分AMDの方がはるかに財務的に健全になる。
あらためて、今後のIntelの復権がIntel Foundryに掛かっている事を明確に示した、第1四半期決算となった。
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大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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