大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
FD-SOIがついに大規模量産で日の目を見るのか? STの戦略を読み解く(2/3 ページ)
STは車載用に適用、SamsungはFinFETに置き換え
ただ、その28FDSの元となった技術を提供したSTはもう少し粘った。2018年末に、車載MCU向けに利用可能なePCM(embedded Phase Change Memory)のサンプル出荷を開始した事を発表。2019年2月には、そのサンプル出荷を開始した「Stellar SR6」シリーズがCortex-R52を実装した車載向けMCUであり、16MBのePCMを搭載している事を明らかにしている。2021年6月には、このStellar SR6シリーズの量産開始時期が2024年になった事を発表した。ちなみに、現時点でもまだこのStellar SR6の量産は開始されていない。自動車向けの、それもePCMという新しいメモリを利用した製品であれば、どうしても評価期間が長くなるのは避けられないということかもしれない。またこのePCMはSamsung Foundryには提供されていない。だからこそSamsungはeMRAMを採用したのだろうが。
ただこの28nm FD-SOI+ePCMは、あくまでも自動車向けの製品に限られた。一般向けとしては、2016年に40nmプロセスへの移行を図っており、ただしこれば通常のCMOSプロセスで、メモリには同社のeSTMを採用している。2023年3月に行われた同社の記者説明会の折にも、車載向けは将来は7nm世代のFinFETプロセスを採用する可能性があるが、民生に関しては当面90nm/40nmの併用で、28nmへの移行は考えていない、という説明があった(関連記事:「「STM32」に2つ目のプロセッサが登場」)。
ちなみにSamsungの方は? というと、28FDSの後継として18FDSというプロセスを2020年頃まではロードマップに掲載していたが、2021年にこのロードマップを刷新、FinFETで置き換えていく事を明らかにしている。2022年に都内で「SFF(Samsung Foundry Forum)」が開催された折に、EVP, Head of Foundry Business Development TeamのMoonsoo Kang氏に18FDSはどうなっているのかを確認したところ、「Strategic Customer向けのCustom Processであり、一般提供はしない」という意味深な返答が返ってきた。そのStrategic CustomerがSTだったことが、今回やっと判明したというわけだ。
ここで再び冒頭のリリースに戻ると、今回も28nmの時と同じく、18nm FD-SOIのプロセス技術をSamsung Foundryに提供するという形になるものと思われる。ただ、これはあくまでFD-SOIのプロセスのみであって、製造そのものはSTの、恐らくはCrollesのFabで行われるものと想像される。というのは、Samsungの18FDSにはePCMのサポートが無いためだ。つまり次世代STM32の製造そのものは、引き続きSTのみで行う事になると思われる。
正直に言えば、この戦略はちょっと想像の範囲外だった。実を言うと、この構想そのものは2019年に既に語られている(図3)。ただ2019年というのは、まだFinFETプロセスが主流の時期であって、しかも値段が高かったから、FD-SOIであっても価格競争力があると考えられていた。にもかかわらず、FD-SOIを提供するGlobalFoundries/Samsung Foundriesともに、有力な顧客を獲得できなかった。
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