大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
Intel/UMCの12nm協業は「追い詰められた末の起死回生の一手」である(3/3 ページ)
UMCの立場
さて、次にUMCから今回の提携を見てみたいと思う。UMCは2017年2月に最初の14nmプロセス(14FF+)の量産を開始しており、これは同社の28nmプロセスと比較して55%高速で、消費電力が50%低いとされている。また2021年にはこの14FF+をベースにした14FFC(Compact)の提供も開始している。さて、この14FFなり14FFCなりがどのくらい使われているのか?ということで、2017年からのQuarterly Resultsに記されているノード別売り上げシェアをまとめたのが以下のグラフ(図2)である。
14nmは、発表した2017年のQ2には売上の1%を占め、そこから2018年のQ3には5%まで達したものの、そのあたりで顧客がいなくなり、以後ずーっと0%のままである。実はこの14FFはIBMからライセンスを受けて開発したものだが、同じようにIBMからライセンスを受けて開発し、結局提供されなかったものにGlobalFoundriesの14XMがある。何が悪かったのかは分からないが、UMCは事実上この14nmプロセスを放棄したも同然の状況になっている。
とはいえ、目下同社は22/28nmプロセスの需要が大きいから短期的にそれほど問題はない。28nmに続くのは65nmプロセスで、ここはASIC向け以外にFlash FPGAなどにも多く利用されてきたもので、ここ数年ほどは40nmを超える好調ぶりを見せているが、その40nmも2023年になって自動車向けなどの長期契約を獲得している(例:Infineon Technologiesとの長期契約)ので、2024年度は再び盛り返すかもしれない。
ただ、今22/28nmが好調なのは良いとして、数年後にこの22/28nmの需要が減ってきたときの稼ぎ頭になるはずだった14nmが立ち上がりそうにないのが、UMCの最大の問題だったわけだ。だからといって今の14nmを捨てて一から14nmを自社開発するのは、コストの絶対額の面からも、投資効果の面からも無理がある。Intelとの共同開発は、まともに製造でき、ちゃんと動くことが保証されている14nmのコア技術を非常に安い価格で手に入れる、同社にとっては起死回生のチャンスともいえる。2030年代の売り上げを確保するためには、絶対に逃がせないチャンスと言い換えても良いかもしれない。
もちろん、先に書いたように価格面とかサポートの面ではいろいろな問題があるとはいえ、構造および実績に関しては申し分ないプロセスであり、これを利用できることで、同社のFab 12A(台南)でほぼ休止状態の14nmラインを稼働させることができる。しかもIntelのFab 12/22/32でも同じプロセスが利用できるというのは、仮にUMCのFab 12Aがオーバーキャパシティー状態に陥ったらIntelのFabを利用する事も可能(簡単にこれができるかどうかは、また別問題だろうが)ということになる。この構図は、かつてのSamsungとGlobalFoundriesの14nm(14LPE/14LPP)に近い格好だ。
提供開始が2027年というのも、UMCにとっては十分なリードタイムだろう。プロセスそのものの見直しやCell Libraryの開発、EDAツールへの対応などに3年くらいを要するのは当然として、そのくらいの時間があればUMCも現在の14nmラインを新しい12nmプロセスに対応させるには十分だろうし、その頃までは現在の28nmと40nmで十分売り上げを持たせるのは可能だろう。
そんなわけで、双方にとってメリットしかないのがこの提携なのだが、不安要素が無いわけではない。TSMCは既に広範にN12プロセスを提供しており、価格も以前はウエハー1枚当たり4000米ドル前後だったのが、ここに来て成熟プロセスの価格を次第に引き下げ始めている。Intel/UMCが12nmの提供を開始する2027年頃には、1枚当たり3500米ドル前後まで下がっていても不思議ではない。これは同じく12nmを提供するGlobalFoundriesも同様であり、Intel/UMC連合はこれらの先行する競合メーカーよりも価格競争力を持たせる必要がある。果たしてそれが本当に可能か?というあたりが一番の焦点になりそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] 自動車業界には好機 脱炭素×コスト削減×現場改善を実現するエネルギー戦略 -
製品資料
[株式会社 Green AI] 脱炭素投資をすぐ回収したい 自動車業界にも有効なCO2削減アプローチ -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:「PCIM 2026」で見たパワー半導体最前線――電子版2026年10月号
-
2
CAE解析をAIエージェントに任せてみた 人は何を担うのか
-
3
スマート工場動向調査2026
-
4
AIエージェントで製造業の暗黙知を継承、熟練者の思考を再現する保全強化策
-
5
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:製造現場にフィジカルAIをどう実装するか――電子版2026年9月号
-
6
DMG森精機の欧州深耕
-
7
高精度テクノロジーの学習モジュール 「高精度ADC 基礎編・上級編」
-
8
太陽光発電と蓄電池を最適制御、再エネ活用とコスト削減を両立する製品とは?
-
9
製造現場などを支える状態監視システム サンプリングの位相ずれを減らすには?
-
10
半導体の微細な構成要素を非破壊で可視化/評価する「3D X線技術」とは?
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー