大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
「その工場は本当に建つのか?」 半導体製造への投資ラッシュで見えてきた課題(3/3 ページ)
生産能力に見合う需要増はあるのか
もう一つの問題もシビアだ。2023年の製造投資計画を見ると、目立つのは先端ロジックプロセス側で、TSMCやSamsung、Intelに加えRapidusまであるわけだが、こちらは投資金額こそすさまじいものの、設備の金額そのものもすさまじい(なんせEUVステッパーが1台2億ユーロとかいう報道もある)から、投資金額の割にウエハー生産量そのものはそう増えない。
それよりも投資金額こそ低いものの、ウエハー生産量がかなり多くなると予測されるのがパワー半導体である。先のSemiconductor Engineeringのリストで見ても、Analog Devices(ADI)、Robert Bosch/TSI Semiconductors、Coherent/デンソー/三菱電機、Infineon Technologies、Microchip Technology、三菱電機、ローム、STMicroelectronics/Sanan Optoelectronics、Texas Instruments(TI)、Wolfspeedと10社(というか、10事業者)がパワー半導体の供給能力に向けて製造施設の増強を発表している。SiCの製造能力強化を掲げているケースも多く、EVの本格普及に向けてさらなるSiCベースのパワー半導体を提供できるように、という目的はまぁ分かりやすい。ただ本家本元である欧州でもEVシフトが後退を見せている事が既に報じられている。まぁ理由は簡単で、EVを普及させるためには電力供給が安定して行われることが前提にあるわけだが、ウクライナ戦争以降ではこれがかなり怪しくなっており、それもあって2023年3月にEUは「2035年にはエンジン車の新車販売を全て禁止」の方針を撤回、「環境に良い合成燃料を使うエンジン車は販売可能」にシフトしている。長期的にはEVにシフトしていっても不思議ではないが、少なくとも当初の計画ほどにはEVが普及する可能性はかなり低くなったと言える。
もちろん、モーターを使う用途は非常に多く、しかも非効率な駆動方式を使っているケースはまだかなりあるから、こうしたところを今後高効率なインバーター回路を搭載したモーターで置き換えてゆく用途は確実にあり、その意味ではニーズが無くなる事はないとは思うのだが、各社が想定するほどの需要があるかどうかはちょっと疑問である。2026年に供給過剰の状態に陥らないと良いのだが。
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大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
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