大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
決算から見えてきた半導体需給の状況(3/4 ページ)
〇40~20nm
組み込み向けの主戦場である。特にEmbedded Flash Memoryを問題なく組み込める40nmは、冒頭のルネサスの質疑応答ではないが、非常に需要が高い。加えて言えば、ファウンダリでない自社Fabで製造できる一番微細化されたプロセスがこの40nmであり、32/28/22/20nmといったプロセス(もう流石に32nmは廃れてしまった)は基本TSMCやUMC/GlobalFoundries/Samsungといったファウンダリへの製造委託となる。そのあたりもあって、40nmの需要は旺盛である。長期的にはこれも28nmに移行すると思われるが、それにはもう少し時間が掛かるだろう。そんな40nmであるが、こちらも設備を大掛かりに増強するという話は聞かない。理由の一つは、増強したくても設備が買えないという話だ。半導体製造装置メーカーにとっても半導体不足は深刻な状況である。ましてや装置メーカーは先端プロセスやパワー半導体向けに増産を余儀なくされている状況では、40nm向けの装置の製造はどうしても遅れがちになりかねない。するとメーカーやファウンダリは設備増強をしたくても、そのための装置が納入されるのが相当先になる、という状況である。つまり目下の需要増の解決にはつながらないし、装置が納入されるころまで40nmの需要増が続くか不明という状況では決断はしにくいだろう。
28nm/22nmに関してはまた別の事情がある。PCやスマートフォン向けでは既に見向きもされないMatureなプロセス扱いであるが、逆に組み込み向けでは十分に高性能というか高性能すぎるプロセスになっており、しかもかつてはPCやスマートフォンで広く利用されたという事で、それなりの生産能力が用意されている。なのだが、難しいのがFlash Memoryの統合である。もちろん主要なファウンダリは全て28nm/22nm向けのEmbedded FlashのIPを提供しているが、この値段が安くない。例えばTSMCの場合だと、ルネサスと共同で28nmのEmbedded Flashを開発している関係で、IPの価格にはルネサスへの支払い分も載っている。ウェハの製造コストも40nmに比べればややお高め(1枚3000ドル未満ではあるが)であり、全体として40nmまでに比べるとちょっとコストが高くなることは避けられない。それもあって現時点では車載向けのMCUなど一部の製品に限られており、TSMCとかUMCなどは積極的に40nm世代の製品からの誘導を試みているが、まだ主流になり切っていない感がある。こちらは結果として需給ともにほぼ安定しており(自動車向けなど一部偏在はあるが)40nmに比べれば大きな需給ミスマッチは発生していない。
〇16/14/12nm
FinFETの第1世代である。この世代、組み込み向けではアプリケーションプロセッサなどでニーズが高いが、逆に言えば現状はそれだけという話でもある。TSMC/Samsung/Globalfoundriesはいずれもこの世代向けのEmbedded FlashやRFを充実させることで、長期的に28nm/22nmの製品をここに誘導したいと考えて居るが、まだそこまで移行が進んでいない。結果としてここも28/22nmと同じような状況になっている。強いて言えば、まだ一部のスマートフォン向けSoC(特にバリューモデル)はこのあたりのプロセスを利用しているので、28/22nmよりもキャパシティは埋まっているが、極端にひっ迫している訳ではなく、需給のミスマッチはあまりない。
〇7~5nm
意外にもキャパシティが余っているのがこの7nmである。COVID-19が猛威を振いだした2020年ごろは、この7nmはまだ先端プロセスであり、PCやスマートフォン、HPC向けなどに引っ張りだこだった。過去形なのは、そうしたニーズが既に5nm世代に移ってしまったからで、結果としてこれは11月のニュースになるのだが、Digitimes AsiaはTSMCの7nmの稼働率が50%を切ったと報じている。長期的に言えば、TSMCやSamsungもこのあたりに組み込み向けに提供したい(Samsungはその前に、RF系をこのノードに導入したい)と考えているようだが、なにせ製造コストも初期コストも高い7nmはまだまだ組み込み向けとしては厳しいものがある。また組み込み向けでは最低10年程度の動作保証が求められるものが少なくないが、現状これが提供できるのは16/14/12nmとその派生型まで。7nm世代では3年の動作保証を付けた製品は存在するが、10年は筆者が知る限り存在しない。それもあって、PCやSmartphone向けの需要が無くなると、7nmあたりを使うニーズが急減するという結果になっている。加えて言えば、PCやスマートフォンの需要が急減速したため、メインストリーム/バリュー向けのニーズが消失した事も、7nmの需要減に直結した。そんな訳でここに関して言えば供給の問題は既に存在していない。
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大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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