大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
7兆円のCHIPS for America Act成立で矢面に立つIntel(2/3 ページ)
ただ問題は、この資金を受けたIntelは本当にそれを有効に使えるのか?という素朴な疑問が当然ある。具体的には
- Fab 42に加えてオハイオまで立ち上げたところで、本当にその増えたキャパシティを使い切れるだけのニーズがあるのか? 具体的にはちゃんとクライアントを集められるのか?
- その最先端Fabでちゃんと物が作れるのか? Intel 4/3/20/18Aは、本当にスケジュール通りに量産を開始できるのか?
- 米政府から支援を受けるとはいえ、Intel自身の支出金額は依然として巨額であることは変わらないが、財政的に持つのか?
- このままだとIntel自身のニーズそのものが減りかねない状況であるが、IDM 2.0はこの先も本当に成立するのか?
といった事柄に対しての回答は、現時点では不明なままでしかない。ちなみに最後の項目は何か? というと、そもそもIDM 2.0の基本的なアイデアは“Intel自身の需要だけでは先端Fabの建設や運用は賄いきれない。なので、過剰分をFoundry Businessで埋める事でカバーする”というものだ。要するに前提は「Intel自身の需要」>「Foundry Businessの需要」になる訳だが、直近Q2の結果を見ると、そのIntel自身の需要が急速に落ち込みつつあることを示している。これがQ2の事だけで済めばいいのだが、この先同社のシェアが落ち続けるようだと、IDM 2.0の前提そのものが揺らぎかねない。果たしてIntelはマーケットシェア復活につながる、競争力ある製品をいつ投入できるのだろうか?
Sapphire Rapidsの遅延
さてそのIntelの売り上げ不振の現時点で最大の要因は、Sapphire Rapidsの更なる遅延である。本来なら2021年末までに量産出荷を始めている予定が、現時点でもまだ1製品も量産出荷を始めていない。Q2のConference Callの質疑応答で明らかになったのは、恐らく2023年1HまでSapphire Rapidsの量産出荷はずれ込む見込みということだ。この理由をIntelは明確に示していないが、現時点でも量産出荷を開始できる品質基準に到達していない、とされている。この問題の根が深そうなのは、Sapphire RapidsはIntel 7を利用して製造されるが、Intel 7は既に出荷済のClient向けAlder Lakeで広く利用されている。という事は
(a) 設計の問題
(b) Processの問題(ただしClient向けでは露呈しなかったような、根の深い問題)
(c) (a)+(b)
という可能性が考えられる。ここで厄介なのは(b)あるいは(c)である。こちらはIntel 7のプロセスそのものの構造に関わる問題であり、手直しが大変という以上に、問題解決のためにIntel 7に手を入れるとAlder Lakeにまで影響が出る可能性があるからだ。
これはTom's Hardwareの報道であるが、Sapphire Rapidsは合計12回のRespin(物理設計のやり直し)を既に行っており、合計で500ものバグを修正したとしている。ここまでやってもまだ量産品質に達していない、というのは設計の問題というよりも、Processの根深い問題である可能性が結構強い様に思われる。これは続くRaptor Lake(今年投入予定のクライアント向けCPU)やEmerald Rapids(来年投入予定のSapphire Rapidsの後継)の投入にも影響がありそうである。
もっと厄介なのは、この結果としてSapphire Rapidsの投入を待つユーザーに恐らく買い控えが発生していると思われる事だ。IntelのDCAI(Data Center and AI)部門の売上は、昨年Q2と比べて9億ドル減らした46億ドルで、営業利益は2億ドルである(昨年Q2は21億ドル)。営業利益率は38%から5%まで急落している。競合であるAMDは今年Q2のData Center部門の売上が昨年の8億1300万ドルから14億8600万ドルと大幅に売り上げを伸ばしており、要するにIntelの失った売り上げのかなりの部分がAMDに流れている格好である。
Intelの2022年Q3の予測は、多少粗利率こそ改善するものの、売上そのものはQ2と変わらない程度を予測している。要するにDCAI部門の売上は回復しない、とみている訳だ。ということは、Sapphire Rapidsを待っていたものの待ちきれずにAMDに乗り換えるユーザーが、今後さらに増える可能性が高い、ということでもある。これはIDM 2.0戦略に向けてさらに投資を必要とするIntelにとって、地味に痛い傾向であろう。
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これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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