大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
Wi-Fi 7がフライングで市場投入?(2/3 ページ)
Fab拡充再び
2022年5月17日に発表された、ルネサスエレクトロニクスによる甲府工場の再稼働のニュースはちょっとした驚きをもって受け止められた。この翌日にはTIがテキサス州シャーマンで新工場の起工式を行った。これは同社が2021年11月に発表した新工場建設計画の一環で、これに続き第2工場の起工式も行われる事になると思われる。どちらの工場もパワー半導体の製造に特化しており、これはEVを始めとするマーケットの急速な盛り上がりに備えた物と考えられる(少なくともルネサスは明示的にそう説明している)。
このパワー半導体向けのFab拡充は昨年から顕著であって、InfineonやBoschが製造能力を拡充、国内でもデンソーがUMCと協業でIGBTの国内生産を始めるといった具合。ファウンダリも同じで、2022年中に中国CR Microと中国Silanがパワー半導体などに向けて300mmウェハ工場を稼働させるほか、Intelに買収されたTower SemiconductorはSTMicroelectronicsと共同でMixed-signalやパワー、RFなどを生産するAgrate300を今年中に稼働させる予定である。この勢いは当分止まりそうにない訳で、今後パワー半導体の供給はかなり増える事になる。
ここで興味深いのはいずれも300mmラインであること。以前はアナログやパワー半導体は150~200mmラインを使う事が多かったが、生産量を確保するとともに生産コストを抑えるには300mmの方が効率的、というのはもうどのメーカーも口にすることだ。
ただこれには裏の事情もある。既に150~200mm向けの半導体製造装置が、入手不可能になっている事だ。そもそももう主要な半導体製造装置メーカーは、150~200mm向けの新規受注はとっくに終了しており、現状300mmのみとなっている。なので150~200mm向けはリファビッシュ品とか、中古のままとか、そういう市場でしか入手不可能な状況が長らく続いていたのだが、ここにきてついにこうした中古/リファビッシュ品すら在庫払底し始めた。全部が全部という訳ではないのだが、ステッパーとかコッター、エッチング/CMP、etc...と多くの種類の装置が必要となる半導体製造では、どれか一つでも装置が入手できないと、そこでアウトである。現状では150/200mm向けのラインを全部用意するのはもはや不可能であり、なので既存の150/200mmラインの維持向けはともかく、新規ラインに関しては事実上300mmへの移行が必須となっている。上で名前を挙げた全てのラインがことごとく300mmを採用しているのは、要するに300mmにせざるを得ないという裏返しである。
ちなみにこの150/200mmライン向け装置の払底は深刻である。例えば2022年1月、トレックスセミコンダクターはDB HiTek社製ウェハ生産中止のお知らせというリリースを出している。韓国DB HiTekは200mmラインを擁するPure Foundryだが、同社の200mmラインは既にOver Capacityであり、ところが生産量を増やすための半導体製造装置の手当てができないという事で、トレックスから受託していた350nmラインを閉鎖、これを新規需要に充てるという判断を行った結果であるが、こうした話は他にもいくつかある。思うに、ルネサスエレクトロニクスの甲府工場に200mmライン向けの装置がまだ残っているのであれば、これを中古市場に廻すことで投資額を幾分なりとも回収できそうである。
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これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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